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2023-03-13
保育所における障害児の受け入れ体制整備は、1974年度に予算補助事業として、障害児保育に対応する職員を加配する形で始まりました。この事業は2003年度より一般財源化され、地方交付税として地方自治体が運用する形となりました。また、対象となる児童の範囲も拡大され、2007年度からはこれまでの「特別児童扶養手当支給対象児童」に加え、発達障害を含む「軽度障害児」が加わりました。さらに、2018年度には保育所における障害児の受け入れおよび保育士の配置の実態を踏まえ、予算規模が400億円程度から880億円程度に増加するとともに、これまで人口規模により算定されていた仕組みから、障害児の受け入れ人数に応じて補助する仕組みへと改善されました。
このように障害児支援の充実や、障害児の保育所等での受け入れのための取り組みが進んでいることから、障害児保育へのニーズも年々増加傾向にあり、2020年度には障害児を受け入れている保育所数は19,965カ所、実際に障害児保育を受けている障害児数は79,260人となっています(図表1参照)。障害のある子どもたちが保育所などに入所することは地域社会への参加および包容(インクルージョン)の最初の一歩ともなることから非常に重要であり、全ての子どもが障害の有無にかかわらずともに成長できるような体制、支援が求められています。
出典:厚生労働省「各自治体の多様な保育(延長保育、病児保育、一時預かり、夜間保育)及び障害児保育(医療的ケア児保育を含む)の実施状況について」より当社作成
また、厚生労働省の「保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会」は2020年6月、特別な配慮を必要とする子どもの保育についての今後検討すべき課題として、「在籍期間の前後や集団の中での他の子どもとの関わり合いも含め、保育士等による関わりや環境面での工夫、職員間および家庭との連携等について、さまざまな知見や事例等を多面的に収集し、それらを基に個々の子どもに応じた支援を講じていくための観点や手立てを地域や現場で共有することが重要である」と取りまとめています。
当社が2021年度に実施した調査では、障害児のほかに、特定の判定は受けていないが特別な支援が必要と考えられる子ども、いわゆる「気になる子」にも範囲を広げて、障害児保育の実態などを調べました。
<障害児>
<気になる子>
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その結果、全国の障害児保育を行う保育所等において、障害児を受け入れている割合は71.4%、「気になる子」を受け入れている保育所等は89.8%であることが分かりました。施設種類別で見ると、認可保育所や認定こども園の9割以上が「気になる子」を受け入れていることも明らかになりました(図表2参照)。
出典:当社が2021年度に実施した調査をもとに作成
また、それぞれの保育所等が受け入れている人数は、障害児が平均3.73人、「気になる子」が平均23.01人でした。「気になる子」は特に2歳児や3歳児で多く、傾向としては、
といった様子が挙げられました。
障害児の場合は、加配保育士が施設平均2.03人配置されているのに対して、「気になる子」の場合は、施設が独自で配置している加配保育士が施設平均1.01人と、障害児の半分程度となっており、通常保育の中で対処する必要があるケースも多いと推察されます。
そのほか、「気になる子」の支援について、保育所等と家庭の間で意向に食い違いがあるのは、
がそれぞれ7割以上を占めていることも明らかになりました。
当社が2021年度に実施した調査によると、障害児保育に関する課題としては、障害児の受け入れプロセスや保育所の受け入れ体制に関するものが多く挙げられました。具体的には、
といったことが挙げられました。
また、保育所等は0歳から入園するケースが多いため、入所当初は障害児・気になる子であることが分からず、子どもの成長の過程で職員の加配が必要だと感じてから実際に加配されるまでは、保育所等による人件費等の「持ち出し」となるケースが多いことも明らかになりました。
これらの課題を抜本的に解決するような国の施策は、現時点ではありませんが、市区町村や保育所によっては、以下のような方法で課題を解決している事例も見られました。
このように、障害児の受け入れについて保育所や市区町村が工夫をするとともに、「気になる子」についても、できるだけ早い段階で支援を受けられるように、市区町村や保育所、地域の関係機関が連携して対応していくことが重要です。そして、全ての子どもが障害の有無にかかわらずともに成長できるような体制、支援を行っていくことが求められるでしょう。