事業ポートフォリオ見直しとグループ再編

  • 2024-10-07

2023年3月に東京証券取引所(東証)が発表した『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』は、「PBR1倍割れ問題」として大きな話題となりました。要請文書は「事業ポートフォリオの見直し」の推進について触れています。

経営指標において資本効率性の存在感が強まる中、経営者にはどのような対応が求められているのでしょうか。事業ポートフォリオ見直しとグループ再編について、X-Value & Strategy(XVS)の3名が語り合いました。

(左から)土田 篤、舟引 勇、池本 勝紀

(左から)土田 篤、舟引 勇、池本 勝紀

登場者

土田 篤
PwCコンサルティング合同会社 パートナー

池本 勝紀
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター

舟引 勇
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター

成長にはトップダウンによる弾力的なリソースシフトが不可欠

土田:
事業の売却がうまくいかない企業にはどのような特徴があるでしょうか。

舟引:
資本効率を意識していない企業ほど、売却のタイミングを逃しやすい傾向にあります。よくあるのは、EVAスプレッドがマイナスでも、P/L上は黒字が出ており、それなりに売上規模も大きい事業が温存されるというケースです。経営陣の中に企業全体の売上に及ぼす影響を恐れて反対する人がいると、社内の意見がまとまりません。

土田:
資本効率の低い事業を残すことにより、よりよい投資機会に資金が回っていかないという点も認識する必要がありますね。

また売却の決断は早ければ早い方が選択肢が多く、有利な条件を引き出しやすいものです。意思決定が遅れることのリスクも過小評価されているかも知れません。

欧米の企業はもっとダイナミックにポートフォリオのシフトを行っています。キャッシュを生んでいる事業でも、戦略フォーカスから外れたら価値が高いうちに売り、戦略フォーカスに合う成長事業に再投資するという判断がなされています。資本を効率的に運用しつつ、成長シナリオを描けないと株式市場から評価されないことを肌身に感じているからとも言えます。

それに比べると、日本の企業は「ダメになったら売る」というケースが少なくありません。「自社にとっての戦略的な意義は何か」または「自社がベストオーナーであるか」というのを尺度にされているケースは少ないように思います。

舟引:
これは体質のようなもので変えづらいところではありますが、変えていくべきです。ポートフォリオをうまくシフトしてきた例としては、トップダウンで決断し、常設の専門チームが実行する仕組みが整っている海外企業があります。

土田:
大切なのは、経営者が長期のビジョンに基づいて大胆な決断ができるか、またはそのための組織や仕組みが整っているかどうかです。しかしながら、日本企業の多くは伝統的に社内力学のなかで事業部門が強いケースが多く、経営のブレインであるはずの経営企画部門は各事業部門をグリップできていないというケースが多いように感じます。これでは事業部門間をまたいだ経営資源の最適配分は難しいでしょう。成長事業に対して、もっと弾力的に投資できる仕組みが必要です。

舟引:
いずれにしても構造的な問題ですね。とはいえ最近は日本の一部のメーカーや通信業界、総合商社など、トップダウンで事業再編を進める企業が増えました。

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 舟引 勇

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 舟引 勇

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土田 篤

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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池本 勝紀

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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舟引 勇

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