PwC、「世界の消費者意識調査2018」を発表

PwC、「世界の消費者意識調査2018」を発表

  • 世界では約3割の消費者がパーソナルAIデバイスの購入を予定、日本はいまだ低調
  • モバイルでの購入は拡大しているが、実店舗の利用も伸びている
  • 約4割の消費者は、小売業者による個人の購入パターンの把握・分析と提案を容認するも、追跡管理には警戒感

2018年6月27日
PwC Japanグループ

PwC Japanグループ(グループ代表:木村 浩一郎)は、「世界の消費者意識調査2018」(日本語版)を発表しました。本調査は、世界の消費者を対象に購買行動を追跡し、小売業の将来に関する世界規模での分析と示唆を得ることを目的に毎年実施しており、今回は日本を含む世界27カ国・地域22,481人の消費者から回答を得ました(調査時期:2017年9月)。日本語版レポートには、日本の消費者1,009人の回答結果と日本マーケットへの示唆を追記しています。

AIデバイスの所有は世界では1割程度だが、今後は3人に1人が購入を予定、一方日本はまだ低調

世界の回答者のうち、Amazon Echo、Google Homeをはじめとする自動パーソナルアシスタントやロボットなどのAIデバイスを所有している人の割合は10%という結果ですが、今後購入予定があるとした回答は32%と、関心が高まっていることがうかがえます【図1】。国別の所有率では、最も早くに販売を開始した米国は16%、日本と同時期(2017年以降)に販売開始の中国が21%で最上位、次いでベトナム(19%)、インドネシア(18%)とアジア勢が続いています。これに対し、日本の所有率は4%程度にとどまっており、「今後購入予定もなく、関心がない」との回答も約70%と、他国より関心が低い結果になりました。

【図1】AIデバイスの所有、購入予定

日本においても企業に関しては、店頭に設置したデバイス(マジックミラー、動画カメラなど)にAIを組み合わせ、来店者の行動や商品への関心などを把握して品揃えやプロモーションに活用するなど、成果をあげる事例が見られます。消費者の認識していないところでAIを導入したサービスが展開されており、企業によるAI活用のさらなる拡大には期待が高まっています。

モバイルでの購入は拡大しているが、実店舗の利用も伸びている

モバイルデバイスを利用した購入は世界で17%と過去6年で倍増しており、PCを利用した購入(20%)を超える勢いです【図2】。eコマースの成長は依然として続いており、回答者の59%が大手eリテーラーで買い物をしています。また、日本における大手eリテーラーの利用は90%を超えています。

しかし、実店舗が主要チャネルであることに変わりはなく、その利用も伸びています。今回の調査では、実店舗で週1回以上購入する消費者の割合は、2015年調査を底に増加傾向にあり、2018年は44%に回復しています【図2】。日本の実店舗利用の割合はさらに高く、64%になっています。

【図2】購入チャネル(週1回以上の利用)

実店舗を訪れる消費者が今なお確実に存在していることから、すべての小売業者にとって新たな挑戦により成功を手に入れる余地は残されているといえます。その際に鍵となるのは、感性に訴える社会的体験で消費者を引き付け、実店舗での買物に繋げることといえるでしょう。

データプライバシー面で消費者が求めるものは、監視ではなくメリット

小売業者による消費者データの活用に関する調査結果では、世界の回答者の41%は、小売業者が自分の購入パターンを把握して、自分に合った提案をしてくれることを容認しています。一方で、小売店の近くにいることを検知してモバイルにパーソナライズされたオファーが送られてくることを望まない消費者は37%に達し、望むとの回答(34%)を超える結果となっています【図3】。

【図3】小売業者による消費者データを用いたオファーへの同意

「どこで」買うかではブランドへの信頼がさらに重要に、「何を」買うかはSNSをはじめ他人の意見が判断材料に

買物をする小売店を選ぶ際に、価格のほかに考慮する要素の第1位から3位までを尋ねたところ、世界では「品揃え」(37%)に次いで「ブランドへの信頼感」(35%)が重視されている結果になりました。中でも、ブランドへの信頼を「第1位」に選んだ人の割合は14%と、他の要素を抜いて最多となりました。この比率は、中国では21%、米国では16%になっています。

一方、何を買うかを決める上では他人の意見を判断材料として重視しています。買物に関する情報を得るための利用メディアは、第1位が「SNS」(37%)、次に「小売業者のウェブサイト」(34%)と「価格比較サイト」(32%)が続いています。一方、日本の第1位は「価格比較サイト」(47%)で、「SNS」は第3位の24%となりましたが、若い年齢層では両者の割合は僅差になっています。

確実・迅速な配送と返品対応が鍵である点は世界共通

今回の調査では、大手eリテーラーが、配送サービスに関する消費者の期待を引き上げていることが明らかになりました。大手eリテーラーの各種特典つきサービスにおいて、利用者の3分の1が最も重要な特典の第1位に「無制限の無料配送」を挙げており、その割合は72%に達しています。日本の同回答は85%で、より重視する傾向にあります。

追加費用なしのオプション評価では、「返品時の配送無料」が世界(65%)、日本(60%)ともにそれぞれ最も大きな魅力となっています。日本において次いで多かったのは「指定時間配達」の56%で「同日配達」より上位となりました。日本では約束した条件で着実に届けられるサービスの実現が求められている結果になりました。

配送面での高いハードルを乗り越えて、なおかつ収益性を維持できる体制を構築することには、いまだ明確な答えはないといえますが、今後はさまざまな新しいアイデアを試してみることで突破口が開ける可能性があります。特にラストワンマイルの配送については、ドローンや配送ロボット、スマートロッカー、クラウドソーシングによる配送など、複数の手段の組み合わせが有効になってくるものと見込まれます。

世界の消費者は景気に楽観的で、支出を維持・拡大する意向

世界の消費者は今後の自国の景気動向については楽観視しており、現在より良くなるもしくは同程度との回答は7割を超えています。今後1年間の消費傾向として、支出を増やす(37%)もしくは同程度(38%)と回答した消費者は全体の4分の3程度となり、当面財布のひもが締まる傾向にないといえます。一方、日本の消費者では、これまでと同程度との回答が43%で、世界の消費者ほど楽観的ではない結果になりました。

PwCコンサルティング合同会社の消費財・小売・流通担当パートナー 矢矧晴彦は、今回の調査結果を踏まえて、以下のように述べています。

「今回の調査結果においても依然として日本は、eリテール市場の成長、および消費者/企業双方でのデジタル技術の活用などの面で、欧米や東南アジア諸国(開発途上国含む)と比べ進展が遅い結果となりました。世界に事業を展開している日本の小売り企業がグローバル競争に勝つためには、中国のように進んでいる市場に、オンライン/デジタルの研究開発拠点を設けて推進していくなど、より大胆な施策が必要になってくるでしょう」

以上

*調査結果の詳細は、以下のURLに掲載している本レポートをご参照ください。
日本語版:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/consumer-insights-survey/2018.html 
*本調査レポートの英語版「Global Consumer Insights Survey 2018」は2018年2月に発表しています。
英語版:https://www.pwc.com/gx/en/industries/consumer-markets/consumer-insights-survey/2018/survey.html

PwC「世界消費者意識調査」について

PwCでは2010年以降毎年1回、世界の消費者を対象に購買行動を追跡し、小売業の将来に関する世界規模の調査結果をPwC「世界トータルリテール調査(Total Retail Survey)」としてレポートにまとめてきました。今回は、消費者が今までにはなかったソリューションを積極的に受け入れる中、以前は明確であった小売業者、製造業者、IT企業、物流業者などの線引きがますます曖昧になっていることを考慮し、調査の全体像をより明確に表す言葉として、その名称をPwC「世界の消費者意識調査(Global Consumer Insights Survey)」に変更しました。
2018年版の調査では、日本を含む世界27カ国・地域の22,481人の消費者からの回答を得ています(日本の回答者1,009人)

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