
『セキュリティ・クリアランス制度』法制化の最新動向と日本企業が取るべき対応 【第3回】運用基準を踏まえた企業対応の在り方
2025年5月17日までに施行される経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度に関して、特に影響があると見込まれる事業者や事業者の担当者において必要となる対応を、2025年1月31日に閣議決定された運用基準を踏まえて解説します。
近年、サイバー攻撃の増加や高度化に伴い、「社会全体でのサイバーセキュリティの確保」が求められています。日本国内では、政府が主導してサイバーセキュリティ対策の強化を進めており、関連するさまざまなガイドラインが策定されています。また、企業や組織においても、サイバーセキュリティの重要性が高まる中で、対応能力の向上が急務となっています。
「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」は、国家安全保障戦略(2022年12月16日閣議決定)に基づき、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させるべく、当該分野における新たな取り組みの実現のために必要となる法制度の整備などについて検討を行うために立ち上げられました。
冒頭に記載したとおり能動的サイバー防御は、従来の防御壁を築いて攻撃を止めるサイバー防御とは異なり「外部からのサイバー攻撃被害の発生を未然に防ぐため、攻撃の主体を特定するとともに排除措置を講ずる」ことで、サイバー空間の安全を確保する取り組みです。
サイバーセキュリティの歴史は、絶えず変化する脅威への対抗の軌跡であり、サイバー空間を取り巻く環境が激変している今、安全保障においてもサイバー空間の激しい脅威の変化に対応する必要があります(図表1)。
この取り組みを実現するために必要となる法制度の整備や考慮すべき事項を、政府の有識者会議では「実現すべき具体的な方向性」として取りまとめています。
「実現すべき具体的な方向性」は、3つの重点テーマと、テーマ横断的な課題より構成されています(図表2)。
「実現すべき具体的な方向性」で示されている提言事項は、次のようなものがあります。
出典:「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた提言」(2024年11月29日)を基にPwC作成
※1:「経済安全保障推進法における特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度」にて定められている業種において、主務省令で指定された事業者をいう。執筆時点では15業種が指定。
能動的サイバー防御に関する法制度は、日本政府機関と重要インフラ事業者だけでなく、製品ベンダーや中小企業を含むサプライチェーンを構成する全ての日本企業にとって無視できないものとなっています。
サイバー空間の脅威が深刻化している事情を踏まえると、制度整備が急がれることは明白ですが、多くの解決すべき課題や考慮事項が有識者会議の提言として示されていることから、実際に能動的サイバー防御を実行に移すための議論は継続されるものと想定されます。
本稿執筆時点では、日本企業が実施すべき具体的な要件が明確にされていないため、今後の法案審議や関連動向をモニタリングし、自社に対する影響を先回りして把握していくことが必要です。
内閣官房「国家安全保障戦略」
https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou/nss-j.pdf
サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた提言」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cyber_anzen_hosyo/koujou_teigen/teigen.pdf
2025年5月17日までに施行される経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度に関して、特に影響があると見込まれる事業者や事業者の担当者において必要となる対応を、2025年1月31日に閣議決定された運用基準を踏まえて解説します。
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