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2023-03-27
療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された人に交付される手帳です。療育手帳を持っている人は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの対象となり、各自治体や民間事業者が提供するサービスを受けることができます。療育手帳の所持者数は年々増加しており、2020年度末時点では約118万人となっています(図表1参照)。
療育手帳制度は、1973年9月27日に出された各都道府県知事、各指定都市市長宛厚生事務次官通知に基づいて運用されています。この制度は都道府県知事および指定都市の長が主体となり、市町村その他の関係機関の協力を得て実施することとなっており、都道府県や指定都市が手帳の交付決定などを行うこととなっています。
そのため、療育手帳制度には現時点では法的な位置づけはなく、都道府県や指定都市によって、手帳の名称、検査および判定の方法、IQの上限値、発達障害の取り扱いなどの認定基準にばらつきがあり、療育手帳所持者がほかの自治体に転居した際に判定に変更が生じる可能性があります。
一方、療育手帳の判断基準を統一することについては、確立された定義がないこと、画一的な基準の作成が困難なことなどから、慎重な対応が求められています。
2019年3月に決定された「児童虐待防止対策の抜本的強化について」の中で、療育手帳について、「療育手帳の判定業務について、その一部等を児童相談所以外の機関が実施している事例等を把握した上で、障害児者施策との整合性にも留意しつつ、事務負担の軽減につながる方策を検討する」とされており、療育手帳の判定業務の検討が進められてきました。
当社が2019年度に実施した調査研究では、各都道府県・指定都市における療育手帳の統一的な判定基準の作成が可能か検討するとともに、児童相談所における療育手帳交付事務の実態を調べました。
その結果、療育手帳の判定件数は、児童相談所によって差があることが明らかになりました。また判定業務の一部について、知的障害更生相談所などの外部機関へ依頼している児童相談所も見られました。
公布の判定を含め、療育手帳に係る業務を実施する上での課題として、児童相談所の職員にかかる業務負担の大きさが挙げられる一方で、職員育成の点から有用な業務であることも示唆されました。
また、療育手帳の判定基準などを全国で統一した場合の影響については、申請者にとってのメリットが大きくなると考えられました。特に自治体間での差異がなくなることにより、転居の際に申請者への負担が少なくなるとともに、判定基準が明確になることにより、判定への納得感が得やすくなります。一方で、判定基準を統一することは、これまでの業務を見直す必要性が高まるという観点から、児童相談所に大きな負荷がかかることも分かりました。
そのほか、統一にあたって検討すべき論点として、具体的に統一する内容、更新判定のタイミング、発達障害などの知的障害以外の障害の位置づけなどが挙げられました。
児童相談所へのアンケート結果を踏まえると、児童相談所によって判定区分や判定ツール、人員数などが異なることから、特に移行期において、児童相談所、申請者の双方にとって混乱が生じる可能性が考えられます。また、以下の3点についても、判定基準の統一の際に考慮する必要があることも示唆されました。
療育手帳の運用の統一化に関連して、2020年度から2021年度にかけて厚生労働科学研究が「療育手帳に係る統一的な判定基準の検討ならびに児童相談所等における適切な判定業務を推進させるための研究」を実施しました。その中で、療育手帳の基準の統一化を図るために必要なこととして、
また、厚生労働省社会保障審議会障害者部会が公表している報告書「障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて」では、療育手帳の今後の在り方について、以下のように整理されています。
療育手帳の運用における統一化については、厚生労働省障害者総合福祉推進事業や厚生労働科学研究で引き続き検討が進められていることから、できるだけ移行期に混乱が生じないよう、入念に検討を進めたうえで運用を統一していくことが望まれます。