【送配電事業に求められるビジネスモデル転換(第1回)】~レベニューキャップ制度で変革するビジネスプランとプライシング~

2021-04-23

※2021年4月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

エネルギー産業における外部環境変化と規制の変容

頻発する自然災害、CO2ネットゼロ実現に向けた再生可能エネルギーの主力電源化や人口減少・偏在化といった外部環境の劇的な変化に適応するため、2020年にエネルギー供給強靭化法が制定され、日本のエネルギー供給システムは、これまでになかった柔軟性、強靭性、持続可能性や効率性が求められる変革期を迎えています。

なかでも、エネルギー安定供給のメインフレームである一般送配電事業・託送制度では「新たな料金制度=レベニューキャップ制度」や「新たな事業類型=配電事業ライセンス」が創設され、プライシング(料金設計=レートメーク)変更やプレイヤー増加といった、公共サービスの質的・量的イノベーションが起きていると言えます。

今回から2回にわたり、日本の全需要家に影響する「レベニューキャップ制度」の解説、および送配電事業者に求められる変革の考察を紹介します。

レベニューキャップ制度のエッセンス

託送料金は、全需要家に裨益する事業の公益性に鑑み、従前から総原価=総収入(総括原価方式)の考え方に基づき決定されてきました。こうした収支相償型の料金体系は、世界のユニバーサルサービスで適用例があり、日本の電力産業では80年以上前から、マイナーチェンジはしつつも継続適用されています。

しかしながら、前述の変化に加え、配電網レベルでAI・IoTなどの次世代技術導入や分散型コミュニティが進展する環境下では、「発生の都度、対応コストを審査し料金転嫁する」現行制度で適応するには限界が来ています。

そこで、他の競争事業と同様、変化する環境や市場への“適応”が前提の新時代にマッチしたプライシング、プランニング(事業計画策定)へのモデルチェンジとして、送配電網の高度化に資する必要投資とコスト効率化を促し、ネットワークシステムの再構築を図る「レベニューキャップ制度」導入に至りました。

レベニューキャップ制度は、一般送配電事業者が将来の一定期間における事業計画、および当該計画の履行に要する収入額(見積)を策定し、需要家・有識者の意見を踏まえた規制当局の審査を経た収入上限値のみを設定し、プライシングの自由度や発生した利潤は事業者に帰属させることを通じ、必要な事業投資を促進するインセンティブ規制です(2022年度~料金審査、2023年度~適用開始)。

現行の総括原価方式との比較からレベニューキャップ制度を総括すれば、「原価主義から成果主義へのパラダイムシフト」であり、そのエッセンス・効果は大きく下記3点に集約されると考えられます。

①アウトプットへのフォーカス:
KPIを含む算定フォーミュラにより、事業に要する費用ではなく、事業を通じて提供・実現される(べき)成果に着目して収入上限が設定されるため、更なるサービス品質向上が期待されます。

②責任範囲の適正化:
プレイヤーが制御不能な要因での支出増は収入上限に反映する期中調整スキームなどを組み込むことで、当事者の責任・権利の適正化が図られています。

③リスク・リターン関係の適正化:
超過利潤管理を通じた利潤一定から、成果に応じ収支が変動する世界へ移行され、収入上限・事業計画に対し各当事者がリスク・リターンを負担することになります。

図1 レベニューキャップ制度のエッセンス

送配電事業者に求められる変革

前述のとおり、事業者においては、2022年度からの料金審査の準備として、将来の環境変化の予測や成果目標といった変動リスクを織り込んだプライシング・プランニングが求められ、最適資源配分の重要性が一層高まるなど、さまざまな変革が求められると想定され、既に具体的な制度対応の検討を進めているものと推察されます。

この点、想定される変革の一例を経営資源別に整理すれば、下記のとおりです。

ヒト:

  • 事業者間比較も見据えた事業経費(OPEX)の効率化目標に資する、生産性向上や要員計画の策定・高度化
  • レベニューキャップ制度を運用する人財の育成

モノ:

  • 設備投資関連費用(CAPEX)の適正化に資する、設備のリスク定量化、費用便益分析による投資量算定や再エネ接続量などの外部環境予測を織り込んだ設備投資計画(拡充・更新)の策定・高度化
  • 地点単位や配電網レベルでの需給・収支管理や保有・譲渡・貸与のオプション別収益性管理(IRRなど)

カネ:

  • 中長期的に成果を生み出しうる設備投資や技術研究などのためのファイナンス促進
  • 公表されるKPI達成状況などを介した信用力への影響管理(レピュテーショナルリスクマネジメント)

情報:

  • 将来の利潤最大化とリスク極小化に必要となる、外部・内部環境データの収集、利活用、予測精度向上
  • CAPEX効率化に資する、設備の劣化状況などのセンサーデータ取得および利活用

レベニューキャップを含む事業計画策定イメージ

図2 レベニューキャップを含む事業計画策定イメージ

次回は、こうした送配電事業者に求められる変革のうち、経営管理に焦点をあて、ソリューションの詳細を交えて紹介します。

PwCの「規制・制度対応&利活用支援—レベニューキャップ適応」サービス

PwCでは、制度導入を本格検討し始めた経産省審議会(2018年~)から継続して、欧州制度の分析と日本への適用案を検討してきた知見・実績を基に、人財育成を含む事業計画策定や、配電事業を含む制度自体の利活用戦略まで幅広く支援しております。

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「Regulation」=規制制度“適応”・“利活用”のご紹介

図3 「Regulation」=規制制度“適応”・“利活用”のご紹介

執筆者

阿部 真也

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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