資源投資にかかるプレディール・アカウンティング・アドバイザリー

取引前会計インパクト調査はなぜ必要か?

資源権益取得取引の事前検討において考慮すべき重要事項の一つとして、取引による財務諸表への影響の理解が挙げられます。取引の前に資産および負債の評価を実施することで、より精度の高い損益プロジェクションが可能となります。

中国やインドなどの新興国の経済発展に伴う需要の急速な高まりと、将来的に枯渇する優良資源の確保のため、資源獲得競争が世界的に激化しており、最近の権益取得取引の一件あたりの取引額が増大しています。そのため、取引前の損益プロジェクションが取引後の実績値と大きく乖離するリスクが高まっており、当該リスクを軽減することは、これまでになく重要となっています。くわえて、石油・ガスや鉱物の資源採掘セクターの場合、権益取得取引が財務諸表に与える影響をより適切に評価するためには、一般的なM&Aディールで検討する事項だけでなく、業界特有の会計基準や会計慣行を理解することが重要です。

権益取得取引の財務諸表への影響を事前に把握・評価することにより、社内プロジェクトの推進や投資計画承認、社外のステークホルダーとのコミュニケーションがスムーズになります。また、事前の評価内容を取得後の会計処理の検討に利用することも可能です。

資源投資にかかる会計・開示上の論点

権益取得取引後の損益は、一般的に、取引により取得した無形資産や有形固定資産を公正価値評価した結果、取引後の償却額や減価償却費が増加し、利益の金額が押し下げられます。取引による会計数値への影響は、以下の項目に関連して生じます。

  • 連結、持分法、ジョイント・アレンジメントの判定:投資ストラクチャーで想定しているスキームが、連結、持分法またはジョイント・アレンジメントいずれに該当するか、日本基準、IFRSまたは米国基準のそれぞれにおいて検討が必要です。
  • 企業結合の条件付(取得)対価:日本基準では条件付対価は事後的に追加計上されますが、国際財務報告基準(IFRS)および米国基準では条件付対価は取得時点で公正価値評価され、取得対価の一部となります。条件付対価が負債の場合にはその後の公正価値の変動は損益計上されます。
  • 持分法投資に係る取扱い:持分法に係る会計処理は、連結の場合と類似していると規定されていますが、条件付対価や負ののれんの処理など具体的な会計処理の判断にあたっては、より慎重な検討が必要です。
  • のれんに係る税効果:のれんについては、一般的に税効果を計上しません。ただし、投資先の国の税法によりのれんの償却費が損金算入される場合には、会計基準によっては税効果を計上するケースがあります。
  • のれんの減損テスト:米国財務会計基準審議会(FASB)は、2011年9月に米国基準における減損テスト方法について、兆候判定において質的側面をより重視するように改訂しました(2011年12月15日以後開始事業年度より適用、早期適用可)。
  • 機能通貨の判定とその影響:IFRSおよび米国基準では投資先のビジネスに応じた機能通貨の判定が必要であり、投資先の現地通貨と異なる通貨が機能通貨と判定される場合もあります。機能通貨は投資元での投資の評価や、投資先におけるのれんの減損および税効果に影響を与える可能性があります。
  • 無形資産・有形固定資産の計上:権益の取得対価は公正価値に基づき無形資産や有形固定資産その他の項目に配分されます。取得対価の配分額が資産計上されるか否かは、支出の資産化に係る会社の会計方針に左右されます。探鉱段階の支出の資産化に係る会計処理方針は各社で異なるため、取得対象プロジェクトが探鉱段階の場合には留意が必要です。
  • 無形資産・有形固定資産の償却と埋蔵量・資源量:取得した資産は生産高比例法により償却されることが一般的です。償却の基礎となる埋蔵量・資源量の定義については、会社が会計方針として採用しているものと統一することが必要です。
  • 生産段階の剥土費用の会計処理:生産段階で生じる剥土費用は、米国基準では生産コストに含めるとされていますが、IFRSには規定がありません。なお、IASBは生産段階の剥土費用の会計処理に係る国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)指針を公表する予定です(2011年9月公表予定、2013年度より適用見込)。
  • 資源投資に係る補足的なディスクロージャー:米国基準、IFRSまたは業界の慣行などに基づき、埋蔵量・資源量などの開示への対応が必要です。

PwCが提供するサービス

資源権益取得取引におけるさまざまな論点に対して、当産業分野における豊富な経験と専門知識を有するアドバイザーが、以下を含むさまざまなサポートを提供します。また、PwCのバリュエーション専門家と協働し、バリュエーションサービスを組み合わせたより精度の高い包括的な分析を提供することも可能です。

  • 投資ストラクチャー案における会計/決算上の留意点に係るレポート作成(日本基準/IFRS/米国基準など)
  • 無形資産や有形固定資産による影響といった一般的な検討事項に留まらない、より広範な財務諸表への影響についての助言(企業結合、税効果、償却など)
  • バリュエーション専門家を加えたPwCチームによる、投資実行前の投資対象資産の価値算定レポート(Preliminary valuation report)の作成(取得取引後の損益に影響を与える無形資産や負債の特定または測定サポートを含む)
  • Preliminary valuation reportを基礎とした、将来の損益影響額のシミュレーションレポートの作成
  • 取引後における減損リスクの検討
  • クロスボーダー取引に対応した複数の会計基準(日本基準、IFRSおよび米国基準など)に関して、PwCのグローバルネットワークの専門家を活用したサポート
  • 取引後の決算およびディスクロージャー体制の構築に関するサポート

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主要メンバー

小林 昭夫

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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