久木田 光明(Mitsuaki Kukita)

PwCコンサルティング合同会社 パートナー

X-Value & Strategy

地域金融機関を取り巻く現状

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により都心から地方への移住に注目が集まっているものの、地方における生産年齢人口の減少が大きな社会問題であることに変わりはありません。残念ながら、人口減少を起点とした「需要の減少」「供給(事業)の減少」「雇用機会の減少」が連鎖する、縮小均衡状態に陥りつつある地方は少なくないのです。

コロナ禍においては、中小企業の資金繰り支援など、地方経済において地域金融機関が果たす役割の重要性が再認識されましたが、本業が赤字に陥っている地域金融機関の数は増加傾向にあり、地方における預貸業務を中心としたビジネスモデルは行き詰まりを見せつつあります。

地域金融機関の持続的成長に向けたヒントは 総合商社の歴史にアリ

地域金融機関の支援策とその期待効果

こうした中で、地域金融機関の経営基盤強化に向けた支援策として、2021年3月には日本銀行による「地域金融強化のための特別当座預金制度」が導入され、また、金融庁による資金交付制度の創設も検討されています。これらの支援策により、経営統合や収益性改善など地域金融機関の抜本的な事業見直しに伴う費用負担が軽減され、新たなチャレンジが促進されるなどの効果が期待されています。

アフターコロナにおける地域経済の回復・再生には、こうした制度を活用しながら、地域金融機関がハブとなり、自らが持つ地域におけるネットワークやブランド、人材を最大限活用し、異業種とも連携した「地域エコシステム」を形成することが考えられるでしょう。

また、最近では新たな収益源を求める地域金融機関が、金融サービスの枠を超えて、自ら地域産品の発掘・販路拡大を支援する「地域商社」事業について関心を高めており、PwCへの問い合わせも増えています。

図表1:  地域金融機関を中心としたエコシステム

総合商社の業態転換の歴史に学ぶ

地域産品の商取引や人材派遣、ICT(情報通信技術)導入支援、観光需要獲得など、新たなビジネスモデルが地域金融機関の収益に貢献する程度はまだまだ限定的であり、預貸業務収益の減少を全て補完することは難しいと思われます。そのような環境下において、地域金融機関・地域商社にとっては、どのようなビジネスモデル展開が考えられるのでしょうか。

例えば、売買仲介型、事業・権益投資型、経営参画型へとリスクマネジメントを行いながら、ビジネスモデルを進化させてきた「総合商社」の業態転換の歴史がヒントになるのではないか、と筆者は考えます。すなわち、地域の振興・再生への寄与を目指す中で、地域企業経営への関与度を高める「資本参加型ビジネス」も、地域金融機関の今後のビジネス展開の選択肢の1つとなるでしょう。さらには、複数域内企業への資本参加・経営関与を通じて、企業間連携や業務・拠点・企業の集約および再編成を促すことも期待されます。

これからの地域金融機関や地域商社には、ビジネスプロデュース、事業投資、事業経営と役割を拡げ、地域全体の競争力強化を主導する役割を担うこと、そして、地域経済の活性化という本来のミッション実現に貢献することが求められていると考えます。

図表2  これからの地域金融機関・地域商社のあり方


久木田 光明(Mitsuaki Kukita)

大手日系コンサルティングファームを経て2012年より現職。

中小企業から大企業までさまざまな企業に対して、企業戦略、事業戦略、営業/マーケティング戦略、経営管理、グループ経営、経営変革(BPR)などの戦略/ビジネスコンサルティングを10年以上にわたって提供。

特に近年ではM&A戦略策定、買収対象企業の選定、ビジネスデューデリジェンス、統合後の統合プラン策定および統合実行支援(物流統合含む)など、M&A/企業統合に関する実績を多数有する。


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