海外コンサルタントとのコミュニケーションプログラムを構築――PwCコンサルティングにグローバルでの成功体験を提供

PwCコンサルティング合同会社 テクノロジーコンサルティング テクノロジーアドバイザリーサービス 小杉 幸次郎

PwCコンサルティング合同会社 テクノロジーコンサルティング テクノロジーアドバイザリーサービス 小杉 幸次郎

I&D推進、異文化とのコミュニケーション活性化に向けて

私はPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)テクノロジーアドバイザリーサービスに所属し、業務を行いながら、インクルージョン&ダイバーシティ(以下、I&D)をテーマにした社内活動にも参画しています。PwCはジェンダーやナショナリティ、働き方、個性といったさまざまなI&Dトピックに対する活動を通じて、お互いに相手の多様性を尊重し、一人一人が生き生きと働くことができるインクルーシブなカルチャーの組織を目指しています。

組織の多国籍化が進む中、異文化とのコミュニケーション活性化はビジネスにとって重要な要素の1つです。私はI&D活動に参画してからは、主にナショナリティに関するトピックに携わり、バディマッチングプログラムの立ち上げに最も力を入れてきました。バディマッチングプログラムとは、PwCコンサルティングのテクノロジーコンサルタントが、PwCグローバルネットワークの海外オフィスで働いている現地のテクノロジーコンサルタントとバディを組み、一定期間継続的にコミュニケーションを行うプログラムです。

海外での体験をチームに還元したい

もともとテクノロジーコンサルティングには、「グローバルとの接点を持ちたい」「海外オフィスとコミュニケーションをとりたい」というニーズが数多く挙がっていました。プログラムの立ち上げにあたり事前アンケートを行ったところ、回答率は非常に高く、回答者の8割以上が本プログラムに興味を持っているということが分かりました。

一方、海外のコンサルタントとのコミュニケーションへの不安も見られました。私は英国での勤務経験があるのですが、渡英前には海外旅行は好きだったものの、それまで留学など海外での生活を経験したこともなかったため、赴任に際してコミュニケーションへの不安を抱いていました。それでも海外での勤務を乗り越え、異なる文化を持つ人たちとともに働くことの楽しさに気付くことができました。楽しいと思えるに至ったのは、彼ら・彼女らとのコミュニケーションにおいて小さな成功体験を積み重ね、少しずつ自信を持つことができたからだと思っています。

私自身の体験をテクノロジーコンサルティングチームに還元したい。このプログラムで成功体験を積み上げ、コミュニケーションに自信を持ってもらいたい。グローバルなチームで働くことは楽しいものであることを実感してもらいたい。このような想いを込めて本プログラムを立ち上げました。

小杉 幸次郎

自発性なコミュニケーション継続を目指したプログラム作り

バディマッチングプログラムの構築にあたっては、海外オフィスのテクノロジーコンサルタントとのコミュニケーションを通じて成功体験を獲得してもらうことを目的に掲げました。ここで言う成功体験とは、自発的なコミュニケーションの継続です。したがって、自発性を引き出し、継続性を向上させることを重視しながらプログラムを設計しました。

PwCグローバルネットワークは世界149カ国に拠点を有しています。その幅広いネットワークの中で、プログラムの相手国として、PwCインドのコンサルティング部門(以下、PwCインド)に協力を仰ぐことにしました。インドでは日本の文化に対する興味関心が強いと聞いていたため、食やスポーツといったカジュアルな話題で盛り上がることに期待しました。また、インドはテクノロジー分野に強みを持っていることから、業務に関連するテクノロジー関連の話題への期待もありました。

英国での勤務時代、同僚とのコミュニケーションのきっかけになったのはサッカーの話題であり、そこから徐々に業務の話でもコミュニケーションが盛り上がるようになりました。こうした自らの経験から、カジュアルな話題、業務の話題における共通点がコミュニケーションの継続に寄与する実感を持っていました。

バディとのコミュニケーションの内容や頻度は各ペアで決めてもらう仕組みとし、かつ、プログラム運営チームからのサポートは初回のコミュニケーションで必要がある場合のみとしました。参加者に自身の成功体験として認識してもらうためには、運営チームからのサポートのバランスが重要と考えていたためです。インドとは共通の話題が多そうではあるものの、全くサポートがなければ、参加者が自力でコミュニケーションできず、苦い経験になってしまう恐れがあります。一方、運営チームからの過剰なサポートにも懸念を持っていました。

過去、英語が話せる日本人が同席している場面で、私は発言に尻込みしてしまうことが多々ありました。多くの方にも経験があるのではないでしょうか。サポートのし過ぎは参加者の自発性を損ねると考えたため、最小限にとどめることにしました。

また、本プログラムでは最初に3カ月間のトライアルを実施することにしました。期間を区切ってトライアルすることで、改善点を探り、継続的に改善・拡大していきたかったためです。

小杉 幸次郎

全てのペアがコミュニケーションを完走し、満足度の高いプログラムを実現

本プログラムの準備段階で最も苦心したのが、日本とインドの応募者をどのようにマッチングするか、という点でした。インド側のテクノロジーチームは大所帯であるため、さまざまなチームに多様な人材が在籍しています。日本側の応募者がコミュニケーションしたい内容に沿うようなコンサルタントをPwCインド内でどのように見つけ出し、どのようにマッチングをすればコミュニケーションが盛り上がるか、なかなか正解を見出せずにいました。

今回PwCインドに協力を仰ぐとなった際、日本のテクノロジーコンサルティングチームやPwCインドのI&Dチームなどに所属する多くの方々に相談しました。その中で、PwCインドとPwCコンサルティング双方を知る人物がいることを知りました。PwCにはグローバルモビリティという海外オフィスへの赴任制度があるのですが、今回、PwCインドからPwCコンサルティングに2年間赴任していたことのあるコンサルタントの協力を得ることができたのです。

日本・インド双方のテクノロジーチームを熟知したPwCインドのコンサルタントと協力し、両オフィスの各チームの領域や特徴を基に、日本のチームにミラーするインドのチームをそれぞれ特定することができました。その結果、各チームレベルで応募者をマッチングすることで、類似の専門領域を持つ相手とマッチすることができたのです。プログラムを企画する中で、PwCのグローバルネットワークの強みを感じた瞬間でした。

結果、13組のペアを成立させることができ、全ペアに3カ月間のコミュニケーションを完走してもらうことができました。アンケートでも10点満点中8.3という高い満足度をいただくことができ、かつ全員が今後もバディとコミュニケーションを続けたいと回答してくれました。自発的なコミュニケーションの継続という目的は達成できたと考えています。

また、マッチングの精度が高かったことへのフィードバックを多くもらうことができました。インド側のチームと丁寧に会話を重ね、妥協なくプログラムを作り切ることができたことは、私にとっても1つの成功体験になりました。

目指すはアジア、パシフィックオフィスへの拡大

本プログラムの立ち上げを通じて、改めてグローバルチームと協業する楽しさを再確認できました。今回私のキャリアの中で初めてインドの方々とコミュニケーションを取ったのですが、非常に親身でユーモラスな一面を持つ彼ら・彼女らと仕事ができたのは、とても心地よい経験でした。

大変うれしいことに、多くの方からプログラム継続の希望の声をいただいたため、トライアルでのフィードバックを基に、本プログラムの第2弾を企画中です。

まずはアジア、パシフィックのオフィスを中心に拡大していこうとしています。PwCコンサルティングとしてアジア、パシフィックとのアラインメント強化が進む中で、本プログラムを草の根活動としての異文化交流プログラムに昇華していければと考えています。また、気軽に参加できるようなカジュアルなイベントも検討中です。

引き続き、本プログラムの拡大を通じて、より多くのテクノロジーコンサルタントにグローバルでの成功体験を獲得してもらい、異文化とのコミュニケーションの活性化、I&Dカルチャーの醸成に貢献していきたいと思っています。

小杉 幸次郎