日本企業にSXを実装して持続的な成長を実現する―サステナビリティCoEが目指す世界とは

  • 2023-10-18

※本稿は、Forbes JAPANのウェブサイトに掲載されたコンテンツを媒体社の許可を得て転載したものです。無断複製・転載はお控えください。

※法人名・役職などは掲載当時のものです。

あらゆる経済活動は環境や社会に依存して成立している。そのバランスが崩れようとしているいま、強い危機感をもつ企業を中心に、長期的な存続のための成長戦略としてのサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)が注目されている。そのSXの重要性をいち早く説き、実装に向けた企業支援を行うPwC Japanグループのチームが目指す世界と想いを取材した。

PwCは、そのグローバルネットワークにおいて「Build trust in society and solve important problems(社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する)」というパーパスを掲げ、この存在意義を胸に約328,000人のメンバーが世界152カ国で働いている。クライアントがあらゆるステークホルダーと堅い信頼関係を構築し、重要な課題を解決することで、持続的な成長を遂げていくことを支援する。同時にPwCもクライアントの支援を通じて社会に信頼を築き、とことん課題解決に向き合うことにより、持続的に成長していく。世界をサステナブルに変革したいという希望を抱く仲間が集まることで、課題解決力が何倍にもなり、生み出されるポジティブ・スパイラルは、グループのサステナビリティビジネスを牽引する。

ビジネスや社会のChange Makerになる

いま、この地球上で求められている喫緊にして最重要級の課題であるサステナビリティ。その解決に求められるのは、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の意味や意義を熱く語り、変革への道筋を力強く示し、新たな価値創造に向けて伴走できる能力である。そうしたケイパビリティを有するコンサルタントが、PwC Japanグループには存在している。

坂野俊哉 PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス/PwCサステナビリティ合同会社 シニア・エグゼクティブ・アドバイザー

坂野俊哉(以下、坂野):企業経営にとって「サステナビリティ」とは何なのだろう。どのような意味をもつのだろう。そうしたことを考えないままに企業経営を行うわけにはいかない時代が訪れています。いま、企業がとるべきなのは、(環境保全や社会課題のための)さまざまな規制に対応していくといった外発的な行動だけではありません。

企業が生み出そうとする経済価値は、環境と社会が健全に保たれてはじめて成り立つものです。「環境価値」という親亀の上に「社会価値」という子亀が乗り、さらにその子亀の上に「経済価値」という孫亀が乗っている。そのような図式を思い描いてみてください。親亀がこけたら、どうでしょうか。子亀も孫亀もこけてしまいます。

環境価値が破壊され、社会価値が毀損(きそん)されるという大きなリスクに直面しているいま、企業は内発的・主体的な態度でサステナビリティ経営に取り組んでいく必要があります。事業の基盤となる環境価値や社会価値を維持・増強しながら、事業の持続的な成長を実現していくのがサステナビリティ経営の本質です。このサステナビリティ経営を実践するにあたって不可欠となるのが、内発的・主体的な態度で長期的な視点をもちながら全社的に行っていくサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)なのです。

坂野は、PwC Japanグループのサステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス(サステナビリティCoE)に所属するシニア・エグゼクティブ・アドバイザーである。サステナビリティCoEは、SX推進の専門家集団であるPwCサステナビリティ合同会社のメンバーを中心に編成されているチームであり、PwC Japanグループを横断して取り組むサステナビリティ課題対応のハブ組織だ。

いま、このチームが日本企業によるサステナビリティ経営のドライブに大きく貢献している。リード・パートナーの磯貝友紀がチームのミッションを教えてくれた。志高きチームには、その活動の意義を端的に表すと同時にメンバーの想いの実現を促す言葉が用意されている。

磯貝友紀 PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス/PwCサステナビリティ合同会社 リード・パートナー

磯貝友紀(以下、磯貝):サステナビリティCoEのミッションは、「SXを通じて、新しい価値をスケールをもって生み出し、ビジネスや社会のChange Makerになる」というものです。スケールをもって社会を変えていきたい人たち。そういう人たちの集う場所が、このチームなのです。Change Makerになるために、私たちはプロアクティブな(前向き・積極的・先見的な)アクターでなければなりません。使命を着実に果たしていくために、「Be」ではじまる5つの行動規範も掲げています。

Be idealistic 夢を見よう。仲間と一緒に未来を描こう。
Be brave and strategic チャレンジをしよう。大胆に、でもちゃんと頭を使おう。
Be professional プロフェッショナルとして価値を生み出そう。
Be tenacious 変化が起こるその日まで、諦めずにやり続けよう。
Be collective 多様な才能と連帯し、1人ではできない変化を起こそう。

さらには、「Be」のそれぞれに「Do」と「Don’t」の項目を設けています。例えば、「Be idealistic」の「Do」として挙げているのは3つです。

Have high ideals and envision a perfect world. 理想を高く持ち、あるべき姿を描く
Consider how to make things better. どうすれば良くなるかを考える
Speak honestly. Share your opinions. 本音で話す。意見をぶつける

これらの言葉は、上意下達の組織風土から生まれたものではありません。チームのメンバー全員がアイデアを出し、自分たちのあるべき姿についておよそ1年をかけて議論した成果です。

伊藤亮太 PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス/PwCサステナビリティ合同会社 ディレクター

伊藤亮太(以下、伊藤):磯貝が言うように、チームのミッションは下意上達(ボトムアップ)で決まりました。さまざまなバックグラウンドをもったメンバーが活発に意見を交わし、自らチームカルチャーを創造しているのです。しかも、単にミッションを定めて終わりにはしていません。サステナビリティCoEではひと月に1回、チームのミッションおよびカルチャーについての話し合いの場を設けています。掲げる言葉と実際の行動は、一致してこそ意味があります。ミッションにある「新しい価値」とは、どのようなものか。「Change Makerになる」ために、どのようなことにチャレンジしていくのか。そうしたことについて、メンバー間でディスカッションしています。

ディレクターの伊藤は金融系シンクタンク、外資系戦略コンサルティングファーム、社会課題解決型のスタートアップ企業を経て、2022年にサステナビリティCoEにジョインしている。チームの多様性を保ちながらカルチャーフィットも実現するためには、月1回のディスカッションが欠かせないという。

サステナビリティに対し、長年にわたって知見を積んできた

PwC Japanグループによるサステナビリティに対する真摯な取り組みは、ここ最近になって始まったことではない。2003年から欧州の企業などがアフリカを中心に取り組んでいるサステナブルビジネスを現地で支援してきた磯貝は、2011年にPwC Japanグループのメンバーファームに入社して以来、日本企業のサステナビリティ経営を支援するべく奮闘してきた。

磯貝:2003年当時から、特に欧州の大企業はサステナブルビジネスに人材と資金を投入していました。そこには15年、20年といった長期の投資戦略があり、新たな成長市場として環境ビジネスや社会ビジネスをとらえていたのです。しかし、11年に日本に帰ってきたとき、サステナブルビジネスを視野に入れている企業は見受けられませんでした。すでに波が起きていて、世界は変わりつつある。これから先の日本企業も長期的な視野でサステナブルビジネスに取り組む必要がある。私はそのように確信し、14年からは坂野と共に日本企業に向けて長期のサステナビリティ戦略策定を行ってきました。

海外での実体験と確信をもって帰国してきた磯貝に、日本企業への戦略コンサルティング経験が豊富な坂野。「サステナブルビジネス」や「サステナビリティ経営」といったワードがまだ日本において一般的ではなかった時代から、ふたりの強力なリーダーシップに牽引されたPwC Japanグループのサステナビリティサービスは、現在のサステナビリティCoEにつながる道のりを着実に歩んできた。日本国内では他社に先駆けて支援を開始し、長年にわたって知見と実績を積んできたことは言うまでもない。

ひと口に「サステナビリティ」と言っても、カバーしている領域は広い。「CO2・気候変動」「資源・廃棄物」「水」「生物多様性」という4つの環境課題、さらには「身体的人権」「精神的人権」「社会的人権」という3つの社会課題に大別される。

伊藤:サステナビリティCoEには経営戦略のプロフェッショナルもいれば、個別のサステナビリティテーマに対して深い知見を有したプロフェッショナルもいます。私は前者です。いろいろなケイパビリティをもった仲間と共創しながら、企業や社会のサステナビリティを高め、新たな価値を生み出していくのが私の務めです。

磯貝:いま、チームには、伊藤のように外資系戦略コンサルティングファームから移ってくる人も増えています。これは、本当に光栄なことです。サステナビリティCoEでサステナビリティ・ストラテジストとして働くために、世界でも有数の戦略系ファームから人材が集まってくれているわけですから。サステナビリティに関する戦略を立案、実行するなら、他のどのファームでもなくPwC JapanグループのサステナビリティCoEがいい。日本において早くからサステナビリティに関する戦略を打ち出してきた結果として、そのような理解が得られているとしたら大変に喜ばしいことです。

伊藤:PwC Japanグループには、サステナビリティを志してきた歴史の長さがあります。サステナビリティ経営への理解の深さ、クライアントに提供できる価値の大きさで、他を圧倒していると感じています。私が転職の際に惹かれたのは、サステナビリティに対する本気度でした。サステナビリティとは新しい価値を創り出し、ビジネスや社会を大きく変えていくことです。だから、簡単ではありません。さまざまな反対やハードルを乗り越えていくことが必要となります。無事に乗り越えるためには、より志の高いチームに所属しなければならないでしょう。採用に至るまでの面談で坂野や磯貝と話をした際、「ああ、このチームなら間違いないな」と私は直観しました。いま、それは間違っていなかったと、自信をもって言えます。

競争環境ではなく共創環境で「10歩先を見ながら、0.5歩先を支援」

サステナビリティに対するPwC Japanグループならではの志の高さ、あるいは先見の明を如実に示すエピソードがある。2015年に「ストラテジック サステナビリティ&イノベーションフォーラム」を立ち上げた際の話だ。このフォーラムは、参加企業からCSR担当ではなく、新規事業あるいは海外事業や経営企画の担当役員が出席し、「サステナビリティをストラテジーもしくはイノベーションの視点で語り合う」という当時としてはかなり先進的な会合となった。

磯貝:このフォーラムの準備は、13年末から始めています。およそ100社に参加を呼びかけて、実際に集まっていただいたのは11社でした。当時は、まだサステナビリティ経営というものに対して企業の目がスケプティカル(懐疑的)でしたから、私としては強い信念をもって動いていましたが、壁にぶつかりながらも前に進む、そんな毎日でした。

坂野:企業からは「サステナビリティって、儲かるの?」という問いを投げかけられることが多かったように記憶しています。先ほど、親亀(環境価値)・子亀(社会価値)・孫亀(経済価値)の話をしましたが、まだ当時は環境や社会を経済と分けて考えている時代でした。親亀と子亀を守る活動をしながら、それを孫亀の成長機会にしていくという考え方は、まだ馴じみがありませんでした。経済活動で儲けたお金を環境や社会のために寄付するという考えが主流だったのです。「寄付する」「規制に対応する」といった外発的な取り組みが主だった時代を経て、現在では「SXを勝機あるいは成長戦略にする」という内発的な取り組みが目立ってきています。しかし、日本ではまだ1割から2割の先進的な企業が取り組んでいるに過ぎないと感じています。だからこそ、これから歩んでいく道のりにやりがいを感じているところです。いま、ようやく日本においてサステナビリティ経営がテイクオフするときが訪れているのではないでしょうか。

磯貝:そうですね。14年当時は、企業に対して「WHY=なぜ取り組むのか」を説いていることが多かったように思います。それがいまでは、「HOW=どのように取り組むのか」を理解していただくフェーズへと移ってきました。私たちは常に「10歩先を見ながら、0.5歩先を支援する」という大胆にして繊細な仕事を行っていかなくてはならないと考えています。サステナビリティCoEでは、そのような仕事ができるサステナビリティ・ストラテジストを求めています。

伊藤:コンサルティングファームのなかには競争環境が激しいところもあると思います。サステナビリティCoEでは、お互いが切磋琢磨しながら成長していくのは当然ですが、多様性にあふれるチームのなかでさまざまなケイパビリティをかけ算していくのが強みとなっていて、共創に重きを置き、他者とのコラボレーションが好きな人が集まっていると感じています。

坂野:サステナビリティCoEには「いい人」が多いのです。「いい人」とはすなわち、助け合いをする人。困っている人を放っておかないで助けるのと同時に、自分が困っているときには素直に「困っている」と申し出て助けを求められる人。その両方ができる人です。

伊藤:また、サステナビリティCoEには、一人ひとりの価値観や働き方を尊重する文化もあります。例えば、リモートで働くか、オフィスで働くかは自由です。私の場合は、子どもがふたりいるので、子育てにもしっかり時間を割けるようにしています。

磯貝:自分がハッピーでいられる働き方をしている人間が、もっともパフォーマンスが高いという理解のもと、一人ひとりの価値観や働き方を尊重する文化を重視しています。これも私たちが考えるサステナビリティの一環なのです。

坂野:すべては、自分たちがサステナブルでいることから始まります。サステナビリティCoEでは、メンバーのウェルビーイングを大切にしているのです。

主要メンバー

伊藤 亮太

ディレクター, PwCサステナビリティ合同会社

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