経済産業省「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」に基づくセキュリティ対策の進め方

  • 2024-11-26

経済産業省は、2022年に「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」(以下「工場セキュリティガイドライン」)を策定しました。また、2024年にはその別冊「スマート化を進める上でのポイント」がリリースされました。

本稿では、工場セキュリティガイドラインの概要と、ガイドラインに沿った工場のセキュリティ対策の進め方について解説します。併せて、対策の検討・実装において参考となる資料についても紹介します。

工場セキュリティガイドラインに沿ったセキュリティ対策の進め方

以下に、ガイドラインにおけるセキュリティ対策の企画・導入のステップを示します。

「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」を基にPwC作成

大きな流れとしては以下のとおりです。

  • 組織の状況の整理(ステップ1-1)
  • 工場環境の整理(ステップ1-2~1-7)
  • 優先度・重要度の評価(ステップ2-1)
  • 対策の検討・立案(ステップ2-2)
  • 対策の実行(ステップ3)
  • 対策の運用(ステップ3)
  • 対策の評価・改善(ステップ3)

全体としてはいわゆるPDCAサイクルを前提としています。最初に組織の状況を整理・把握し、事業視点でセキュリティ対策の必要性を明確にする点も含め、ISO 27001などのマネジメントシステムと通じるところがあります。

一方、工場環境の整理にあたっては「ゾーン」という概念を用いています。ゾーンは、「業務の内容や重要度が同等である領域」と定義されており、業務および保護対象(ネットワーク、装置・機器、データ)と紐づけられます。このゾーンの単位で、セキュリティ脅威やその生産・事業への影響、セキュリティ対策を検討していきます。これによって工場環境全体の概要を把握しやすくなるとともに、サイバー攻撃を受けた際のゾーン間での影響を抑止することが検討できるようになります。

実際の工場における業務や保護対象、サイバー攻撃を受けた際に起こりうる事象やそれらが業務に与える影響は、全て工場によって異なると想定されます。また、実装可能なセキュリティ対策についても同様です。前項にも記載したとおり、本ガイドラインを参考にしつつ、自社・自工場の状況に応じた対策を検討することが重要です。

「別冊:スマート化を進める上でのポイント」の概要

「工場のスマート化」とは、品質向上やコスト削減などを目的として、工場にデジタル技術を適用し、各種状況の見える化、データに応じた作業指示・支援、データ連携と協調製造などを実現することを指しています。これによって競争力の強化が実現できるものの、外部ネットワーク接続の増加やサプライチェーンの広がりなどによりセキュリティリスクが増加することが想定されます。

「別冊:スマート化を進める上でのポイント」は、工場のスマート化で想定されるセキュリティリスクに対応するため、工場セキュリティガイドラインの各ステップにおける留意点をまとめたものです。これによってセキュリティ対策の検討における観点の漏れを防ぎ、より適切な検討ができると考えられます。セキュリティ対策よりもスマート化のほうが先行しているケースも想定されるため、セキュリティ対策の検討を始める前に、別冊にも目を通しておくことを推奨します。

セキュリティ対策を進める際に参考となる資料

自社・自工場におけるセキュリティ脅威やセキュリティ対策を検討するにあたり、参考になる資料がIPAから発行されていますので、以下で紹介します。

  • スマート工場のセキュリティリスク分析調査 調査報告書
    スマート工場の実装モデルを類型化するとともに、モデルごとのセキュリティ脅威、被害(脅威による影響)、対策、対策の対象機器を整理したものです。2022年発行の第1版では7つの実装モデルが記載されており、2024年発行の第2版で3つのモデルが追加されました。工場セキュリティガイドライン以前から作成されていることもあり、ガイドラインとの紐づけはされていませんが、スマート工場におけるセキュリティ対策検討において、ガイドライン別冊とともに参考になるものと考えられます。
  • スマート工場化でのシステムセキュリティ対策事例 調査報告書
    工場の生産システムのライフサイクル(企画/設計・開発/運転・運用/保守/廃棄)に沿って、セキュリティ対策の事例を整理・集約したものです。設計・開発時に行う対策など、工場セキュリティガイドラインに含まれていないものもあり、ガイドラインと併せて見ることによって対策の網羅性が上がると考えられます。
    別紙において、対策事例と工場セキュリティガイドラインの対応が示されています。ただし、ガイドライン本文のステップではなく「付録E チェックリスト」の番号で記載されていることに注意が必要です。

まとめ

工場セキュリティガイドラインの概要とセキュリティ対策の進め方を解説し、別冊・参考資料について紹介しました。これらの文書を活用することで、工場のセキュリティのリスクを把握・低減し、セキュリティレベルを向上させることが可能になると考えられます。

セキュリティ対策の企画・実行は、各社・各工場の状況を理解した上で検討を行うことが重要です。これにより、適切なセキュリティ対策が実装され、産業全体のセキュリティレベル向上が期待できます。

PwC Japanグループでは、工場のセキュリティ対策の企画から実行までの全般を支援しています。お気軽にお問い合わせください。

執筆者

上村 益永

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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上杉 謙二

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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木佐森 幸太

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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