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PwC Japanグループは、10年後の未来に必要とされる仕事やスキルについて考え、新しい未来の仕事のアイデアを発想する、デザイン思考をベースとした「未来のしごと」ワークショップを全国の公立中学校向けに無償で提供しています。2023年7月11日に中学2年生の生徒86人がワークショップに参加した和歌山県日高町立日高中学校の西田幸平先生に、総合の学習の授業の一環として本プログラムを選ばれた理由や、プログラム体験後の生徒たちの変化について伺いました。
西田先生:
中学校の先生になろうと決めたのは、中学3年生の時でした。そのような決心ができたのは、野球で進学しようと思っていた自分に「将来の進路について真剣に考えなさい」と言ってくれた先生の存在が大きいです。生徒の将来を真剣に考え、熱心に指導してくれる先生という存在の大きさを感じ、教育の道を志しました。大学には同じ想いの仲間が多く、改めて先生という仕事は良いと思いました。中学校社会科の教員免許を取得して以降は、新任として和歌山県の御坊中学校に赴任したのを皮切りに、湯浅中学校、日高中学校と教鞭をとってきました。
西田先生:
前任の中学校に在籍していた当時、コロナ禍により学生たちが職業体験を行う機会が制限されるという大きな課題に直面していました。代替手段はないかと考えをめぐらせている中で、企業の合同説明会のようなスタイルを思いつきました。インターネットで職業体験を実施してくれる企業を探していたところ、オンラインで「未来のしごと」ワークショップを提供しているPwC Japanグループを見つけ、同様の体験を現在の学校の生徒たちにも提供できればと思い、依頼をさせていただきました(注:当時のワークショップ開催時の様子はこちら)。
お話を伺った方:和歌山県日高町立日高中学校 西田幸平先生
西田先生:
現代の生徒たちは、情報過多の環境にあると思います。情報が豊富であるがゆえに、内面が大人になりきれていない場合、根拠の薄い一方的な情報に頼ってしまったり、時には自分の権利を守るための知識だけが豊富になって義務感や責任感が希薄になったりと、思いやりが育つ前に個人主義が強まってしまう傾向を危惧しています。
しかしながら、「未来のしごと」ワークショップのグループワークを体験することで、お互いの考えをきちんと聞くことで考える幅が広がり、一度深く考える瞬間が生まれたように感じています。職業体験は毎年実施しているのですが、これまでは職業的な格差にフォーカスしてしまいがちだったり、職業体験の場所選びについても自分自身の内面と向き合うのではなく、「友達がいるから」とか「楽そう」などの理由で選んでしまいがちだったりしたのですが、職業に対する見方も変化したと感じています。
私は多面的に物事を見ることを重視して授業を展開しているのですが、生徒たちはこのワークショップを経験したことで考える能力が育ち、幅広い視野を持つようになりました。総合的に判断した内容でレポートを書けるようになり、「深い学び」につながっていると実感しています。
西田先生:
これまでも「職業体験に向けて」というプログラムはありましたが、「仕事」や「働くこと」そのものを考える授業は初めての経験でした。
生徒たちには自分の興味や得意分野について事前ワークとして考えてもらい、それにあてはまる職種のグループごとに分けたり、わざと異なる職種をミックスしたグループを作成したりしました。実際に社会人と話し、社会の授業だけでは体験できないリアルな社会の「情報のシャワー」をこのワークショップで浴びてもらうことで、生徒たちは現実の社会情報を多角的にとらえることができたのでしょう。このワークショップはまるでダイヤモンドを大きくするように、固定概念にとらわれず、発想を広げることで多面的思考に気付いてもらえる機会でした。
西田先生:
生徒たちは「未来のしごと」ワークショップに楽しんで参加し、「こんな授業があるんだ!」と新しいタイプの授業に触れる機会を喜んでいました。さらに、実社会に出ている大人の方々と対話する機会を得ることで、これまでの一方的で狭い視野とは異なる考え方をしてみる機会にもなったようです。
また、ワークショップを授業で運営するのは、慣れた教師でも大変なのですが、生徒たちが自主的に協力したことで、教育実習生でも現役の先生と変わらない運営ができた事例がありました。ある都市の事例をテーマにしたワークショップで、生徒が「建築物の高さ規制条例があるにも関わらず、それを超える高層ビルを建設する計画がある」という事例を挙げ、それについて議論するなど、「『課題』を見つけて『議論』する」プロセスが自然にできたからではないかと考えています。それも生徒が「未来のしごと」ワークショップにおいてデザイン思考のプロセスを経験していたからこそだと思います。
西田先生:
将来、社会に出たときに自分の意見を明確に述べ、その裏側の根拠を考えながらコミュニケーションできるスキルを持ってほしいと期待しています。理にかなわない根拠をもとに育てた自己肯定感は、いったん折れたら終わってしまいます。
また、人前で話すことはできても、たまたま失敗してしまったゆえに自己肯定感が下がり、それを解決できず悩んでしまうケースもあります。失敗に対する対処法を学ぶ機会を教育の中で提供し続けることも重要だと考えています。
西田先生:
教材研究やリサーチに割ける時間はとても短いという課題があるなかで、教師は教材の選定と活用において、迅速かつ効果的な判断を下す必要があります。教材の「良い」評判や実績は、採用のハードルを低くしてくれます。授業運営のなかでは、生徒の発言やアイデアを前向きに受け入れ、否定的な姿勢を持たないことも求められます。驚くような意見や発言を受け入れ、探求心を育む環境を提供することが重要なポイントです。
実は、このプログラムを中学3年生の社会科の「国際社会に理解を深める」という単元で実施する計画があり、その効果を期待しています。生徒たちが「国際社会の中の日本」を理解した後、「その日本社会の中で自分はどうあるべきか」「社会と自分との関係性はどうあるべきか」を卒業前に考えるきっかけとして活用してほしいです。
教師をやっていて一番難しいのは、教育プログラムを適切なタイミングで提供し、学習効果をいかに最大化するかです。
「未来のしごと」ワークショップをどのタイミングで使うと、どんな効果があるのかという見地が、これから多くの学校で教材を活用いただくなかで溜まっていき、教師向けのガイドとして共有いただけたら素晴らしいと思います。
生徒たちにとって「未来のしごと」ワークショップのプログラムが、かつて西田先生が経験されたような、未来への志を生むきっかけとなるのであれば嬉しいです。本日はありがとうございました。