物流領域における商用車のカーボンニュートラル化に向けた支援

物流は人々の生活や経済を支える重要な社会インフラですが、近年日本国内の物流はカーボンニュートラル(以下、CN)や労働力不足への対応などさまざまな課題を抱えています。特にCNに関しては、政府が2050年のCN達成を目標に掲げる中で、各業界において対応が求められています。中でも運輸部門は日本全体のCO2排出量の約2割を占めており、その内訳を見ると、貨物車両のCO2排出が運輸部門の約4割を占めています。また日本全体で見ても約7%とその比率は決して小さいものではなく、特に直接的なCO2排出源となっている商用車をCN化することは、日本のCN達成に大きく影響すると考えられます。

PwCコンサルティングでは、物流領域における次世代車両導入に向けた戦略策定から個別事情を踏まえた課題抽出、実証事業の推進に至る幅広い分野を一貫してサポートします。

物流業界を取り巻く環境

国内の物流業界を取り巻く主要な課題としては、大きく①環境問題、②労働力不足、③サプライチェーンの最適化の3点が挙げられます。中でも①環境問題については、業界や国といった枠組みを越える課題であり、2030年度に向けたCO2排出目標が掲げられているため喫緊の対応が迫られています。

図表1:物流業界を取り巻く主要な課題

地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択され、2020年には、日本も2050年のCN達成を目標として宣言しました。2050年のCN達成に向け、交通・物流(運輸部門)の分野では、2030年度におけるCO2排出量を2013年度比で35%削減することを目標に掲げています。
一方で2024年に国土交通省が公表している内容(運輸部門における二酸化炭素排出量)によれば、国内の運輸部門のCO2排出量は全体の18.5%で、運輸部門の中でも貨物車両のCO2排出量は38%(日本全体の7%)を占めており、貨物車両からのCO2排出が環境に与える影響は大きいといえます。そのような中で全日本トラック協会は、2030年度のCO2排出原単位を、2013年度比で8.7%削減するという目標を設定しており、個々の事業者にもこの目標達成に向けた取り組みを推進することが求められています。

図表2:物流分野における環境問題の現状

物流事業者がCNに取り組む意義・必要性

物流事業者のCN達成に向けた取り組みは、業界全体としての目標達成に向けたアプローチに留まらず、個々の事業者にとっても意義のあるものとなります。
物流業界に限らず、国内外の環境問題に対する動向に鑑みると、CN達成に向けた取り組みが不十分である事業者は「炭素税導入による事業コストの増大」や「CN達成に向けた取り組みを重要視する投資家からの敬遠」、「環境意識の高い顧客からの失注」といった点で事業リスクが高まる可能性があります。物流事業者においても、今後の事業リスク増大の可能性を考慮して、CN達成に向けた取り組みを推進するべきといえます。

物流事業者のCNに対する取り組み

物流事業者のCO2排出量削減に向けた取り組みは、図表3に示すように「車両」の転換、「燃料」の脱炭素化、「オペレーション」の再編の3つに分類できます。「オペレーション」の再編は、既に多くの事業者が積極的に取り組んでおり、一定の成果が得られている状況にあります。一方、「車両」の転換については未だ取り組みが進展しているとは言い難く、中長期的なCO2排出量の削減ポテンシャルがあると見られ、CN達成に向けた長期的な取り組みとして、次世代車両の導入は非常に重要と考えられます。

図表3:物流業界の環境問題に対する主要な取り組み

次世代車両の現状と将来動向

物流業界における次世代車両の導入は、ラストワンマイル向けの軽貨物車両や小型トラックといった比較的小型の商用車をEV車へと転換することから始まっています。また、商用車メーカーと協力したFCVトラックの実証走行といった取り組みも進められています。
一方で、中長期的に導入を進めていくという点においては、商用車メーカーによる量産体制の構築やバッテリー等の技術革新、関連インフラ等の普及において未だ不透明な部分が多く、次世代車両に関する将来動向を正確に見通すことが難しい状況にあることも事実です。

次世代車両導入に向けて検討すべきポイント

このように将来の見通しが不透明な状況ではありますが、運輸分野における将来的なCN達成に向け、物流事業者は次世代車両の導入を推進することを求められています。
その際には、商用車のCN化に伴う収益性の確保が1つの重要な観点となります。現在販売されているEVトラックは、環境性能を除いた車両価格や積載量、航続可能距離など複数の面で既存車種に劣後しており、物流事業者にとって導入のハードルが高いものになっています。
そのため、次世代車両の導入にあたっては、次世代車両導入を単なる車両の導入や関連インフラの整備およびこれに伴う関連コストの増加といったコスト要因として捉えるのではなく、次世代車両や関連インフラを活用した事業領域の拡大をはじめとする、収益性の確保策も併せて検討する必要があります。

PwCコンサルティングは、業界動向の変化により生じる日本特有の課題やニーズへの深い理解に基づいた独自のアプローチとソリューションで、次世代車両導入に向けた戦略策定から個別事情を踏まえた課題抽出、実証事業の推進に至る幅広い分野を一貫してサポートします。

PwCの支援領域

次世代車両の導入を推進するにあたり、PwCコンサルティングは事業の構想段階から幅広い業種・企業とのリレーション構築(エコシステム構築)、事業実証・事業化に至るまで、一連のコンサルティングサービスを提供します。EV先進国である欧米中における多数の支援実績・ネットワークを活用することで、当該領域における事業創造・革新の実現を包括的にサポートします。
また、各社の個別事情に応じて支援内容をカスタマイズすることも可能です。

図表4:PwCコンサルティングのソリューション

計画策定から実証事業の推進に至る幅広い分野・フェーズにて以下のような支援を提供します。

  • 次世代車両導入計画策定/導入車両選定支援
    • CN達成に向けた次世代車両導入における「ありたい姿」の定義
    • 国内外の外部環境や商用車メーカーの開発動向を踏まえた次世代車両導入計画策定
    • 配送物品や配送距離などの業務特性に応じた最適な導入車両選定
  • インフラ設計/オペレーション設計支援
    • 次世代車両導入に係る必要インフラの抽出
    • 充電施設や水素ステーション等のインフラ設備の関連プレイヤーとのエコシステム構築
    • 次世代車両導入後の最適なオペレーション構築
  • 次世代車両および関連インフラを軸とした事業化支援
    • 次世代車両関連事業領域の市場環境分析および参入可能領域の特定
    • 事業計画策定から実証、事業化に至る支援

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主要メンバー

矢澤 嘉治

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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村松 哲郎

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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伊藤 誠悟

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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西河 智也

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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