PwC、グローバル投資家意識調査を発表‐投資家にとってサイバーセキュリティがビジネス上の脅威のトップに

投資家とCEOの見通しを比較したPwCの最新調査

テクノロジーによる破壊的変化への懸念により、売上拡大に対する投資家とCEOの自信の差が広がる

2018年3月27日
PwC Japanグループ

※本プレスリリースは、PwCが2018年2月26日に発表したプレスリリースを翻訳し、文末にPwC Japanグループ代表のコメントと、投資家とCEOのビジネス上の脅威に関するランキングを追記したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

PwCの最新調査によれば、サイバー攻撃は今や投資家の視点ではビジネス上の最大の脅威となりました。これは世界のCEOの懸念と同じ傾向を示しています。

PwCグローバル投資家意識調査2018では、投資家やアナリストの見解とCEOの見解との比較を示しています。

今回の調査では、投資家およびアナリストの41%がビジネス上の最大の脅威として「サイバー脅威」を挙げており、その順位は2017年の5位から上昇し、トップとなりました。PwCが実施した「第21回世界CEO意識調査」の結果によれば、ほぼ同じ割合(40%)のCEOが「サイバー脅威」を最大の脅威に挙げ、3大脅威の1つとなっているものの、「過剰な規制」や「テロリズム」に対する懸念が「サイバー脅威」を上回っています【図表参照】。

投資家は、企業が顧客との信頼関係を改善するために、サイバーセキュリティに関する投資の優先度を高めるべきであると考えています(投資家の64%:CEOの47%)。

投資家が考える企業の成長に対する脅威のトップ5は、「サイバー脅威」に続き、「地政学的な不確実性」(39%が「非常に懸念している」と回答)、「技術変化のスピード」(同37%)、「ポピュリズム」(同33%)、「保護主義」(同32%)となっています。

PwCのグローバル・インベスター・エンゲージメントのヘッドであるヒラリー・イーストマン(Hilary Eastman)は、次のように述べています。

「投資家とCEOが最大の懸念として挙げた項目を比較すると、企業の内部と外部でのビジネスに対する観点や、日々の経験の違いが浮き彫りとなっています。CEOの場合は、適切なスキルを持った人材確保といった実際のビジネスの現場における問題の優先順位が高いのに対して、投資家は地政学的な不確実性、ポピュリズム、保護主義など、幅広い社会的トレンドがビジネス全般に及ぼす影響を注視しています」

世界経済の成長見通しについては、投資家の54%(2017年から9%増加)、CEOの57%(2017年から28%増加)が、世界経済の成長率が高まると考えており、投資家とCEOのいずれもが昨年より自信を深めていることが明らかになりました。

一方で自社や投資先企業の状況に目を転じると、短期的にも長期的にも、CEOによる自社の売上拡大見通しに比べて、投資家による投資先企業の売上拡大見通しの方が悲観的という結果となっています。

具体的には、今後12カ月間の売上拡大について「非常に自信がある」と回答した投資家は4分の1未満(23%、2017年も23%)であるのに対し、CEOは42%に達しています。また今後3年間の見通しでは、売上拡大に「非常に自信がある」と回答した投資家が5分の1(20%)にとどまったのに対し、CEOは45%とその差はより大きくなっています。

投資家はCEOに比べ、「テクノロジーの変化」(85%対64%)、「消費者の行動変化」(81%対68%)、「流通チャネルの変化」(76%対60%)がビジネスにより大きな破壊的影響をもたらすと予想しており、これが売上の拡大に対する投資家の懸念の背景にあります。また、人工知能が人員削減計画に大きな影響を及ぼすと考える投資家の割合は4分の1強(26%)と、昨年から13%増加しています。

ヒラリー・イーストマン(Hilary Eastman)は次のように述べています。

「投資家はCEOが考えるよりも、破壊的変化がビジネスに及ぼす影響が大きくなると予想しており、それが長期的な成長に対する投資家の自信に影響していると考えられます。企業と投資家との効果的なコミュニケーションが、投資家の慎重な姿勢に対処するカギとなります。企業が投資家の懸念を払拭するために行動していることを明白に示すことができれば、長期投資を呼び込める可能性が高くなります」

投資家とCEOが、企業が成長する上で重要と考える上位5カ国(米国、中国、ドイツ、英国、インド)は、昨年と同じでした。しかし、米国と中国との差についてみると、投資家の回答においては2国間の差が縮小しているのに対し、CEOの回答では逆に中国に比べて米国の重要度が一段と高まっています。

2017年のグローバル投資家意識調査では、重要な国・地域として、米国が中国を23%上回っていました。これが2018年では、米国と中国の差は13%に縮小しています(米国78%、中国65%)。対照的に、ドイツと英国の差は広がりました。昨年、投資家が重要と考える割合は英国とドイツのいずれも32%でしたが、今年はドイツが32%の割合を維持したのに対し、英国が21%に低下しました。これは、ブレグジットを巡る不確実性が投資家の見通しに影響したと考えられます。ただし、ドイツ(3位)と英国(4位)はともに、成長する上で重要と思われる上位5カ国に引き続きランクされています。

企業に対する信頼低下に関する投資家の懸念と、CEOが考える課題の深刻さの水準にも、大きな差が生じています。投資家の3分の1以上(36%)が顧客と企業との信頼関係の低下を懸念しているのに対し、CEOは18%にとどまっています。

従業員と信頼関係を構築するにあたり、投資家の多くは「報酬や福利厚生制度に対する透明性」が重要と考えている(投資家の60%、CEOの51%)一方、CEOの多くは「企業の価値観」が最も重要であると感じています(CEOの73%、投資家の56%)。

ヒラリー・イーストマン(Hilary Eastman)は次のように述べています。

「CEOは、自社に対する信頼を構築するためにどこに注力すべきかを考える上で、投資家の視点を考慮することにより、外部の貴重な知見を取り入れることができます。今回の調査結果は、投資家がテクノロジーの急速な進化に伴うリスクについて、CEOよりも強く懸念していることを示しています。CEOが投資家から自社への信頼を得たいのであれば、サイバーセキュリティ、デジタルスキル、研修への投資は不可欠です」

PwC Japanグループ代表でPwCあらた有限責任監査法人代表執行役を兼任する木村 浩一郎は、以下のようにコメントしています。

「PwCは今年で21回目を数える『世界CEO意識調査』に加えて、『グローバル投資家意識調査』などを通じて、資本市場のさまざまなステークホルダーの声を傾聴し、社会における信頼を構築し、重要な課題を解決することを目指しています。

日本の資本市場におけるステークホルダー間の対話を巡る環境は、近年、大きな変化を遂げています。スチュワードシップ・コードの改訂、『価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス』の公表、持続的な企業価値を生み出す企業経営・投資の在り方を提言する(ESG・無形資産投資) 研究会報告書、いわゆる『伊藤レポート2.0』の公表に加えて、コーポレートガバナンス・コードの改訂なども進んでいます。『監査法人の組織的な運営に関する原則』(監査法人のガバナンス・コード)も運用が開始されています。

このような流れのなかで、PwCあらた有限責任監査法人としては、昨年12月に3年目となる『監査品質に関する報告書(Transparency Report)2017』を発行し、ステークホルダーの方々との対話の深耕を進めています。

今後も、資本市場全体の動きを注視しつつ、インベストメントチェーン全体の最適化に貢献するべく、監査の透明性のさらなる向上を目指し、不断の努力を重ねてまいる所存です」

以上

注記

  1. PwCは663名の世界中の投資家を対象に、投資先企業あるいはフォローしている企業に関する調査を実施しました。この調査における投資家には、ファンドマネージャー、株式アナリスト、債券アナリスト、格付け機関、プライベートエクイティ投資家が含まれます。またPwCは1,293名のCEOを対象に自社に関する調査を実施しました。
  2. アクティビスト投資家(物言う投資家)や他の活動家に対する投資家の懸念は非常に低い水準にとどまっています(「非常に懸念している」割合は4%)。CEOではその割合が3倍となりましたが(「非常に懸念している」割合は13%)、これは投資家とCEOのいずれにおいてもビジネス上の脅威に関するリストの最下位でした。

【図表】

質問:企業の成長(投資家の場合)もしくは自社の成長(CEOの場合)に対する脅威について、どの程度懸念していますか。

「非常に懸念している」と回答した割合(%)

質問:企業の成長(投資家の場合)もしくは自社の成長(CEOの場合)に対する脅威について、どの程度懸念していますか。

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