生成AIを巡る米欧中の規制動向最前線

NIST「AIリスクマネジメントフレームワーク(AI RMF)」の解説

  • 2023-07-12

米国商務省の国立標準技術研究所(NIST)は2023年1月、AI技術のリスク管理のためのガイダンスである「AIリスクマネジメントフレームワーク」(AI RMF)を発表しました。日本の組織にとって非常に有益なドキュメントであるAI RMFについて解説します。

はじめに

米国政府は、AI規制についてソフトローによるガバナンスやエンフォースメントで対応を進めています。つまり、EUのハードローによる厳格な法規制とは異なり、ガイドラインなどによる緩やかな規制への誘導という戦略をとっています。

こうした考え方の下、米国商務省の国立標準技術研究所(NIST)は2023年1月、人工知能(AI)技術のリスク管理のためのガイダンスである「AIリスクマネジメントフレームワーク」(以下、「AI RMF」)1を発表しました。AI RMFは以下の点において、日本の組織にとっても非常に有益なドキュメントであると言えます。

  • 米国政府や企業とAIに関連するビジネスを行う際、AIリスク管理の考え方を統一できる
  • NISTサイバーセキュリティフレームワーク(CSF)2と類似した概念に基づくため、既存のセキュリティ管理業務と整合性を合わせやすい
  • 生成AIに限らず、一般的なAIのリスク管理手法として活用できる

NIST, 2023, AI RISK MANAGEMENT FRAMEWORK, 2023/5/1閲覧,
https://www.nist.gov/itl/ai-risk-management-framework

2 NIST, 2018, Cybersecurity Framework Version 1.1, 2023/5/1閲覧,
https://www.nist.gov/cyberframework

3 NIST 2023, AI RMF Playbook, 2023/5/1閲覧,
https://airc.nist.gov/AI_RMF_Knowledge_Base/Playbook

主要メンバー

上杉 謙二

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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マッハレ アンジャリ

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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