
東北復興・創生支援「なんでも会計相談」のいま―長期的視点でプロボノ活動を継続する意義―
PwC Japan有限責任監査法人は、岩手県沿岸広域振興局と連携し、地域の個人事業主の方々を対象とした会計支援のプロボノ活動「なんでも会計相談」を実施しました。
PwC Japan有限責任監査法人(以下、PwC Japan監査法人)は、ステークホルダーとの信頼構築において重要な役割を担う「会計・財務」に焦点を当てた1Dayセミナーを開催しました。
社会課題が複雑化、深刻化する昨今、過去からの支援によって培われた経験、ネットワークを有するNPO法人には、政府や自治体、地域住民、企業などのさまざまなステークホルダーと必要に応じて連携することが期待されます。ステークホルダーとの連携には信頼が不可欠ですが、中でも資金管理については一定の説明力が求められています。
本セミナーでは、一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)の休眠預金活用団体であるNPO法人9団体が参加し、NPOなどへの会計支援の経験を有する会計士による講義の後、参加NPO法人それぞれの会計処理の相談、財務諸表の見方、財務面から見た事業計画の実行過程など、一つ一つの疑問にボランティアで参加した会計士らが直接アドバイスを提供しました。
第一部のセミナー講師を担当したPwC Japan監査法人の藤井美明シニアマネージャーは、東日本大震災をきっかけに10年以上、NPO会計の支援をプロボノで行っています。NPOや公益社団法人、公益財団法人などの監事として関わった経験も踏まえながら、講義を行いました。
前半は、決算書を作成する目的、作成書類の体系やそれぞれの役割を確認しながら、NPO会計の具体的な論点について説明しました。
後半は、活動計算書からNPO団体の活動内容や持続可能性を評価する際の観点や、実行性のある事業計画書を作成する際のポイントを紹介しました。また、まとめとして「決算書」は、NPO団体が目指すべきゴールに対して、数字面から現在地を把握できるツールであり、寄付者とのコミュニケーションツールとして作成されるべきであると説明しました。
図表1:会計と予算・事業計画のつながり
図表2:事業計画作成時に整理すべき収益分類の観点
セミナーの後半は団体ごとのテーブルに会計士を中心としたメンバーが2~3名着席し、個別の相談や質問にお答えしながら実践的アドバイスを提供するワークショップを実施しました。
ワークショップでは、以下のステップで、団体側からこれから取り組もうとされていることを説明いただき、それを実現するにあたって必要なリソース(ヒト、モノ、カネ)を可視化しました。そのうえで、事業計画に必要なリソース、実現するための活動が盛り込まれているかを確認するとともに、NPO団体の疑問や課題について個別相談を行いました。
ワークショップのステップ
ワークショップでは、寄付金の安定的な確保、職員の増員、団体の基盤強化など、幅広い課題が挙げられました。その対応として、法人への寄付集めのアプローチ方法、読みやすい開示資料の作成、学生アルバイトの活用、電子ツールの活用など、会計の領域を超えて幅広い議論が行われました。
セミナー最後のあいさつで、NPO団体への声がけにご協力いただいた休眠預金等活用制度の指定活用団体であるJANPIAのシニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木均様は、以下のように述べられました。
「JANPIAは企業連携に注力し、設立から6年間の間に約100社、500件以上の支援を行ってきました。現在支援している1070団体の半数以上を占めるNPOが、組織、活動を持続可能なものにしていくためには、業務を数字で捉え、適切な運営を行い、活動を可視化するという一連のサイクルが不可欠です。今回のセミナーへの参加をきっかけに、会計・財務リテラシーの向上につながるヒントを持ち帰ってもらいたいと思います」
PwC Japan監査法人はこれからも、会計面のサポートにより、現場で社会課題に向き合っている団体を支援し、各団体によるインパクトの最大化を図りたいと考えます。
「私は立ち上げたばかりの団体からのご相談を担当しました。冒頭、将来についての不安が大きい印象を受けましたが、最後の交流会では、『これからやっていくことの道筋が見えて、未来が明るく感じるようになりました』と、とても喜んでいただくことができました。外部の専門家としての提案や意見、ディスカッションを通じて視野が広がったり、法人の未来が明るく感じられたりしたのであれば、それが何よりの喜びです」(大阪アシュアランス部 千馬) 「参加された方から、『感覚的には気づいていたものの、数値や現実と真剣に向き合う機会がなく、今日の会を通してその重要性に気づいた』とおっしゃっていただきました。私にとっても、数値から読み取れるものを改めて意識する良い機会となりました」(消費財・産業材・サービス アシュアランス部 田渕) |
「会計からこんなに法人のことが赤裸々になると思っていなかった。うすうす大事だなと感じていたが、時間がなくて先送りになっていた。可視化することができて、結果、とても良い時間になった」(大阪府で地域コミュニティの再生に取り組むNPO法人) 「収益は寄付金と助成金のみ。新しいコストをかけずに、新しい寄付を求めずに今すぐできることを6つくらい提案してもらえて、頑張ろうと思えた」(東京都でフードバンクを運営するNPO法人) |