消費財・小売・流通業における財務報告アドバイザリーサービス

eコマースの拡大や環境問題への意識の高まりを背景に、消費財・小売・流通業における課題は複雑さが増しています。特に会計関連の領域においては、売上収益、在庫管理、資産の減損、リース取引など、検討すべき多くの論点があります。PwCはこれらの課題解決に向けた有益な知見とソリューションを提供します。

消費財・小売・流通業を取り巻く環境

1. eコマースの拡大

eコマースの急速な利用拡大を背景に、eコマースに対応するシステムの開発やM&Aを通じてeコマース技術の獲得に取り組む企業が増加しています。

2. サプライチェーンマネジメント

物流のスピード向上や災害への対応力強化など、サプライチェーン全体で価値を生み出すための取り組みが業界全体で進んでいます。

3. 事業再編の加速

より大きな価値創出を求める株主からの要請や消費者の購買行動の変容に迅速に対応することなどを目的として、事業売却やリストラクチャリングにより事業ポートフォリオの改善に取り組む動きが目立っています。

4. ESG対応

投資家や消費者のサステナビリティ経営に対する期待が高まっており、環境問題や社会課題への対応、それらを通じた持続可能な企業価値の創造、適切な情報開示が求められています。

消費財・小売・流通業の企業はこれらの事業環境の変化を踏まえ会計面の検討課題に対応することが求められます。本稿では日本基準およびIFRSに共通する会計論点を「売上収益」「棚卸資産」「減損」「リース」からピックアップしてご紹介します。

消費者市場を 取り巻く環境

売上収益

売上収益は最も重要な財務指標の1つです。売上収益には以下のような検討課題があります。

eコマースの収益認識

会計上、顧客への商品の引渡時点で収益認識することが大原則となります。しかし、eコマースによる取引の場合は店舗での販売と異なり、いつ商品が顧客に引き渡されたかを売手企業が直接確認することは困難です。このため、収益認識のタイミングを適切に把握するためシステム対応などの体制整備が必要です。

ポイント制度

ポイント制度は小売業にとって重要な販売戦略の1つです。管理すべき情報が多岐にわたるため、データ管理が非常に煩雑ですが、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの利用による可視化や機械学習などのデジタル技術を組み合わせることにより、ポイント付与率の最適化や消費者の行動予測の精度向上を図ることが可能となります。また、会計上はポイント制度の収益認識のタイミングなどの調整が必要であり、これらのデータを会計処理の根拠資料として活用できる可能性があります。

消化仕入における収益認識

百貨店やスーパーなどの場合、いわゆる消化仕入という取引形態が広く用いられており、これらは会計上「代理人取引」と判定されます。代理人取引では、自社が受け取る手数料見合いの金額(純額ベース)で収益を認識するのに対し、本人取引では顧客から受け取る対価(総額ベース)で収益を認識するため、本人・代理人の判定は売上収益の計上額に大きな影響を及ぼします。このような論点は消費者市場を取り巻く多様な業種に存在し、取引の実態に応じて本人・代理人の判定を行い、適切なデータ管理と会計処理を行う必要があります。

棚卸資産

棚卸資産は事業経営の根幹となる要素です。棚卸資産には以下のような検討課題があります。

在庫管理

消費財・小売業においては在庫品目が多いことが特徴です。適切な在庫水準の維持、在庫管理コストの削減、データの正確性や適時性の担保、在庫操作による不正防止などを可能にするために在庫管理システムを導入し、各ロケーションの作業の標準化を図った上でBIツールを導入するのが効果的です。また、在庫管理システムやBIツールから得られたデータを、棚卸資産の適切な評価に役立てることができるようになると期待されています。

リベート

年間の購入量が基準値を超えた場合などに、仕入先からリベートの申し出を受けることがあります。デジタルトランスフォーメーション(DX)が進めば、売上予測や在庫水準の推移から購入量とリベートの適用状況を戦略的に分析し、経営管理に役立てることが可能となります。また、これらのデータを会計にも活用し、リベートに関して在庫金額を調整する必要があるかの判断に役立てることが期待されます。

サプライチェーンにおける物流コスト

サプライチェーンには自社を含め複数の企業が関与しており、さまざまな輸送コストや保管コストが発生します。会計上は、これらのコストを在庫の帳簿価額に含めるか、発生時に費用処理するかが論点となります。例えば、入荷するまでの輸送コストは棚卸資産の帳簿価額に含めますが、入荷後の保管コストは発生時に費用処理するなど、会計処理の異なるコストが混在しています。このため、コストの性質に応じたシステム対応を行うことが求められます。

減損

減損は業績を予測・分析する上で注目度の高い領域です。減損には以下のような検討課題があります。

減損検討プロセス

減損は検討過程が複雑で、資料の作成にも多くの工数を要します。しかし、会計上の見積りであることから、社内で何度も見直しを行ったり、監査人との協議を経て一連の検討をやり直したりするケースも少なくありません。減損の兆候の判定、減損損失の認識および測定といった一連の減損検討プロセスを標準化し、結論を可視化することで、より効率的なプロセスの構築が可能となります。

旗艦店とその他の系列店

一等地に旗艦店を出店すると、ブランドイメージ向上により、その他の系列店の売上が増加するなどのプラスの効果が得られます。一方で、旗艦店自体は多額の賃料や、系列店をカバーする広告宣伝コストなどを負担する必要があるため、それらが原因となり、営業損失を計上することがあります。このような場合、旗艦店の固定資産などについて減損損失を認識すべきか、という議論が生じます。経営管理上は、このような店舗間の内部貢献をDXにより説明可能なデータとして可視化することで、各店舗の実態に即した業績評価や継続・閉店などの合理的な意思決定を実現することが期待されます。

リース

リース(借手)は考慮すべき項目が多い複雑な会計領域です。リースには以下のような検討課題があります。

リース台帳

リース会計においては多岐にわたるデータ管理が必要となります。表計算ソフトを使用した複雑な計算シートは維持管理に相当の工数を要する上、計算自体に誤りが生じる可能性もあります。自動化ツールを活用し、リース計算の検証可能性を担保するなど、管理プロセスを効率化することが推奨されます。

リース料のしくみ

リース料という名目の支払いには、本来のリース料以外の項目が含まれるケースがあります。例えば、ショッピングモールの小売区画をテナントとして賃借する場合、テナントが支払うリース料には、販売スペースの賃料、商品棚・什器・倉庫などの使用料、固定資産税、保険料、清掃料、維持管理費などの項目が含まれる場合があります。会計上はこれらを構成要素ごとにリースと非リースに分類し会計処理を行うかなどの検討を行います。これらをマニュアルで管理することは非常に煩雑であるため、会計処理を自動化することが推奨されます。

リース期間の財務インパクト

リース資産(使用権資産)とリース負債は、リース期間に支払うリース料の総額に基づいて測定されます。リース期間を長く見積もればリース資産・負債の計上額が大きくなり、短く見積もれば小さくなるため、リース期間は会計数値に直結する重要な要素といえます。リース期間は、契約上の解約不能期間とは限らず、解約オプション・更新オプションなどの契約条件、小売店舗の賃借であれば出店地域の経済発展、市場賃料の変動、店舗の移転・閉鎖コスト、eコマースへのシフトなど事業戦略の変化といった予測を踏まえ、総合的に判断する必要があります。このような複雑な検討を行うにあたっては、DXによって各種の分析結果を可視化することが有効と考えられます。

PwCの財務報告アドバイザリーサービス

収益認識、棚卸資産、減損、リースといった会計基準に関わるアドバイスはもとより、事業再編をはじめとするディールに際しての会計・財務報告対応支援、海外市場でのIPOなどを通じたキャピタルマーケット対応支援、ステークホルダーレポーティングを通じた情報開示やガバナンス整備の支援、デジタル技術を活用するファイナンストランスフォーメーション支援など、各分野のプロフェッショナルが幅広い視点からクライアントに最適なサービスをワンストップで提供します。

PwCのソリューション

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主要メンバー

顧 威(ウェイ クウ)

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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杉田 大輔

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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大平 亮

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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