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PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)のIndustrial advanced technology CoE(以下、IAT CoE)では、変化が激しい社会情勢を踏まえて、先進テクノロジーやAI技術を活用したDXおよびAIトランスフォーメーション(以下AX)推進ソリューションの開発を行っています。ビジネス領域とテクノロジー領域の両輪からサービスの展開を目指すIAT CoEのメンバー3名が、具体的な事例を交えながら、どのようにソリューションを開発、更新しクライアントに届けているのか、その背景と魅力を語りました。
左から坂本歩、横井みゆき、林由佳
横井:
近年、業界を問わず、深刻な人材不足や競争の激化、さらには環境規制など、多様な課題への対応が求められています。このような状況の中で、IAT CoEが展開しているソリューションや担うべき役割としてどのようなものがあるのでしょうか。
坂本:
IAT CoEでは、もともとは製造業を中心に、テクノロジーを活用した業務変革の提案や実装を行なっていましたが、そこで得たデータ活用に関するノウハウを転用し、小売や商社、建築業界などのクライアントにもサービスを提供しています。
いずれの業界でも深刻な人材不足や競争激化、環境規制への対応などビジネス環境は厳しさを増しています。そのような課題への対応策として、多くの企業がシステムの刷新やIoTを活用したスマートファクトリー化など、DX推進に取り組んでいます。さらに、近年ではDXをさらに深化させ、AIによる予測や自動化、知見の発掘に基づいて、組織全体の価値創造やビジネスモデルそのものを変革していくAXに取り組む企業も現れ始めています。しかし、多くの企業がDXの一環で導入したシステムや収集したデータをどう使えばいいのか分からないという課題に直面しているのが現状です。このように、改善すべき課題が明確に見えていないまま、ツールの導入だけが進んでしまったケースが少なくありません。私たちはクライアントから共有いただいたデータに対して活用方法を提案し、現場で働いている方々を巻き込むことで、クライアントと一体となって課題解決に向かって進むべき方向を検討することを重要視しています。
林:
AX/DXを推進するためには、単なるツールの導入ではなく、活用要件に基づいたデータの収集と知見の蓄積、そして全体的な構想が不可欠です。どのようにデータを活用していくかは紙に書いただけではイメージすることが難しいと考えています。その後の分析や意思決定につながる切り口を明確にするために、実際のデータを使用して議論を進め、クライアントの業務に合わせた試作(PoC:Proof of Concept、概念実証)を行いながら要件を洗い出していくことが大事だと考えています。
坂本:
AX/DXを推進する上では、目に見えるデモやプロトタイプがあると理解が進みやすいと考えています。IAT CoEでは、Industry Solution Garageというソリューション体験型の展示場に、ミニチュア工場を開設しています。この施設では、製造業出身者の専門知識を活かし、実際の工場設備を再現しています。稼働しているミニチュア工場を通じて、データがどのように収集されるかをクライアントに実際に見ていただけるのが特長です。
例えば、漠然とした課題意識を持っていたクライアントでも、データ取得までの道筋や活用事例など、動いているミニチュア工場を体験することで、イメージが具体化していきます。この体験を通じて課題が明確化され、それを共有した上でプロジェクトを進めることができています。
横井:
体験することでイメージが具体的になることが大事なのですね。ただ、一口にデータ取得や活用方法と言っても、その範囲は非常に広い印象を受けます。実際にはどのような活用事例があるのでしょうか。
坂本:
製造業を例に挙げると、基幹システムから取得できる生産実績だけでなく、製造機器から取得可能な電力量・稼働時間など扱うデータは多岐にわたります。まずこうしたデータを一元的に収集・蓄積し、過去のデータを可視化して改善につなげることがDXにおける焦点になります。
また、今までは工場内のデータを単純に活用することが中心でしたが、AXではベテランの経験やノウハウをAIで収集・デジタル化し状況に応じて適切な作業が提案される、AIエージェントによってAI同士がシステム間で連携しサプライチェーンの最適化を進める、などの活用も出てくると考えています。
林:
直近の事例として、活用事例をもとに製造業におけるDX戦略の策定を行うというプロジェクトもあります。実際の工場を訪問し、基本的には、ヒアリングや議論を通じて全体ロードマップを描いていくというプロジェクトですが、私たちはそれと同時に、短期間で効果が期待できる施策に対しては、先行してPoCを実施しました。実際の現場の困りごとを解決することで、よりDXの効果を実感してもらうことができた結果、クライアントに積極的に戦略策定の議論に参加してもらうことができました。全体としての方向性を描くと同時に、実際のデータが活用されている姿を見せるアプローチをとることによって、DXの実現性が具体的になり、円滑にプロジェクトを推進することができました。
横井:
IAT CoEは製造業以外の業界に向けたソリューションの拡大も目指していますが、現在取り組んでいるテーマについて教えていただけますか。
坂本:
ソリューションの開発は「ビジネス」と「テクノロジー」という、大きく2つのカテゴリに分けて考えています。ビジネス分野ではスマートホームやスマートストア、テクノロジーの分野ではAIとロボットをテーマに掲げています。
林:
私からビジネス分野の紹介をさせていただきますね。例えば、スマートストアでは、ユースケースに沿ったロボットやバーコードリーダー、サイネージ等の実績を組み合わせるなど、想定できるデータの利活用を念頭にソリューションを開発しています。
代表的な事例では、顔認証を用いたタッチ式デジタルサイネージがあります。このシステムでは、来店された方の顔を読み取り、表情から感情を検知したり、来客人数を計測したりすることで、購買履歴だけでなく、場面や状況に合わせておすすめ商品を提案するシステムを考えています。
他には店舗内に商品サンプルのみを展示し、購入希望の商品を消費者がスマートフォンでスキャンする仕組みもあります。このスキャン情報をもとに、バックヤードのピッキングロボットが自動で梱包し、レジで受け取ることができるシステムなどを検討しています。このような取り組みは、小売業の知見があるメンバーが中心になり、実際の現場で課題に感じていたことを参考にして生まれたものです。
坂本:
ロボット分野では、協働ロボットの導入を予定しており、画像認識やAI技術と組み合わせたソリューションを開発しています。人からロボットへの置き換えによる単純な「省人化」だけに留まらず、「人とロボットとの高度な協働」を目指し、新しい生産形態の提案も視野に入れています。
現在稼働中のミニチュア工場や、スマートストアとの連携による統合的なソリューション開発も計画中です。一方、AI分野では、製造工程での不具合発生時に、過去の事例や技術マニュアルを基に原因特定と解決手順をガイドするAIチャットボットや、社員のスキルや過去の評価、稼働状況を総合的に分析し、プロジェクトに最適な人材を提案する人材管理支援AIなどの開発を検討しています。
横井:
実際にAXやDXを進めていく上で、どのような点に強みや特徴があるのでしょうか。
林:
私たちの強みは、現場を巻き込んだPoCの実施を重視していることですね。まずは、活用目的を明確にするため、業務要件に沿ったデータ分析・活用のPoCを素早く実施し、理論だけでなく、実際にユーザーに体験していただき、その要望を反映させながら改善を重ねていきます。そうして得られた知見を業務・システム要件として整理し、進めるべき方向性を明確にしていきます。
IAT CoEは業務知見と先進テクノロジーの知見の両方を重視しています。AX/DXを実現するためには、業務知見に加え、収集したデータを用いて、意思決定を助けるデータ可視化画面の開発を行うデ―タビジュアライゼーションや、データ活用の定義・設計だけでなく、IoTデータの収集・蓄積・加工・統合のアプローチ設計やデータマネジメントまで行うなど、スキルを複合的に持つ人材が必要になります。もちろん、最初からそれら全てのスキルを持つ人はいません。定期的な勉強会や先進テクノロジーへのキャッチアップを行いながら、IAT CoEメンバー全員で成長し、よりクライアントにとって最適な提案ができる人材となることを目指しています。
横井:
IAT CoEの今後の展望を聞かせてください。
坂本:
IAT CoEは製造業を中心にサービス提供を実施してきましたが、最近では、私たちが培ったデータ活用のノウハウを求め、さまざまな業界からご相談をいただく機会が増えてきました。例えば、建設業では経営管理指標の可視化、小売業では需要予測や顧客の傾向分析など、業種は異なりますが「データを活用して現場の課題を解決したい」というニーズは共通しています。今後さらに業種の幅を広げていきながらDXからAXへと進化する過程を伴走して支援できればと考えています。
林:
現在、エネルギー業界向けに、エネルギー業界以外の新規サービスを立ち上げる支援なども行っています。現代のビジネスにおいて、新しいサービスの立ち上げにはDXは必要不可欠となっており、IAT CoEがこれまでに培ってきた知見や、業界の枠を越えた多種多様なネットワークとAIを掛け合わせたビジネス創出に対する期待が高まっていると感じます。私たちはAX/DX推進の支援をしながら、新しいビジネスの可能性を切り開くパートナーとして、さらに活躍の場を広げていきたいと考えています。
横井:
先進テクノロジーのキャッチアップや業務知見の重要性は現場においても実感しています。特に現場経験の有無によって差が出る業務知見の習得に難しさも感じているのですが、ビジネスとテクノロジーの両輪を視野に入れた際、お2人はどのようにキャッチアップを考えているのでしょうか。
坂本:
横井さんが感じているとおり、業務知見の習得は難しい問題です。ただ、IAT CoEの特長でもあるITの知見、データの知見、業務の知見の3つの知見の輪が重なった人材を育てることで、社内外のコミュニケーションコストを抑え、より深い議論が可能になります。これは、他社にないIAT CoEの大きな強みだと考えています。
習得方法としては、先進テクノロジーなどITの知見に関しては、各メンバーが個別に情報収集を行うと同時に、定期的な勉強会を通じて知識を共有しています。業務知見については、多様な人材が集まるというPwCコンサルティングならではの特長を活用しています。例えば、私であれば、物流業出身ですし、横井さんならSler(システムインテグレーター)出身です。このように他業種を経験している人材の豊富さを最大限に活かし、現場での体験を共有する業務知見伝承会を定期的に開催しています。
林:
業務知見の習得は自分1人で完結できるものではありません。多様性の文化があるPwCコンサルティングだからこそ可能な解決策があると考えています。
また、キャリアプランに関するアドバイスとしては、自分の中で一つ、軸を持つことが重要です。関わっていきたい業界の最新情報を常に追いかけ、専門性を高め、社会的に注目を集めている業界について知識を積極的に吸収することが挙げられます。コンサルタントとしての価値を高め、自分の魅力をより際立たせるという視点で考えると良いかもしれませんね。
坂本:
そうですね。今のお話に加えると、私の場合はベーススキルを磨くことが楽しかったので、それをキャリアの軸に据えていました。基礎スキルをしっかりと養うことで、汎用性が高まり応用にもつながります。IAT CoEの研修などを活用して基礎的なコア能力を養い、やりたいことができた時に特化させていくという方法も良いと思いますよ。
林:
横井さんの思い描く成長ビジョンや、今後挑戦してみたい業務はありますか。
横井:
蓄積したデータの活用方法が課題になりやすいというのは実は前職でも感じていた部分です。また、AX/DXを推進するにしてもノウハウをまだ持っていない企業が多く、社会変化のスピードに対応しきれていない印象も受けていました。PwCコンサルティングのようなさまざまな知見を得られる場所にいるからこそ、多くの知識やノウハウを身につけ、総合的に課題にアプローチできるようになることが目標ですね。
坂本:
素晴らしい目標ですね。総合力を養うことを考えるとハードルは高く感じられると思いますが、PwCコンサルティング、そしてIAT CoEとしてもそれを実現するための研修やサポート体制が整っています。横井さんももちろんですが、AXを通じて企業の変革を支援したいという想いを持つ方にぜひ仲間に加わっていただき、ともに成長しながら仕事をしたいと思っています。
横井:
PwCコンサルティングは研修や勉強会、先輩方からの知見を得られるという点で、とても恵まれた環境だと実感しています。本日はお話しいただきありがとうございました。
PwCコンサルティング合同会社 ET-ISマネージャー 坂本 歩
大手家具小売りの物流子会社に新卒で入社し、倉庫稼働管理、新規拠点立ち上げ、自動搬送ロボット導入プロジェクトに携わる。その後、PwCコンサルティングに転職し、工場の在庫管理高度化やプラットフォーム構築、建設会社の営業業務改革などデータ活用や基盤構築のプロジェクトを中心に従事。
PwCコンサルティング合同会社 ET-ISマネージャー 林 由佳
新卒でPwCコンサルティングに入社し、金融や不動産を中心に戦略策定や構想検討などに携わる。一度転職を挟み、PwCコンサルティングに再入社。現在は見える化プロジェクトに従事し、建設業の経営管理DXプロジェクトなどを経験。
PwCコンサルティング合同会社 ET-ISアソシエイト 横井 みゆき
SIer、教育系事業会社を経て現職。SIerでは基幹システムの再構築、会計システム運用保守などを経験。現在は、TISAX(自動車業界にて広く採用されるセキュリティ審査)の認証取得支援に従事。