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中国やタイにおいて個人情報保護法が施行されたように、アジア各国では近年、個人データを保護する法規制の整備が進んでおり、アジア各国に工場や拠点を保有する日本企業は現地の顧客や従業員のデータを管理するにあたり、各種法令の動向を把握し、規制への対応を推進することが求められています。
そして2023年には、ベトナムにおいても同国初の個人情報保護法令である「個人情報に関する政令13号(以下、個人情報保護政令)」が施行されました。個人情報保護政令には、日本の個人情報保護法と類似した基本的な要件だけでなく、影響評価を伴う越境移転規制も含まれています。また、2022年10月に施行された「政令53号(以下、サイバーセキュリティ政令)」では、不明確な内容ではありますが、サイバーセキュリティ法に基づくデータローカライゼーション規制が含まれています。
現地に進出している企業、また進出を検討している企業はこれらの政令の内容を踏まえ、特に同国内における個人データの管理および同国を含むグローバルでの個人データの越境移転に関する対応を検討する必要があります。本稿ではこれらの政令を解説したうえで、企業に求められるベトナムを含めたグローバルにおける個人データの越境移転対応について説明します。
個人情報保護政令の規制要件はGDPR(欧州データ一般保護規則)と類似しており、厳格な内容となっています。適用範囲にはベトナムでの個人データ処理に直接関与する、または関連する外国の団体、組織および個人も含まれ、現地向けにビジネスやアプリケーションサービスを展開する企業にも適用され得る内容となっています。
特に留意する必要があるのが、影響評価の実施と越境移転規制です。影響評価にあたっては評価項目が指定されており、個人データの処理を開始した日から60日以内に評価書類を公安省に提出することが求められています。他国の法令では必ずしも全ての企業が影響評価の実施対象とはなりませんが、ベトナムの個人情報保護政令では個人データを取り扱うことに伴い、例外なく実施が求められています。
また越境移転規制は、個人データの越境移転に対する影響評価を要請しており、上記の個人データの処理に対する影響評価とは評価項目が異なります。なお、越境移転に対する影響評価についても評価書類を公安省へ提出することが求められており、移転完了後にはデータ移転実施の旨や、移転の担当者の連絡先の通知も必要とされています。なお、個人データ処理影響評価および個人データ越境移転影響評価の書式は、当局より公開されており、ダウンロードが可能となっています。
個人情報保護政令にはデータローカライゼーションに関する要件は定められていませんが、サイバーセキュリティ政令上のデータローカライゼーション要件を考慮の上、越境移転を実現する必要があります。グローバルでデータを移転・集約を行う企業では、以下のようなアクションが求められると言えます。
ローカライゼーションの実現にあたっては、ベトナム国内に独自のサーバーを設置し、データのコピーを保存する必要があります。その上で上記の個人情報保護政令における越境移転規制に対応しなければならないため、ベトナムを含む越境移転の実現には相当の負荷がかかることが想定されます。
上記のとおり、これら2つの政令への対応を前提とすると、ベトナムを含む個人データの越境移転の実現に向けたハードルは高いと言えます。一方、多くの日本企業にとってベトナムは引き続き重要市場と捉えられているため、対策を講じることは重要と考えます。
また、ローカライゼーション規制への対応を前提とすると、ベトナム国内へのシステム投資が必要となる可能性があり、状況によってはベトナムと他国との越境移転の在り方を見直す必要が出てくるかもしれません。既にベトナム国内のデータを処理をしたり、ベトナム国内の工場や拠点などとデータの移転を行ったりしている企業は、まずはデータマッピングや関連部署へのヒアリングなどを通じて、個人データ処理、移転状況の洗い出しを行うことが推奨されます。