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2017-09-05
本コラムは、英語blogを翻訳したものです。
米国COSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会)がリスクマネジメントの枠組みとして世界で最も広く認識され、適用されている全社的リスクマネジメント(ERM)フレームワークの改訂を決定した際、新たなフレームワークの起草者としてPwCが採用されました。
いくつかの理由が考えられます。事業運営の複雑さが変化し、新たなリスクがかつてない速さで次から次へと生まれています。クライアント行動の変化は、予測不可能な世界の経済情勢に大きな影響を与えています。
一方、技術が進化し続け、透明性を求める声が大きくなり、戦略的計画策定や業務遂行能力の重荷となっています。これらの課題に対処するには、現在および将来の企業価値の創出、維持、実現につながる新たなリスクマネジメントのアプローチが必要です。
ERMフレームワークの草案は意見聴取のため一定期間公示され、世界的に業界横断的な関心を集め、非公開企業からも公開企業からも広く支持されました。こうして得られたフィードバックは、「全社的リスクマネジメント‐戦略とパフォーマンスとの統合(Enterprise Risk Management-Integrating with Strategy and Performance)」と称されることになった改訂版COSO ERMフレームワークを方向づける上で、有用な役割を果たしました。
改訂版COSO ERMフレームワークの重要な変更をいくつかご紹介します。
事業サイクルに合わせて5項目に絞り込まれた構成要素と20の原則を設けることで、ガバナンスから日々の業務まで、さまざまなプロセスを主要な原則で網羅しています。これらの原則は、対処可能な数であるとともに、企業の規模、種類、業種にかかわらず適用できる構成になっており、取締役会と経営者がリスクについてより総合的に議論できるようになります。
企業価値につながる利点を実現させるには、ERMを戦略策定やパフォーマンス管理と一体的に進めるべきであることを明確に示しています。こうした利点に着目することによって、ERMがなぜ重要かについての議論が深まります。
ERMをより適切なかたちで統合するにはどうすべきかについて、リスクを戦略策定や日々の業務に結び付け、企業文化、企業能力、企業慣行のあらゆる側面に組み込み、意思決定の向上を図るべきであるとの指針を示しています。
ERMの設計、実施、遂行にかかわる全ての管理段階について主要な定義、構成要素、原則を示すことによって、リスクに関する適切かつ普遍的な議論を提示しています。
改訂版ERMフレームワークでは新たな概念図を使っています。中核となる概念図はリスクマネジメントとビジネスモデルの関係を現実に引き寄せて図示しています。リスクカーブなどを示したその他の図表では、リスクマネジメントが日々の議論の中に一層組み込まれるよう、リスクと戦略とパフォーマンスの関係を浮き彫りにしています。
事業体レベルから業務プロセスレベルまであらゆるレベルで、リスクの特定、評価、管理を業務的なものから戦略的なものに移行させる方法を探ります。
リスク選好やポートフォリオの視点に立ったリスクの捉え方といった課題を取り上げ、現在存在するいくつかの誤った認識を正し、より深い見識を示します。
どうすれば全社的リスクマネジメントを通じて企業文化に透明性とリスクに対する認識をより深く根付かせることができるかについて考察し、意思決定に役立たせるとともに、意思決定の方向性を定める上で企業文化が果たす役割の重要性に対する理解を促します。
データ、人工知能(AI)、自動化の普及拡大といったビジネストレンドが企業の戦略、ビジネス状況、リスクマネジメントにどのような影響を与えるかについて考察します。
新たなERMフレームワークの補足資料として、今回公表した全原則をさまざまな業界、規模・種類の企業、実際の企業慣行、予期される企業慣行に適用した場合にどうなるかを説明すべく事例研究集を作成しました。その概要は今年の秋の終わりごろに公表予定です。
改訂版COSO ERMフレームワークと事例研究集はいずれも、プロセスごとに単独で行う予防的なリスクマネジメントから、機会に着目し、対話を通じて行う積極的なリスクマネジメントへの転換を図ることを目的とするもので、どうすればリスクマネジメントを質と価値の創出、維持、実現につなげることができるかがわかるように構成されています。
改訂版COSO ERMフレームワークに組み入れた主要な概念に関するPwCの考え方については、COSO全社的リスクマネジメントフレームワークに関するマイクロサイトをご参照ください。ご登録いただいた方には随時、最新情報をお知らせします。
皆様からのご意見をお待ちしております。
グローバル・アジア太平洋・米州(APA)担当リスク・コンサルティング・リーダー
デニス・チェスリー(Dennis Chesley)