クラウド・AI時代のエコシステムとIT資産管理のポイント

テクノロジーとサプライチェーンの複雑化に伴う課題―求められるIT環境とエコシステムの管理―

  • 2024-05-07

近年、企業のIT環境は急速な変化を遂げています。クラウドコンピューティング、人工知能(AI)など、新たなテクノロジーにより、ビジネスの在り方自体が大きく変わりつつあります。これらの進化は企業にとって大きなチャンスをもたらしていますが、同時に、これらの新しいテクノロジーや、それを支えるエコシステムを管理するための新たなフレームワークや手法が必要となります。本稿では、テクノロジーとサプライチェーンの複雑化に伴うIT環境およびエコシステムを管理するにあたっての要点を、ライセンスコンプライアンス、セキュリティと責任共有、サプライヤー管理、データ管理の4つの観点から解説します。

セキュリティと責任共有

次に重要なポイントとなるのが、セキュリティと責任共有です。ビジネス環境のデジタル化が進むにつれて、企業は今まで以上に多くのテクノロジーとそれを支えるエコシステムを利用せざるを得なくなっています。ハードウェアからソフトウェア、データ、サプライチェーンに至るまで、これら全てが企業のセキュリティにおける重要な要素となっています。しかし、それらを管理し、組織の責任範囲を特定し、保護するのは容易なことではありません。

企業のIT環境が複雑化し、分散化するにつれて、セキュリティ対策もそれに合わせて進化させなければなりません。例えば、リモートワークの普及により、従業員が企業のネットワーク外からIT資産にアクセスするケースが増えています。このような状況では、従来のネットワークの境界防御ではなく、ゼロトラストという新しいセキュリティモデルが適していると言われています。ゼロトラストでは、全てのユーザーやデバイスがネットワークに接続する際に認証を行い、それぞれのアクセスを細かく制御します。このモデルを採用することで、企業はデータのセキュリティを強化し、不正なアクセスを防ぐことが可能となります。

しかし、ゼロトラストを適切に実装し、管理するためには、企業のIT資産を網羅的に把握すること必要があります。それぞれのIT資産がどのように保護されているか、誰がどのように利用しているかを管理することが、セキュリティを確保する上で不可欠となります。

データ管理

データ管理は、現代のビジネスにおいて重要な要素となっています。特に、AIの進化に伴い、企業は大量のデータを取得し、それをビジネスの戦略や意思決定に活用することが求められています。しかし、データを有効に活用するためには、データを適切に管理できていることが不可欠です。

データ管理は、その収集、保存、利用、廃棄といったライフサイクル全体をカバーします。企業は、どのようなデータを持っているのか、それはどこに保存されているのか、どのようにアクセスできるのかを把握する必要があります。また、それぞれのデータがどのように利用されているか、そしてそれが企業のポリシーや法規制に適合しているかを確認することも重要です。

また、AIの活用においては、インプットデータの管理が特に重要となります。AIの性能はインプットデータの質と量に大きく依存しており、適切なデータをインプットすることができなければ、AIのポテンシャルを十分に引き出すことはできません。また、AIに不適切なデータをインプットすると、その結果は偏ったものになる可能性があります。

執筆者

川本 大亮

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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平井 彰

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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