グローバル案件で「言語力」より大切なものとは

2025-01-22

PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 耿 雨豪

PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 耿 雨豪

クライアントからの期待とは

―これまでに実際にどのようなプロジェクト・案件に取り組まれましたか。また、その際にはどのように課題に取り組まれたのでしょうか。併せて、クロスボーダー案件特有の難しさやXVSが提供できる価値について教えてください。

郭:
直近では日中企業間の事業売却事例があります。中国の買収側企業と日本の被買収側企業の事業を合わせてジョイントベンチャーを組成したのですが、XVSではDay1からポストディールまで一貫して対応しました。

この案件には2つの大きな課題がありました。1つは全体的な進捗状況がそもそも見えていなかったことです。両社の拠点はそれぞれ日中にまたがっており、中国企業側は社員数が数千人。グローバル拠点も複数構える規模でした。コミュニケーションの糸口がなかなか見えなかったため、私たちのチームが全体のマスタースケジュールを引き直し、それを実務レベルで実行可能なレベルに落とし込み、詳細な計画を作成していきました。そして、目の前の必要な作業と経営が欲しい情報がリンクするよう状況を整備していきました。

もう1つの課題は、意思決定のプロセスが不明瞭だったことです。買収前・買収後の業務のなかで、誰がいつ決めたのか分からない、意思決定を誰に委ねるべきか分からない、社長の知らないところで実は会長から決裁が下りているといった事態が相次いで発生するなど、意思決定のガバナンスが混迷を極めていました。そこで私たちはプロセスを明確に定義することを提案し、両社と協議した上でガバナンス体制をデザインして、共同合議制のようなシステムを設計することにしました。

耿:
クロスボーダー案件では言語力の優劣が成否を分けると思われがちですが、それ以上に重要なのは「暗黙知を理解すること」です。それぞれの企業には現在の組織体制に至るまでの歴史や文化があり、そのなかには暗黙的に行われているプロセスがあったり、ビジネスにおいて数字を重視するのか、理念を重視するかといった言語化されていない価値観があったりします。その暗黙知を理解しないことには、仮に語学が堪能で会話ができたとしても、エンゲージに至ることは難しいです。

郭:
耿さんが「暗黙知」という言葉で表現した通り、ひとえにカルチャーと言ってもさまざまな要素があります。例えば、意思決定プロセス。日本企業はボトムアップ型であることが多く、アジェンダを紙に落とし、関係者間の合意形成を図りながらプロジェクトを前に進めることを好みます。一方、米国の場合は経営陣がトップダウン的に意思決定を行うことが多いので、トップとの直接的なコミュニケーションが重要となります。そのような違いを理解した上で、両社の合意形成を円滑にサポートできるというのが、クロスボーダーソリューションの提供価値の1つです。

―クライアントはXVSにどのようなことを期待しているのでしょうか。

耿:
双方の企業のイメージや想定が全く異なることは多々あるため、しっかりと現状を把握し、状況を可視化することから始まり、人材、プロセス、システムなどの議題・情報を一元集約してレポートすることが求められていると思います。統合前は買収先・被買収先、そして媒介役となる私たちを含めて予測できないことがたくさん起きますので、何か1つの専門知識だけでは価値創造は難しい。あらゆる機能を横断的に駆使することで、予測できなかったシチュエーションやリスクを一つひとつ解決し、最終的にクライアントの期待値を超えた時に良い評価をいただけることが多いです。

―XVSのクロスボーダーソリューションは、他の競合サービスと比べてどのような強みがあると思いますか。

郭:
PwCの最先端の知見と、各領域のプロフェッショナルが持つ多様な経験や価値観を掛け合わせている点にあると思います。VUCAと呼ばれる時代の中で、社会やクライアントの課題は高度化・複雑化しており、一個人や1つのチームで解決できることは限られてきています。

XVSでは、その名の通り、多様な価値(Value)をかけ合わせ(Cross)、クライアントの変革(Transformation)を支援することをミッションとしています。そして、その掛け合わせには私たちのチームだけではなく、PwCグローバルネットワークのプロフェッショナルたちも含まれています。

私たちはクライアントの課題やニーズに応じて、人事、IT、財務などのPwCコンサルティング合同会社の専門チームはもちろん、PwC Japan有限責任監査法人、PwC税理士法人、PwCアドバイザリー合同会社などPwC Japanグループのメンバーファーム、そしてPwC米国やPwC中国などPwCグローバルのメンバーファームと協力し、クライアントの価値を最大化できるよう努めています。

耿:
本来であれば、客観的な数字や専門性に根差したロジックを積み上げて、経営に影響力を与えるというのが理想的な戦略コンサルタント像だと思います。しかし、現場はそれほどシンプルなものではありません。特にクロスボーダーディールにおいては、ポリティカルな要素が意思決定を左右する傾向が強く、ロジックだけで動くことはまずありません。

その際、PwCやXVSのグローバルネットワークが非常に有効に機能します。世界各地にオフィスがあり、それぞれのステークホルダーの裏にある暗黙知や文化を理解した上で、思考順路に沿って正しい情報を伝えることができるからです。またそのような実情を前提に、ロジックの上にしか成立し得ない実行力に乏しいプランを排除して、実行可能な戦略を立てられるのも私たちの特長であり、競争優位性と言えます。

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