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PwC Japanグループで働くさまざまな人物の経験や肉声を通じ、インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)に関する取り組みの現在地や未来図を示す「I&Dは問いかける」。第2回の登場人物は「多国籍(Multi-national)」なコミュニティを通じ、楽しみながら個人や組織の成長につなげようと試みる社員たちだ。新たな価値を生み、社会からの信頼を得るには、お互いを尊重して理解を深めることが欠かせない。Nationality(国籍や文化の違い)を生かした変革への道のりと課題を点描する。
※文中敬称略。登場人物の所属名や肩書は公開時点のものです。
「対面で会うのは初めてですね!うれしいです」「納豆って食べられる?私はちょっと苦手」。2023年6月下旬、東京都内のPwC Japanグループのオフィスでのひとコマだ。参加者の国籍は日本を含むアジア、欧米各国とさまざま。自己紹介から日本での暮らしぶりまで、話題はころころと変わる。にぎやかな会話が響く会議室には瞬く間に明るい笑顔が広がった。
国籍や人種、年齢や役職に関係なく、従業員が集まって近況報告や困りごと、異なる文化や習慣などを共有し合う。PwC Japanグループでは「X-Culture Network Cafe」と呼ぶ公式なイベントを定期的に開く。ランチを一緒に食べたり、コーヒーを飲みながら雑談したり。仕事終わりに繁華街に繰り出してパーティーを催すことも。「Be Yourself!Be Different!」を掲げ、自分らしく、かつ、異なる価値観を受け入れる企業文化を育もうとの狙いだ。
Chinleong Tsaiは2022年8月にグループのメンバーファームに入社以来、20回ほどCafeのイベントに参加した。「世界のボーダーレス化が進む今、異なる背景や文化を持つ人々と仕事をする機会は日に日に増えています。そうした人々とよりよい協力関係を築き、いずれチームを率いることを考えると、Cafeへの参加はキャリアアップにも貢献しています」と実感する。
2023年3月に入社した下山 正夫は数回の参加を経て「いろんな文化や考え方を知ることができ、視野が広がります。英語で話す機会も多く、今後は海外との関わりを持ったキャリアにつなげられればいいなと考えています」と自身の未来に期待を寄せる。入社して約8年経つ女性管理職は「多様性を受け入れることで問題解決や既成概念に捉われない思考が加速します。こうした努力は会社の成功に貢献するだけでなく、私自身の無意識のバイアス(偏見)に挑み、自身の可能性を最大限に引き出すことにもつながります」と語った。
オンラインツールを使ったX-Culture Networkが生まれたきっかけは新型コロナウイルス禍だ。仕組みづくりに奔走したAdrienne Gilliverは「当初はみんなとても混乱し、孤独を感じていました」と振り返る。
コロナ禍の前にも似たようなイベントは不定期ながらあった。突如現れた未知のリスクを前に、対面で培ってきたコミュニケーションはぷつりと途切れた。交流の輪を分断させないため、オンラインツールを使い、毎週のように試験的にイベントを開き続けた。
当初は8人でスタートした交流の輪は今、650人ほどにまで広がった。内訳は日本国籍が60%、外国籍が40%。Gilliverは「コロナ禍をコミュニケーションのハードルにせず、むしろ新たな交流の機会にできました」と手応えを感じる。一方で「正直、もっともっとできることはあるはずです」と新たな仕組みづくりにも余念がない。PwCのグローバルネットワークを生かし、人材育成につながる交流の輪をより広くしようと模索する日々を送る。
グローバル展開する日本企業にとって、国際競争力を持った人材の育成・採用は今や重要な経営課題の1つだ。内閣府は経済財政白書(令和元年版)で、国籍の多様性を進める企業ほど売上高経常利益率がプラスに働くと分析する。ただ、多様な人材が活躍できる環境や仕組みを整えなければ、いくら多様性を進めても生産性を落とす可能性が高いとも指摘する。
日本は人材の多様性で世界に後れをとる。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が公表した「国際人材競争力ランキング2022」によると、世界63カ国・地域のうち日本は41位。2019年から4年連続で下落し、前回調査から2つ順位を落とした。
そんな状況下で、PwC Japanグループはいち早くグローバル人材の採用・育成に取り組んできた。2022年6月末時点の外国籍の従業員は584人と10年前と比べ5倍に増えた。出身国・地域も38と同1.9倍に拡大した。今も傾向は変わらない。
採用拡大に伴い、外国籍の従業員が働きやすい環境整える活動も続く。X-Culture Network Cafeのような交流の場を提供するほか、手続きに必要な資料には日本語と英語を併記。グループ内で使うチャットに翻訳機能を付け、世界各国のオフィスとの人材交流も進めている。総務や人事、ITなど関連する部署が連携し、誰もが壁を感じずに働けるよう、課題の洗い出しを不断に続ける。多様なスキルとバックグラウンドを持つプロフェッショナルファームとしての強みをさらに磨き、個人と組織の成長を促す好循環を生もうと試みる。
それでもI&Dの道のりは途上だ。「I&Dのカルチャーが当然のこととなっているか、と問われるとまだまだ遠いな、というのが正直な感想です」。2012年からPwC Japanグループのダイバーシティ推進リーダーを務める梅木 典子は胸の内を明かす。I&Dの浸透度を測るには「知っている」「理解する」「実践する」の3つのフェーズがあると指摘する。梅木は「2012年当時と比べると、想像できないくらい組織としての理解は進んできました。でも実践となると、まだ自分ごととなっていない部分もあります」と冷静に評価する。
ファームの急成長に伴う特有の事情もある。PwC Japanグループの従業員は今や10,000人を大きく超え、10年程度で2倍超になった。I&Dの文化を隅々まで根付かせようとしても、組織全体に広げるには「3歩進んで2歩下がる」の繰り返しにならざるを得ない。組織が大きくなり成長を遂げるほど、I&Dの文化を醸成する「深化」と、理解から実践に移す「進化」の重要性が増す。
採用面でもI&Dへの取り組みは無視できない。日本でも人材の流動性がじわりと高まる。価値観が多様化し、ライフワークバランスや成長の可否、待遇などと同様、I&Dへの取り組みも入社企業を選ぶ際の重要な指標になりつつある。「危機感がない企業は選ばれないと考えています。I&Dを止めていいことはありません。永遠に取り組み続けないといけないのです」。梅木はきっぱりと言い切る。
冒頭の場面に時計の針を戻す。会議室で撮影を終えた後、間をおいて参加者を入れ替え、オンラインと対面のハイブリッド形式の交流会が開かれた。「自分の国の食べ物って恋しくなるよね」「またみんなで集まれる機会が増えるといいね!」。再びにぎやかに会話を交わし、笑い合い、職場に戻る。小さな取り組みの積み重ねが、じわじわと見えないNationalityの壁を溶かす。
I&Dの取り組みに終わりはなく、道のりはまだまだ遠い。困難や挑戦はまだまだ続く。それでも「今まで歩んできた道は間違っていなかった」。写真の中で弾ける笑顔がそう物語っている。
グローバルネットワークを通じ、多様なバックグラウンドを持った人材が協働する中で、クライアントの価値創造に貢献するイノベーティブなグローバル人材を育成しています。
多岐にわたる分野の多様なプロフェッショナルがスクラムを組み、持続的な成長と信頼構築を支援します。