【連載】自治体とともに目指す、サステナブルなまちづくり ~第1回 岩手県沿岸地域~(前編)

多様な専門家が結集し、地域の経済振興を支援
~岩手県沿岸地域~

PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)は、2014年に岩手県沿岸広域振興局と、東日本大震災からの復興に向けた協力体制を構築することに合意。「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」専門家集団として、岩手県沿岸地域の被災事業者に対し、経営相談をはじめとしたさまざまなプロボノ支援活動を続けてきました。今回は岩手県沿岸広域振興局局長の石川 義晃氏をゲストにお迎えし、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)のパートナーで震災後に復興支援組織であるPwC「東北イノベーション推進室」を設立し、グローバルイノベーションファクトリーリーダーも務める野口 功一が、これまでの活動を振り返りながら、企業による持続可能な復興支援のあり方について意見を交わしました。

企業の新製品や新サービス、新たなビジネスモデルを生み出す「イノベーション」の創出・活性化を支援する専門組織

対談者

岩手県沿岸広域振興局長 石川 義晃氏(写真右)

PwCコンサルティング合同会社 パートナー 野口 功一(写真左)

試行錯誤を積み重ねた、その先に見えてきたもの

2011年の東日本大震災直後に開始したPwCコンサルティングの復興支援活動は当初から、社内でも高い関心を集めました。野口も震災直後から、被災地での支援活動を推進してきた一人です。中心組織として「東北イノベーション推進室」を立ち上げ、宮城県、岩手県、福島県を中心に被災自治体や復興活動を行っているNPOへ人材を出向させるなど活動を広げていきました。2014年にはより包括的な支援を目指し、岩手県沿岸広域振興局とのアライアンスを構築しました。現在はPwC Japanグループ全体で、沿岸地域の中小企業や個人事業主に対し、会計・コンサルティング・税務の総合的な支援を実施するまでに至っています。

石川氏:
アライアンスを締結した2014年というのは、ちょうど「復旧」から「復興」へとフェーズが変わりつつある時期であり、それまで数多くあった企業やボランティアからの支援が減少し始めた時期でもありました。ですから、PwC Japanの方たちから支援を申し出ていただいたことは、震災からの産業再生に向けた本格的な復興に取り組む上で、とてもありがたいものでした。また私たち自身でも、県内の商工団体などと連携した事業者支援や施策を行っていましたが、事業者が個別に抱える実際のビジネス上での課題に応えることは、行政機関があまり得意とするところではなく、正直、困難な部分があると感じていました。

このような状況もあって、会計や税務などの財務関係、継続可能なビジネスを行うための知見を持ったPwC Japanの皆さんには、事業者の個別ニーズに沿った支援をしてもらえるのではないかと、期待する声がたくさん上がっていたように思います。そして今は、私たちの期待以上の結果や反響が、支援を受けた事業者から続々と届いています。

野口:
そう言っていただけるのは本当にうれしいです。ただ実を言うと、沿岸広域振興局と協力体制を構築するまでに、私たちは数え切れないほどたくさんの試行錯誤をしてきたんですよ。震災直後、真っ先に福島に入りました。その後、宮城や岩手にも足を伸ばして、被害の状況を目の当たりにし、「これは何かしないといけない」「自分たちには何ができるだろう」と必死で考えながら街を歩いて回りました。もちろんそれは私たちだけの話ではありません。他のコンサルティングファームやITベンダー、金融機関など、さまざまな企業や人が、とにかくできることを探し、被災地に駆けつけていました。PwC Japanも同様に自分たちにできることを模索し、大学などの教育機関と協働で実証実験を行ったり、国内有数のインバウンド観光地を目指したまちづくりのプロジェクトや、子どもの心のケアのためのNPOのアレンジを始めました。

石川氏:
当時は、一度か二度被災地を訪れただけで、その後は来られなくなる方もいました。それに、せっかく支援に来ていただいても単発に終わり、なかなか信頼関係を構築できないという経験もしました。私たちとしても、自分たちがこれからどんなゴールを目指せばよいのか、見えていなかったように思います。ましてや誰にお願いすれば、自分たちに必要な支援をしていただけるかなど考える余裕もありませんでした。

野口:
当初は何をしても喜んでいただけたんです。できることにいろいろとトライしましたが、結果を残すことができなかったことも山ほどあった。それでもクレームをいただくことはありませんでした。厳しい言葉が出ることもない。そんな状態が続いている中、なんとなくですが「自分は被災地から本当に求められていることを分かっているのか?」と疑問に思うようになりました。

2012年に、東北大学や東北ニュービジネス協議会が中心となって被災地の人材育成を行う「東北未来創造イニシアティブ」に参画しました。PwCコンサルティングのスタッフを派遣してサポートを行いました。また、2013年12月には「東北イノベーション推進室」を設置し、支援活動を続けました。ただ一年ほどたつと、「何か違う・・・」という気持ちが徐々に膨らんでいきました。役に立つだろうと想定して取り組んでいることと、本当に必要とされていることにはギャップがあるのではないか。そんな思いがどんどん募っていったのです。

震災から3年、さまざまな経験を積み、たどり着いたのが、事業者一人ひとりのもとを訪ねて丁寧に話を聞くという、シンプルな支援活動でした。被災地と支援者の連携をサポートするNPOのアレンジで、支援企業を探していた沿岸広域振興局に赴いたのはちょうどそのころの話です。まさにターニングポイントと言うか、自分たちがやるべき事がようやく見つかりました。沿岸地域を訪ね、ビジネスを再開された方たちに話を聞くと、多くの人からエクセルの表計算を教えてほしいと言われました。今までどんぶり勘定でやっていた部分もあったようで・・・。それが「なんでも会計・税務・経営相談」を始めたきっかけです。まずは簡単なことでいいから、目の前の人たちの役に立つことをしようと、あらためて決意した瞬間でした。

2014年は、被災地にあれだけ多くいた企業が一斉に引き上げ始めた時期でした。そんな時にPwCコンサルティングは記者会見までしたものだから、岩手県釜石市の方に「PwCは面白いね。みんなが引き上げる時に、これからやるぞ、って記者会見するんだから」って笑われてしまって。そのことが今でもとても印象に残っています。

主要メンバー

野口 功一

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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