『セキュリティ・クリアランス制度』法制化の最新動向と日本企業が取るべき対応

【第1回】諮問委員会での検討状況と企業影響見通し

  • 2024-11-22

1.はじめに

いわゆるセキュリティ・クリアランスの制度を定める重要経済安保情報の保護および活用に関する法律(重要経済安保情報保護活用法)の成立を受け、その具体的な運用に関する政令などの制定に向けて、重要経済安保情報保護活用諮問会議(「諮問会議」)が設置され、2024年6月以来、複数回の会議が開催されています。

この冬ごろには、諮問会議にて、政令案、運用基準案が策定され、その後、パブリックコメントを経た閣議決定により2025年5月17日までに施行される見込みです。

4.適合事業者の認定

行政機関が適合事業者に重要経済安保情報を提供する流れは、次のようなものとされています。

  • 行政機関が、行政運営上の必要性や事業者からの相談などを踏まえ、「事業者に重要経済安保情報を利用させる必要があるか否か」を判断
  • 行政機関が、事業者に対して、重要経済安保情報を提供する用意がある旨を提案(事前提案)
  • 事業者が、「行政機関から重要経済安保情報の提供を受けるか否か」を判断
  • (提供を受ける場合)事業者が、行政機関に対して、適合事業者の認定を受けるために資料を提出
  • 行政機関が、適合事業者であることを認定
  • 秘密保持契約の締結
  • 重要経済安保情報を取り扱うことが見込まれる者に対する適性評価
  • 重要経済安保情報の提供

事業者への事前提案

事業者にとって、重要経済安保情報の提供を受けるか否かは重要な判断であるため、行政機関は、事業者の適切な判断に資するよう、提供予定の重要経済安保情報の大まかな概要やその性質などを情報保全に支障のない範囲で明示することとされています。

事業者からの資料の提出

行政機関からの提案を踏まえ、事業者として重要経済安保情報の提供を受けることを決めた場合には、事業者は、重要経済安保情報を提供する行政機関から適合事業者の認定を受ける必要があります。認定にあたっての審査を受けるにあたり、事業者が提出すべき情報として例とされているものについては、「図表2」のとおりです。

図表2:適合事業者の認定審査に際して提出すべき情報の例

項目

概要
1.事業者の組織に関すること  
  • 会社の基本的事項
名称、住所、設立準拠国、議決権の5%超を直接保有する者、代表者や役員の氏名・生年月日・国籍など
  • 事業者内の重要経済安保情報の保護・管理に責任を持つ情報管理責任者に関する事項
役職、職責、氏名、生年月日、国籍など
  • 重要経済安保情報の保護・管理にかかる規程や教育に関する事項
組織内における規程の有無、規程の周知に向けた教育実施の計画など
2.管理する場所や施設設備に関すること  
  • 重要経済安保情報を取り扱う予定の場所に関すること

名称・所属部署、所属部署の業務内容、場所、備えている施設設備、管理方法など※複数の場所を含めることも可(保管、閲覧で異なる場合にはそれぞれ)

  • 重要経済安保情報を取り扱う予定の場所において個々の情報を管理する者に関する事項
役職、職責、氏名、生年月日、国籍など※複数人可

(内閣府「適合事業者への重要経済安保情報の提供等」(2024年8月29日)を元にPwC作成)

適合事業者の認定

適合事業者の認定にあたっては、事業者から提出された情報を基に、行政機関の長は、以下のような視点から総合的に判断するものとされています。

①重要経済安保情報を取り扱う組織として、情報を適正に管理するための組織内の規程を整備し、それを周知・教育し、履行するために必要な人員体制を備えるなど、事業者として重要経済安保情報が適正に管理できるか

②重要経済安保情報を取り扱うそれぞれの場所において、適正に管理できるか

なお、①については、「株式の外資系比率が高い」、「役員に外国籍の者がいる」といった要素だけで判断するのではなく、社内規程において、「情報を漏らすおそれがないと認められていない者に対しては、仮に上司であっても重要経済安保情報を提供してはならない」こと、情報管理責任者の指名手順、重要安保情報を取り扱う者の範囲の決定方法、重要経済安保情報を取り扱うための手続・ルール(Need to know原則徹底、立入・機器持ち込み制限など)、漏えいなどの緊急事態への対応手順などが最低限定められているか否か、社内規程の定めの社内における周知・教育の程度などを確認することとされています。また、②については実際に保管・閲覧が予定されている場所を実査により確認して判断するものとされています。

5.おわりに

以上、重要経済安保情報保護活用法の具体的な運用に関して、民間企業における影響が特に大きいと考えられる、適性評価および適合事業者の認定に関する内容を解説しました。この点、同法制定に至る議論においても、例えば、事業者の適合性基準に関して「外国による所有、管理又は影響」(FOCI)の問題など事業者の組織の問題、重要経済安保情報を管理する場所・施設の要件の不明確性などが指摘されていました。しかしながら、これまでの諮問会議における委員と事務局との質疑を見ると、いずれの問題点についても、いまだ明確にされていない点が多い状況です。性質上、必ずしも要件が明確にされるとは限りませんが、詳細については引き続き政令案などの公表を待つ必要があります。

執筆者

日比 慎

ディレクター, PwC弁護士法人

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