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PwC Japanグループと一般社団法人スカイラボ(以下、スカイラボ)は2023年7月、女子高校生を対象にした女性STEAMリーダー育成プログラム「Design your future 2023」をオンラインで開催しました。今年で5回目を迎える同プログラムは、スカイラボがスタンフォード大学教育学大学院の研究者らと開発したカリキュラムで、「デザイン思考」を日英バイリンガルの環境で学ぶものです。受講生となる日本全国の女子高校生約30名とともに、受講生を支援するメンター役として、米国、カナダなど各国からバイリンガルの大学生・高校生18名が集まりました。
今回のテーマは「サステナビリティ――自分たちの力でどのように持続可能な社会(世界)を構築したい?」。6日間のプログラムでは9チームに分かれてサステナビリティに関する社会課題についてディスカッションしたり、課題解決に向けたアイディア出しをデザイン思考のアプローチを使って行ったり、それを基にプロトタイプを作成したりしました。プログラムの最後ではグループワークの成果を英語で発表しました。
PwCはグローバルネットワーク全体で「アップスキリング」という課題に取り組んでいます。PwC Japanグループにおいてこの「New world. New skills.」というイニシアチブをリードする佐々木亮輔は、受講生に向けたメッセージの中で本プログラムの意義について以下のように述べています。
「サステナビリティを実現するには、単発ではなく継続的に活動をすることが重要です。そのためには、自分たちの力でどのような持続可能な社会(世界)を構築したいかを考え、さまざまな組織や立場の人たちと共生し、エコシステムを構築していくことが必要です」
佐々木自身、1990年代後半に開発途上国の開発目標達成支援を行う機関で仕事をしていた経験があり、開発途上の国・地域が開発目標を達成するには、「自立」と「共生」が重要であることに気付いたといいます。
バーチャルプログラムの様子
では参加者は本プログラムを通じてどのような“糧”を得たと感じているのでしょうか。PwC Japanグループは後日、本プログラムに参加してくれた以下の方々に、お話を伺いました。
左から小西さん、末次さん、藤原さん
―― 最初に「Design your future 2023」に参加しようと決めたきっかけを教えてください。
末次さん:
私は言語技術同好会という部活に所属しており、部活の顧問の先生に勧められたのがきっかけです。言語技術同好会の主な活動は、模擬国連(学生が各国の大使になり、実際の国連の会議を模擬する活動)への参加ですが、その中でも今回のメインテーマである「サステナビリティ」はよく議題に取り上げられていました。英語でのディスカッションやグループワークも楽しそうだと思いましたし、他の都道府県や外国にいる方たちとコミュニケーションできるという点にも魅力を感じました。
藤原さん:
私は学校に貼ってあった参加者募集のポスターを見たのがきっかけです。私はみんなの前で意見を言うのが得意ではないので、こういった機会を利用してみようと思いました。
小西さん:
私も学校の先生から勧められたのがきっかけです。私は起業家を目指していて、今回のプログラムはデザイン指向でプロダクトを生み出すことも学べると伺っていたので、アイディアを共有しながらコミュニケーションすることは自分のためになると思って参加しました。
―― 1週間のプログラムでは英語を使って初対面の人とグループワークをしたりディスカッションをしたりする機会が多くありました。それに対して難しさを感じましたか。
藤原さん:
最初は自分の意見を言うのが恥ずかしいと感じていましたが、ディスカッションをするうちに他のメンバーに自分の意見が優しく受け入れられていると感じ、とても発言しやすかったです。意見を言うことは自分の成長にもなるし、恥ずかしがらなくていいことなんだと思えるようになりました。
末次さん:
私も同じです。どちらかというと人前でしゃべるのは苦手だったのですが、同じグループのメンバーが積極的に発言していたので、「間違っていても大丈夫、自分も発言してみよう」と刺激を受けました。また、メンター役の方が丁寧にフォローしてくださったので、思い切ってやってみようという気持ちで頑張れました。
もう1つ、「英語力を身に付ける」という観点からもとても有意義だったと思います。特にネイティブの方が話すスピードはとても速く、学校で教わる英語とは全く違っていて「これが生きた英語なんだ」と感じました。
―― 各グループに分かれたプログラムでは、どのようなテーマでディスカッションをしましたか。
末次さん:
私のグループは「再生医療」がテーマでした。再生医療は学校で議題になったことはありません。他のメンバーも最初は何から話してよいか分からず緊張していたようです。しかし、「ユーザー役」として参加されたPwC Japanグループの方が現状や課題を詳しく説明してくださったので、その後は自分たちで調査したりディスカッションしたりしながら理解を深められました。
今、振り返ると、みんな分からないからこそ自由な発想で活発にディスカッションできたと思います。例えば「1億円の予算でアイディアを形にする」といったトピックでディスカッションしたときには、本当に色んなアイディアが生まれました。
藤原さん:
私のチームは「気候変動に対応した農業」がテーマでした。気候変動に対応した農業を行うためには何が有効かをメンバー全員で考えるのです。その中で農薬を使わないといったアイディアも出たのですが、印象に残っているのはユーザー役のPwC Japanグループの方が指摘した「教育の重要性」です。
アイディア出しのディスカッションで「消費者の考え方を変えることが大事」という意見に賛同が集まりました。その時、その方から「大人の考えを変えるのは非常に難しく、子どもの考えを変えるほうがたやすい。だからこそ(グローバルで)均等な教育機会を与えなければいけない。その中で環境に配慮した農業を学ぶことが大切」という指摘をいただきました。
「教育の根本を変える」という視点はまったく持っていませんでしたが、それがきっかけとなって「教育を通して農業に興味を持ってもらうために、将来私たちはどうすべきか」を深くディスカッションできました。
小西さん:
私のチームは「医療の最適化」がテーマでした。少し観点がずれるのですが、私がグループワークで得たことは「理解しようとする視点を持つことの大切さ」です。私が通っている学校のコース(インターナショナルコース)では普段の授業でもディベートを取り入れています。ですから議論をする時の思考回路は、「自分の考えに賛同してもらうために相手を納得させるにはどうすればよいか」となっていました。
例えばビジネスコンテストでは自分で考えたことを訴求します。新商品を決める時には、相手を納得させることに注力します。ですから周囲の意見を聞くことはあっても、それを取り入れてモノを作るという機会はあまりありませんでした。
それが今回のプログラムでは「グループのメンバーと意見を共有し、理解し合いながらゴールに向かって進む」ことを目的としていました。こうしたグループワークはとても新鮮でしたし、「メンバーのアイディアを自分の中に取り込んで形にしていくためにはどのようなコミュニケーションが必要か」を考えられたよい機会でした。
―― 今回の全体テーマは「サステナビリティ」でした。プログラムに参加する前と後では「サステナビリティ」に対する考え方は変わりましたか。
末次さん:
サステナビリティやSDGs(持続可能な開発目標)は「環境を守る」という印象が強かったのですが、チームで再生医療に関するディスカッションを進めていくなかで、「サステナビリティは環境だけではない。世界全体が持続可能な方向を目指し、よりよく生きていけること」を意味する身近な問題だと感じました。
小西さん:
私は高校のインターナショナルコースで学んでいるので、英語に接している機会のほうが多いのですが、英語の「sustainability」と日本語で語られる「サステナビリティ」やSDGsは視点が異なると感じていました。例えば、SDGsは環境配慮だけでなく、自分の身の回りでできる持続可能な取り組みです。そうしたことをメンバーとディスカッションし、理解を深めていけたことも1つの収穫でした。
―― 次にアンコンシャスバイアスについて話を聞かせてください。今回のプログラムは女子高校生を対象にしたものでした。今、「女性活躍促進」という言葉が多く使われています。しかし、理系分野の専門職や組織の管理職に就いている女性は圧倒的に少数で、まだまだ“壁”があります。自分の将来を考えるとき、「その仕事は女子には向いていない」と言われたらどうしますか。
末次さん:
私の将来の夢は、「貧困地域など苦しい状況下の人々を支援するため、海外で働くこと」です。とはいえ、まだ高校1年生なので、具体的な大学の進路は決めていません。ですから「女の子だから(その進路は)無理」と言われた経験はありません。ただし地方に住んでいるので、「女の子は学校を卒業したら地元に残って結婚し、子どもを作るのが幸せだ」という社会の“圧”がないとは言えません。「女の子はそんなによい大学に行かなくてもいい」と思っている人が少なくないことも理解していますし、そういった環境の中で育った友達もいます。
私はそういった考え方は間違っていると思います。今回のプログラムに参加した方たちは、女性に対するアンコンシャスバイアスに「No」と言えるパッションとエネルギーに溢れた方たちが多かったと感じています。今後、大学進学で地元を離れる時、「女の子なんだから……」という圧や考え方に直面しても、きちんと自分の進路と夢を貫けるようになりたいです。
藤原さん:
私は面と向かって女性差別を受けたことはありませんが、「リーダーは男性のほうが良い」という固定観念を持っている人が多いことは感じています。私たちの世代はこうした考え方や風潮を変えていかなければいけませんし、自分も変えていきたいと思います。
私は将来英語を使った仕事に就きたくて、留学をしたいと考えています。しかし、祖父母の世代は、「女の子が海外で学ぶ」ということに過剰な心配をしています。その背景には「女の子はそんなに頑張らなくていい」という固定観念があると感じています。
小西さん:
私は日本と米国の両方の学校に通いましたが、幸いにしてそうした「無言の圧力」には接することなく育ちました。その中で感じたのは、どの世代にも応援してくれる人もいれば、ジェンダーバイアスに無自覚な人もいるということです。
例えば、学校の授業では性差による課題を多く取り上げるのですが、活発に発言するのが女子ばかりだと、男子からは「(今は)ジェンダー差別なんかないだろ」と言われます。そんな時には「見えないところでたくさんある」ことを説明しますし、アンコンシャスバイアスが根底にあるような発言をされた場合には注意します。当事者にならないと分からない、差別をされている側にならないと分からないことは結構ありますよね。
現在、私は先輩たちと協力して学校のトイレに生理用品を置く活動をしています。それに対して男子生徒からは「無料で置くとみんながそれを使うようになるので学校の備品費用を圧迫する」や「責任感がなくなる」といった反論がありました。
経済的な理由などを背景に生理用品を購入できない「生理の貧困」は、人権問題です。同級生の中には「人権問題は大切」という大枠は理解しても、「何が人権を脅かしているのか」という細かい部分を理解していない人も少なくありません。ですから、同級生という身近な人に対して身の回りで起こっている問題を指摘し、気付きを得てもらいたいと考えています。
―― 最後に、今回のプログラムを体験し、これからの行動に活かしたいと思えるようなことはありましたか。
末次さん:
今後も海外在住の方や異なる環境で学んでいる方たちと一緒にディスカッションをし、自分の視野を広げていきたいと思いました。将来は海外で学び、働きたいという夢を実現できるように頑張りたいという思いを強く持ちました。
藤原さん:
今回のプログラムを通じ、自分の意見をしっかり持って発信する大切さを学びました。チームメンバーの積極的な姿勢に刺激を受け、私もアクティブに活動していきたいと思うようになりました。大学は外国語学部に進学したいと考えているのですが、いつかは海外で学びたいです。
小西さん:
プログラムに参加したメンバーとディスカッションする中で、その頑張りに刺激を受けました。また、自分の頑張りが(客観的に)見えてきたことも収穫でした。日々の活動の中で時には落ち込んだり面倒くさいと思ったりすることはあっても、周囲が頑張っているとそれが励みになります。
プログラムのアドバイザーであるシェリー・ゴールドマン教授が「(自分がマイノリティと感じたときには)仲間を見つけてアクションを起こしましょう」と仰っていました。今回のプログラムで頑張っているメンバーとディスカッションできたことを次の活動に活かして行きたいです。
―― 今回のプログラムに携わったPwC Japanグループのメンバー全員が生徒の皆さんから勇気と刺激を受けていました。本日伺った皆さんのお話も大変力強いメッセージでした。本日はありがとうございました。
Design Your Future5年目となる今年は、スピンオフイベントとしてイノベーションを支えるジェンダー多様性をテーマに社会人向けのイベントも開催しました。