
持続可能な地域社会を実現する、企業×公益法人の連携の形とは?「休眠預金」で未来をつくる活動を拡げるために――
JANPIAの取り組む企業連携の活動にPwCあらた有限責任監査法人も参加し、団体の組織の基盤づくりや業務プロセスの改善をプロボノ活動で支援しました。協働の背景、企業と公益法人の連携の理想的な未来像を、JANPIA 事務局長 鈴木均氏とPwCあらたパートナー 辻信行が語りました。
PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)は企業の垣根を越えたコレクティブインパクトの創出を目指し、第2回目となる「ソーシャルな交流が広がる1Dayプロボノワークショップ」を株式会社三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)と共同で開催しました。
社会課題が複雑化する現代において、社会に属する一人ひとりがそれらの課題を自分ごととして捉え、解決に向けて取り組むことが期待されています。SMBCグループ、PwC Japanはそれぞれ、従業員によるプロボノ(業務を通じて培ったスキルや専門性を活かして行うボランティア活動)を積極的に推進しています。
プロボノに興味はあるけれどまだ参加したことがない、あるいはできることを模索して参加を躊躇しているといった社会人を主な対象に、社会課題解決への意識向上を目的として2024年に第1回目を開催しました。(第1回目の開催報告はこちらをご参照ください。)
第2回目となる今年、さらにその輪は広がり、当日は約40の企業と約20の非営利団体から、合計167名がイベントに参加。熱気にあふれる会場で団体の課題に対する解決策を一緒に模索しながら社会課題への理解を深め、業種や組織を超えて活発に交流しました。
参加者の所属企業(約40法人):
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(共催)、PwC Japanグループ(共催)、オリックス株式会社、サントリーホールディングス、ソニーグループ、日本生命保険相互会社、富士通株式会社、三菱商事株式会社、NECグループ、デロイト トーマツ グループ、EY Japan、他
※子会社を含みます
協力/参加非営利団体(約20法人):
一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)(協力)、認定特定非営利活動法人エティック(協力)、一般社団法人あわらテクノロジー協議会、NPO法人eboard、NPO法人ウイズアイ、NPO法人エイズ孤児支援NGO・PLAS、一般社団法人かけはし、認定NPO法人カタリバ、認定NPO法人キャリアデザイン研究所、認定NPO法人CLACK、一般社団法人ころん、NPO法人シングルマザーズシスターフッド、認定NPO法人3keys、NPO法人チャリティーサンタ、NPO法人Chance For All、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン、一般社団法人チョイふる、NPO法人バディチーム、NPO法人WHITE CANVAS、NPO法人みんなのコード、一般社団法人merry attic、NPO法人ワーカーズ・コレクティブういず
当日の相談内容
団体名 |
所在地 |
事業内容(HP/ヒアリングシートより) |
課題テーマ |
プロボノチーム提案概略 |
一般社団法人あわらテクノロジー協議会 |
福井県 |
「テクノロジーを通して個人が自己実現を図り、ウェルビーイングを実現する」をミッションに、福井県で10代のためのテクノロジーの居場所「まぜテクネ」運営、DXハイスクール認定校への出張授業、女性と若者へのリスキリング機会の提供に取り組む |
脱属人化を図るために、経営管理のためのマネジメントサイクルの導入を行いたい |
課題の再整理を行い、補助金の助成期間終了後の事業継続に向けた企業とのリレーションづくりのアイデア出しやあらたな収益コンテンツの案出し、事業の脱属人化のためのコンテンツのオンライン化、アルムナイ人材活用などを提案 |
NPO法人eboard |
兵庫県 |
「学びをあきらめない社会の実現」をミッションに、ICT教材「eboard」の開発・提供、「eboard」を利用する学校・団体への研修・サポート、不登校・子ども支援団体研修プログラム「eDojo」の開発・提供に取り組む |
生成AIによる「やさしい日本語」変換ツールのさらなる活用法を検討したい |
今後、国内企業が多くの外国人労働者を活用することを想定し、社内手続きやマニュアル作成に「やさしい日本語」変換ツールの導入による、社内管理コスト低減、コミュニケーション円滑化の提案方針を模索。現在本ツール開発に助成金をいただいている財団を起点にした事例づくりと他企業や公共への横展開を提案 |
NPO法人ウイズアイ |
東京都 |
「赤ちゃんまんなか」の活動を原点に、東京都清瀬市を拠点に、「認可小規模保育園」「一時預かり(一時保育・定期保育)」「つどいの広場事業」などに取り組む |
効率的・効果的なPRにより利用者増・財源確保を図りたい |
受益者以外の層に団体の存在や活動を認知してもらいたいという課題に対し、団体設立30周年の節目を利用した、団体の特色を体現するようなイベントの企画・実施、SNSを活用した広報施策を提案 |
NPO法人エイズ孤児支援NGO・PLAS |
東京都 |
ケニア・ウガンダの貧困地域で夢を描けない子どもたちと、その親を支える「親子支援事業」や、早すぎる妊娠・出産を防ぐ「性に関する教育事業」、現地パートナー団体の組織基盤強化支援に取り組む |
インパクト経営やCSV経営を推進し、グローバルサウスに関心のある大企業のニーズに応える連携メニューを具体化したい |
他のNPOと比較したときの強みを、定性・定量の双方の側面でアピールすることを提案。また、関心のある企業とのコンタクトをつくりやすいイベントや、セミナー等の情報についてもインプット |
一般社団法人かけはし |
神奈川県 |
「こどもたちが安心しながら、自分自身を信じる力と自分の可能性を切り拓く力を育む居場所を創る」ため、地域の居場所支援事業や学習支援事業などに取り組む |
持続可能な運営(経営)と、団体として向かうべき方向性の両面からどう事業計画を策定していけばよいか |
法人としてのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を作成し、理念に共感した組織づくりを提案。また、行政に提出する指標の見直しや、他NPO法人と行政、民間企業を巻き込んだ活動による外部リソースの確保を提案 |
認定NPO法人カタリバ |
東京都 |
どんな環境に生まれ育った10代でも未来をつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指す教育NPO。居場所支援や教育支援、外国ルーツの高校生対象の支援「Rootsプロジェクト」等に取り組む |
外国ルーツの高校生の社会参画プログラムの価値づけについて |
新規イベントのプログラム構成、集客・資金集め、どのように企業からの賛同を得るかといった課題に対し、営業先候補のアイデア、学生の意思表明ができるピッチタイム(プログラム)、(将来的に)DAOの仕組みを取り入れた地域、学校、企業との連携を提案 |
認定NPO法人キャリアデザイン研究所 |
千葉県 |
漂流する若者が輝く目をして社会に踏み出す支援を目指し、「生きづらさを感じている若者向け多様な幸せ実現事業」として、メタバース空間とリアル空間双方での就労に繋がる居場所づくり等に取り組む |
助成金終了後も事業継続できるような仕組みを構築したい。企業に事業を理解してもらい、有償で受託できる事業内容と仕組みを構築したい |
課題の深堀を行った結果、企業へのコンサルティングサービスをしたい、一方で企業向けのサービス内容の説明が分かりにくいといった点が挙げられた。地域の企業をターゲットとして提案し、サービス内容の理解に基づくネーミングの変更案や、企業向け説明資料の目次案を提案 |
認定NPO法人CLACK |
東京都・大阪府 |
「困難を抱える中高生に、デジタルを使った伴走支援のインフラをつくる」をミッションに、大阪・東京を拠点として、無償のプログラミング学習支援・キャリア教育教室、デジタルを活用した居場所等に取り組む |
スタートアップ人材以外のさまざまな人が働きやすいと感じる組織づくりについて |
事業拡大にともないメンバーが増加し、さまざまなバックグランドや強みをもった人材が入社する中、採用した後の人材活用やCLACKらしさをより強固なものにする組織づくりに課題感があり、団体のカルチャー、現場感・手触り感、チーム効力感等を失わないようにするための解決策が求められていた。団体の改善点などを前向きに検討する社内ワークショップの開催と、設計時のポイントを提案 |
一般社団法人ころん |
東京都 |
子ども達一人ひとりの「らしさ」を大切に、それぞれに適切な「丁寧な子育て」のあり方をご家族と共に考え、実践することを通じて、子ども達の生活が幸せで豊かなものになることを目指して、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援に取り組む |
2012年からこれまで就学前の4年間を支えるチーム支援プログラムを構築するべく、取り組んできた。これからどのようにして事業を大きくしていくべきか |
将来実現したいことを成し遂げるため、団体の強みおよび主な収支構造の分析や各事業所の状況、従業員の日々の時間の過ごし方や、公費による児童発達支援センターとしての機能支援中における従業員の活動制約の有無などを深堀。前提条件に基づき、収益拡大策に絞って解決策を提案 |
NPO法人シングルマザーズシスターフッド |
東京都 |
社会的に孤立しやすく、自分の心身のケアが後回しになりがちなシングル |
シングルマザーのセルフケア講座新規参加者増のための広報施策について |
「3カ月以内に実現可能な集客施策案」をゴールに、知ってもらう方策としての広報ターゲット、アプローチ先の提案、参加してもらう方策としての初回登録者の入力内容簡素化や初回参加者用クラスの新設などを提案 |
NPO法人チャリティーサンタ |
東京都 |
子どもたちに愛された記憶を残すために大人たちが子どもたちのために手を取り合う社会を目指し、「サンタ活動」や「ブックサンタ」など、子どもの体験格差解消を目指した体験支援に取り組む |
広報・資金調達の全体的な目標や、そのためのアクションプラン案を作成したい |
各事業の広報の現状把握と目標設定を、広報担当者がリードしながら、他チームに広報戦略立案の重要性を実感してもらうための施策を検討 |
NPO法人Chance For All |
東京都 |
生まれ育った家庭や環境に関わらず誰もがしあわせに生きていける社会の実現のために、もう一つの家族のような「学童保育CFAKids」、自分の意思で来られる居場所「駄菓子屋irodori」、公園で学生と遊べる「パークリーダー」、感情に寄り添った分類で本との出会える「感情図書館hidamari」、平時も被災時もこどもたちの居場所、あそび場が保障される社会を目指す「J-CST」に取り組む |
団体内の学生が主体となって活動しているチームにおける、プロジェクトの管理や情報共有方法の改善について |
メンバー間の情報連携不足、タスク優先順位付け、メンバー入れ替わり時の引継ぎといった課題に対して、タスク管理の仕組み化、PMO的な役割の設置、適切進捗管理の実施方法について、進捗管理ツール・ルールの一元化等を提案 |
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン |
東京都・宮城県・兵庫県 |
「多様な学びをすべての子どもに」をミッションに掲げ、経済的困難を抱える子どもたちに学習や文化・スポーツ、体験活動等で利用できるスタディクーポンの提供や大学生ボランティアによる相談支援等を行っている |
子どもたちの学習・進路・生活の相談に応じ、安心してクーポンを利用できるように、大学生ボランティアが月1回の面談を実施している。面談の日程調整にかかる業務を効率化したい |
短期的な解決策として、現状の体制を見直すことでの運営の効率化、長期的な解決策として、面談の趣旨の理解促進(面談の目的や魅力を分かりやすくし整理したチラシの配布や説明会の実施)を提案 |
一般社団法人チョイふる |
東京都 |
生まれ育った環境に関わらず、子どもが将来に希望を持てる社会を実現するため、本来たくさんある“はず”の選択肢を、少しでも身近にする食料支援事業、居場所事業、伴走型相談支援に取り組む |
助成金による運営が中心。より財源を幅広く拡大するための企業協賛、企業との接点のパターンを見つけたい |
困窮世帯の支援に必要な資金確保に向けたゴール設定、そのためのロードマップの作成を支援。また、他団体による企業との連携事例に関する情報収集を支援 |
NPO法人バディチーム |
東京都 |
経済的困窮、病気や障害、DV被害、虐待等様々な事情や背景のある家庭に訪問し、保育・家事・送迎・学習支援等を通じて親子に寄り添う活動を行う |
現場支援以外で企業ボランティアに依頼できるメニュー案について |
現場支援では、ボランティアとバディを組むことで、企業ボランティアの参加をしやすくすることや、団体が主催するイベントの企画からボランティアに参画してもらう、事務局でお願いしたいタスクを洗い出すことで、企業ボランティアを巻き込む等を提案 |
NPO法人WHITE CANVAS |
長野県 |
多様性を受け入れ、活かすことのできる社会を目指し、ものづくりとアトリエによる障害福祉事業(長野県指定生活介護事業所の運営)、地域・芸術活動事業、障害福祉や治療教育を中心とした学びの機会作りなどに取り組む |
障がい者の作品、商品の販売売上・展示・広報の成果の向上について |
作品ができ上がるまでのストーリーを伝えるようにする、SNSへの投稿頻度を増やしてより多くの人に知ってもらうことを提案。また、毎回の展示会で予算や売上目標を設定し、収益性を可視化することも提案 |
NPO法人みんなのコード |
神奈川県 |
「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」というVISIONを掲げ、全国の小中高における情報教育の推進、テクノロジーが無償で楽しめる子どもの居場所運営、キャリア教育支援に取り組む |
VISIONの実現に向けて、中長期的に協力いただけるパートナー企業を増やすための切り口づくり |
企業(特に人材企業や人事部)と学校(教員や小中高生)が、 |
一般社団法人merry attic |
埼玉県 |
「子育て社会を、頼れる空気感で満たしていく」ために、学童、こどもショートステイ、こども食堂、障害者委託訓練、放課後子ども教室、乳幼児親子つどいの広場などに取り組む |
行動指針を社内文化として浸透させるための具体的な方法や人事評価への組み込み方について |
既に策定済みのMission、Visionの浸透策として、8つのValues候補をいくつかの「軸」に分類・整理するアプローチを提案。今後の浸透策としてのワークショップ開催、目標設定、フィードバックとしての期中・期末の取り組みについても提案 |
NPO法人ワーカーズコレクティブういず |
千葉県 |
人と人との輪を繋ぎ地域に必要とされる物・サービスをコミュニティー事業とし |
事業の安定化を図り、次世代に事業を引き継ぎたいがどこから手を付けたらよいか模索している。実践的なアイデアがほしい |
収益改善に向けて、人件費にも使用可能な助成金の獲得や、人件費の捻出が可能になる体制への変更検討、収入源になっていた高齢者の居場所事業の見直しを提案。また、体制強化への案として、活動を支援する大学のインカレサークルの立ち上げを提案 |
PwC Japanグループはこれからも、コレクティブインパクトの創出に向けたさまざまなステークホルダーとの協働を推進してまいります。
JANPIAの取り組む企業連携の活動にPwCあらた有限責任監査法人も参加し、団体の組織の基盤づくりや業務プロセスの改善をプロボノ活動で支援しました。協働の背景、企業と公益法人の連携の理想的な未来像を、JANPIA 事務局長 鈴木均氏とPwCあらたパートナー 辻信行が語りました。
PwCあらた有限責任監査法人は、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)と連携し、富士通株式会社の有志メンバーとともに「NPO法人新座子育てネットワーク」の課題解決に向けた支援に取り組みました。
PwCあらたの有志メンバーによるプロボノ活動として、新潟県関川村でDXなどをテーマとしたワークショップを行い、村役場の若手職員らが参加しました。同時開催の小中学生向けワークショップを含め、村全体で持続的な未来に向けて議論する様子を紹介します。
PwCあらた有限責任監査法人は、岩手県沿岸広域振興局と連携し、地域の個人事業主の方々を対象とした会計支援のプロボノ活動「なんでも会計相談」を実施しました。