
監査法人メンバーによるNPO会計1Dayプロボノ―会計を用いた寄付者とのコミュニケーション―
PwC Japan有限責任監査法人は、ステークホルダーとの信頼構築において重要な役割を担う「会計・財務」に焦点を当てた1Dayセミナーを開催しました。会計士による講義とワークショップの様子を紹介します。
PwC Japanグループは、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というパーパス追求のもと、株式会社三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)、富士通株式会社(以下、富士通)と協働し、企業の社会貢献活動推進担当者、事業開発担当者や、NPOをはじめとするソーシャルセクターの担当者を対象に、連携のきっかけづくりを主眼としたイベントを初開催しました。
社会課題がますます複雑化し、複合的な要素が絡まり合う中、本質的な解決のためには組織に属する一人ひとりが課題を自分事化し、組織の枠組みを超えたさまざまなステークホルダーとの連携によってインパクトを創出していくことが欠かせません。昨今の日本社会の重要な課題テーマのひとつである「教育格差・体験格差」に焦点を当てながら、さまざまな関係者が出会い、想いや意見を共有し合うことで、連携へのヒントが見つかる「場」を提供することを目的にしたイベントには、約100名を超える企業やNPOの担当者が参加し、活発に交流しました。
第一部では、企業、NPO、行政を代表する登壇者として、それぞれ富士通 大谷真美氏、特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 平岩国泰氏、こども家庭庁 中原茂仁氏を迎え、一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ 鈴木栄氏によるファシリテーションのもと、パネルディスカッションを開催しました。
日本のこどもを取り巻く課題の深刻化は、2023年のこども家庭庁設立の背景になっています。
2000年以降の出生数の大幅減少による少子化、自殺やいじめ、引きこもりといった、こどもを取り巻く問題が深刻化の一途をたどる中、省庁間の縦割りを打破し、新しい政策課題や隙間事案への対応を行うためにこども家庭庁は設立されました。中原氏は、こどもを中心とした政策立案の「司令塔」としてのこども家庭庁の役割について説明し、設立同年に制定された「こども大綱」により「こどもや若者の意見を聞いて政策をつくることを促したことで、霞が関内の方針が大きく変わった」と述べました。一方で、政策を実際に進めるうえでは、自治体や民間との連携が重要なカギを握ります。トップダウンでやらされるのではなく、一人ひとりがこどもや若者の意見を尊重し、行動するという前向きな機運の醸成が必要だという考えのもと同庁が広めようとしている、誰もが参画できる「こどもまんなか応援サポーター」という仕組みについて紹介しました。
こども家庭庁 長官官房参事官(総合政策担当)中原 茂仁 氏
次に登壇した放課後NPOアフタースクールの平岩氏は、こどもを取り巻く学びの格差解消に向けたNPOの役割について、企業との連携事例を交えながら説明しました。今の日本のこどもたちを取り巻く課題には大きく、「将来希望」と「体験格差」があるといいます。小中高生の自己肯定感は低く、将来への希望感が薄いという調査結果や、日本がG7で唯一、10代の死因第一位が「自殺」であるという事実。また、家庭の経済状況や情報量、親の働き方により影響を受けるこどもの体験の量と質。さらに、その「体験格差」は、放課後や休日の過ごし方に顕著に表れると指摘します。平岩氏は、こどもの教育や将来の全てを学校任せにしすぎなのではないか、学校と保護者だけに頑張れというのではなく、社会全体でこどもを育てることが必要である、そこに企業が参画することによる解決可能性があると述べました。
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 代表理事 平岩 国泰 氏
最後に登壇した富士通の大谷氏は、企業として社会課題解決を支援する理由と課題について説明しました。富士通では、事業活動を通じたマテリアリティの実現のために、年間約25億円をコミュニティ活動に活用しています。自社独自のさまざまな教育支援プログラムの提供に加えて、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスの実現に資する社会課題解決を図るNGOやNPOなどの具体的な取り組みを支援するため、グループ会社含む全社員から案件を公募し、選定した案件に対する金銭的助成を行っています。企業のサステナビリティへの取り組みは必要不可欠である一方で、一企業の取り組みだけでは社会課題に対するインパクトは小さく、さまざまな仲間たちと協働することで力を発揮できる、と連携の意義について語りました。
富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室 室長 大谷 真美 氏
ファシリテーターの鈴木氏によると、教育関連予算規模は、政府予算4兆円、教育業界市場3兆円に対して、NPOは125億円、と大幅な差があります。限られた予算で事業を立ち上げざるを得ないNPOにとっても、企業との連携は不可欠です。また、「NPOが接点になることで、たとえ競合だったとしても同じ社会課題の解決という共通のゴールに向けて、複数の会社が束になることができる」(平岩氏)という点は、NPOならではの強みといえます。また、企業から見ると、これまでは利益を「還元」する活動だった社会貢献活動も、「今は利益を活用するならば、確実にインパクトがある活動、そして社員にも意味のある活動にしていく必要がある」(大谷氏)といいます。そのためには、双方の事業領域と想い、目指すインパクトを共有できるかどうかが重要になります。こども家庭庁の中原氏は、行政や自治体もまた、自分たちのみで事業を実施するということはほぼなくなっており、民間との連携が必須になっているといいます。固定化しがちな関係性を回避するためにも、「こどもまんなか応援サポーター」のような、さまざまな取り組みをゆるやかにつなげるような連携の仕方もあるのではないか、と述べました。
左から、こども家庭庁 中原茂仁氏、放課後NPOアフタースクール 平岩国泰氏、富士通株式会社 大谷真美氏、一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ 代表理事兼CEO 鈴木栄氏
第二部は、3つのテーマごとのStageを用意し、参加者が自分自身の関心テーマに沿ったセッションを選べるようにすることで、より現場に持ち帰りやすいヒントと「つながり」の提供を目指しました。
<ファシリテーター>
株式会社三井住友フィナンシャルグループ 社会的価値創造推進部 上席推進役シニア・サステナビリティ・エキスパート 兼 公益財団法人三井住友銀行国際協力財団 専務理事 大萱 亮子氏
<登壇NPO>
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 副代表理事 正村 絵理氏
Stage Aでは、SMBCグループと放課後NPOアフタースクールによる協働プロジェクト、「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」の取り組みを紹介。一企業の社会課題解決の取り組みの枠を超えて、自治体・NPO・企業・地域といったさまざまなステークホルダーが“体験機会・居場所の提供”という共通アジェンダに対して、得意分野を発揮しながら協働することで、コレクティブインパクトの第一歩につながったモデルケースです。
参加者からの、企業が連携先のNPOパートナーを選ぶ際の視点や基準とは、体験機会提供が企業のPRイベント化しないようにするためにNPOとして譲れない点は、といった質問への回答を通じて、参画する関係者が共通の目的意識、大切にしたいことを共有できること、関わる社員・職員も含めた関係者間の丁寧なコミュニケーションが重要であることを説明しました。
<ファシリテーター>
PwC Japan有限責任監査法人 上席執行役員 地域共創推進室長 辻 信行
<登壇NPO>
特定非営利活動法人みんなのコード 代表理事 利根川 裕太氏
Stage Bでは、NPO法人みんなのコードによる、地域の課題、テクノロジーの課題双方に取り組む事例として、「みんなのクリエイティブハブ」を紹介。どこに住んでいても同じ夢を描ける機会があること、多様な自己表現の重要性などに触れました。ラウンドテーブル形式の本セッションでは、企業の参加者から、具体的な地域における今後の活動展開可能性や、地域格差・経済格差に自社が関わる方法、NPOの参加者から、企業にアプローチする際の留意点といった、具体的な質疑が飛び交いました。
<ファシリテーター>
認定特定非営利活動法人 ETIC.(エティック)ソーシャルイノベーション事業部 シニアコーディネーター 白鳥 環氏
<登壇企業>
NEC 経営企画・サステナビリティ推進部門 コーポレートコミュニケーション部 プロフェッショナル 池田 俊一氏
Stage Cは、これから連携による協働を始めたいと考えている担当者向けのセッションとして、NECの社会起業塾やプロボノイニシアチブ、自治体との連携事例紹介と、ETIC.による連携のポイント解説を中心に、レクチャー形式で進行しました。
連携成功のポイントとなる、Win-Winの関係性を中長期的に構築するための要諦として、企業とNPOの違いをまずは理解すること、違いを踏まえて協働を設計できる「通訳」の存在により、補完関係が生まれることの2点を解説し、両者の強みの違いを踏まえた協働事例を複数紹介しました。
プログラム終了後の懇親会では、参加者による活発な交流や情報交換が繰り広げられました。連携のきっかけをつくり、さまざまな協働機会を生むプラットフォームとしてこのような場が機能することを期待し、 PwC Japanグループはこれからも、社会の重要な課題解決に向けたコレクティブインパクトの創出に取り組んでいきます。
PwC Japan有限責任監査法人は、ステークホルダーとの信頼構築において重要な役割を担う「会計・財務」に焦点を当てた1Dayセミナーを開催しました。会計士による講義とワークショップの様子を紹介します。
ジェンダーダイバーシティがもたらす新たな視点と、分野を越えた知識の融合が、いかにイノベーションを加速させるか。STEAM人材育成は教育、キャリア、そして社会の変革にどのようなポジティブな影響をもたらすのか、第一線で活躍する専門家たちが熱く語りました。
PwC Japanグループは、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というパーパス追求のもと、株式会社三井住友フィナンシャルグループ、富士通株式会社と協働し、企業の社会貢献活動推進担当者、事業開発担当者や、NPOをはじめとするソーシャルセクターの担当者を対象に、連携のきっかけづくりを主眼としたイベントを初開催しました。
PwC Japanグループは2024年7月23日、教職員や自治体関係者を対象にした次世代教育に関するセミナーを開催し、「テクノロジーが加速度的に発展する中で、私たちは次世代の教育とどう向き合うべきか」をテーマに、これからの社会に求められている教育環境について議論しました。