コロナ禍以降も重要な、危機発生時における意思決定上のポイント

2021-06-10

はじめに

2020年初頭から世界的な広がりを見せた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。200以上の国々に感染が拡大し、世界中の企業や組織で危機対応能力が試される事態となりました。

PwCは、世界各地の企業や組織の経験をもとに、どのようなマネジメント意思決定の在り方がCOVID-19への対応に役立ったかを整理しています(https://www.pwc.com/gx/en/issues/reinventing-the-future/take-on-tomorrow/sustaining-covid-era-urgency.html)。ここで取り上げられた、内容は、今なお収束が見通せないCOVID-19パンデミック下でのレジリエンス(事業継続力)を高めるためにも、また、企業や組織が今後直面する恐れがあるパンデミック以外の危機事象全般への対応能力を高めるためにも参考になると考えられます。本稿では、上記インサイトで紹介するマネジメントが備えておくべき意思決定の際の7つのポイントや、意思決定プロセス強化のための着眼点を紹介します。

危機対応に役立つマネジメント意思決定の在り方

COVID-19は、広範囲かつ長期間にわたって私たちの生活に影響を及ぼす危機事象となっています。しかし振り返ってみれば、こうした事象は、規模の大小はあれど、たびたび発生しています。例えば本稿執筆時点(2021年3月)は東日本大震災から10年の節目にあたりますが、この10年の間にも、水害、土砂災害、大規模停電、クラウドサービスにおける大規模障害など、天災・人災を問わずさまざまな危機事象が発生し、多くの企業や組織が対応に追われてきました。不確実性を増す社会において、今後もこういった事態への対応は避けて通れないでしょう。

とはいえ、現実に発生する危機事象は多種多様であり、その内容・影響を予見することは難しいため、あらかじめ類型化した危機事象別の対応策を用意しておくこと(発生事象ベースのアプローチ)には限界があると言えます。そこで重要になるのが、発生した危機事象の影響下でも、自社・自組織の経営資源を活用して事業継続を図れるよう、意思決定プロセスを強固なものにしておくアプローチです(意思決定ベースのアプローチ)。有事の際に迅速・的確な意思決定を実現するポイントとしては以下が挙げられます。

  1. 自社にとって最も重要な課題を特定し、その解決に注力する。
    複数ある課題に対処する際に優先順位を明らかにし、順を追って検討を進めることが不可欠です。
  2. 多くの関係者を巻き込んだ上で迅速に意思決定を下し、実行に移す。
    課題解決の専門家や、意思決定により影響を被る当事者を巻き込むことが、決定事項に対する関係者の当事者意識の醸成につながります。
  3. 重要な意思決定については、効果測定・妥当性検証を行い、何度も見直す。
    ボトルネックがあれば回避・解消できるよう、効果測定・妥当性検証が欠かせません。
  4. 意思決定の結果、予期しない悪影響が出ていないか注意する。
    法規制への抵触や、社会的な信用の低下など、自社を取り巻く環境を広く見渡してみることも必要です。
  5. 対処すべき事項が明確になった後は、複数のタスクを並列で進める。
    複数のタスクを並行稼働させることが、最終的な問題解決までの時間短縮につながります。
  6. それぞれの従業員が最適な働き方を実現できるよう配慮する。
    最適な働き方(出社やリモートワークなど)は各人の状況によって異なることに配慮が必要です。
  7. 一定のペースを保つ。
    COVID-19のように危機対応が長期化する場合は、パフォーマンスを維持できるよう、従業員の勤務時間や休暇取得状況にも配慮することが必要です。

執筆者

遠藤 健史

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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