
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で変わる監査の現場 AIの活用は本当に進むのか、AI導入に立ちはだかる課題とは
監査業務にAIを導入する動きが加速しています。PwC英国がこのたび、AIを利用して現金及び預金の監査手続を自動化するツール「Cash.ai」のパイロットテストを被監査会社に対して実施しました。AIを本格導入する上で見えてきた課題を紹介します。
2020-06-05
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は社会全体に、在宅勤務(リモートワーク)という新しい働き方をもたらしました。リモートワークに切り替えても滞りなく対応できることもある一方で、リモートワークに適したやり方に変えていかなければならない業務も出てきます。
監査業務は、被監査会社から提供される多種多様な資料を基に行われます。特に期末監査ではかなりの数の資料を扱うため、被監査会社と監査人の双方が、依頼内容の確認や共有状況の把握、依頼資料の管理に特に苦労されているのではないでしょうか。リモートワークの導入が進めば進むほど、メールでのやり取りでは煩雑になり管理しきれなくなります。
PwCあらたは、監査人からの資料依頼、被監査会社からの資料の共有状況をリアルタイムで可視化するツール「Connect」を活用しています。2019年には上場被監査会社に対する監査業務のうち6割程度に導入されていましたが、リモートワーク下の2020年はさらに利用率が高まっています。Connectを活用した監査業務を通して、これからの監査人のあり方について考えます。
Connectは、オンライン上で被監査会社および監査人の双方で情報を共有することができる、PwC独自のツールです。IDやパスワードによる全体包括的な情報セキュリティの整備はもちろんのこと、権限設定により情報ごとにアクセスできる人を制限できたり、ダウンロード履歴を残したりすることができ、メールなどでやり取りするよりも安全な情報共有を実現します。
共有できるのは、監査で使用する資料だけではありません。Connect上で監査の進捗を管理することもできます。操作性の高さや直感的に状況を把握できる視認性のよさが、Connectの強みです。
実際の使い方を紹介しましょう。まず、監査人は事前に監査上で必要な資料を検討し、依頼資料リストを作成します。資料名と資料を依頼した監査人の名前を記載された依頼資料リストをConnectにアップロードし、被監査会社へリクエストを出します。被監査会社がリクエストごとに担当者を設定し、双方で合意した期限を入力すると、ステータスが「監査人依頼済」に変わります。その後、「被監査会社対応中」、「被監査会社提出済」、「監査人受領済」といったようにステータスが切り替わり、被監査会社と監査人の双方で進捗管理を容易に行うことができます。
Connectの導入により、監査人からの「あの依頼資料の対応状況はいかがでしょうか?」といった確認の時間や、被監査会社からの「その資料は監査人のAさんに提出しました」といったミスコミュニケーションをなくすことができます。また、CFOや経理部長が経理課長や部員に「監査提出資料で未了のものはあるのか」といった確認や、監査パートナーやマネージャーが主査に「現状の依頼資料入手状況はどうなっているのか」と情報の共有を依頼する必要もなくなります。資料の共有がどの部門で止まっているのか、担当者は誰なのかも明確化されるため、次年度に向けた改善にもつなげることができるでしょう。
Connectは多様なコミュニケーション機能を有しています。リクエストごとに「ディスカッション」という機能があり、資料に関する質問を記載すると、登録されている担当者に質問内容がメールで通知されますことができます。双方の担当者がConnect上のディスカッションを通じてやり取りすることで履歴が残り、どのようなコミュニケーションが行われたかを関係者全員で効率的に把握することができます。
連結子会社の監査チームとのコミュニケーションにも活用できるのも、Connectが多くの被監査会社で利用される理由の一つでしょう。PwCは電子監査調書システム「Aura」を全面導入していますが、Connectはこれとも連動し、受領した監査依頼資料をオンラインで直接Auraに転送します。従来のメールでのやり取りだと、その資料をパスワード解除してダウンロードし、それをまたAuraにアップロードするという手間が発生していましたが、この連動により、監査人は本来の監査手続や分析、検証により多くの時間を使うことができ、高品質な監査の実現にもつながっています。
監査の過程で発生する多数の依頼資料のやり取りを簡略化し、効率的に情報共有する仕組みを作れないか――。そのような思いからConnectは生まれました。オンライン上の業務がますます増えていくことを見据え、監査人には、ビジネスリスクと監査リスクを評価して適切な会計処理や監査アプローチを判断するという能力のみならず、こうしたツールを適切に活用するデジタルリテラシーを有することが必須になると考えています。伝統的な会計監査の必要性は変わらずとも、もはやその業務は会計士のみの領域ではありません。システムエンジニアや会計スキルを有する専門家など、デジタル化の進行に合わせて必要な人財も変わっていくでしょう。デジタルツールの使い方はもちろん、目的をしっかり理解した上で活用できる監査人とともに、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」になるべく、さらに高品質な監査を実現します。
監査業務にAIを導入する動きが加速しています。PwC英国がこのたび、AIを利用して現金及び預金の監査手続を自動化するツール「Cash.ai」のパイロットテストを被監査会社に対して実施しました。AIを本格導入する上で見えてきた課題を紹介します。
リモートワークにおける監査業務を支えているのは、テクノロジーの活用です。特に広く現場で活用されているテクノロジーとして、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が挙げられます。RPAがどのように監査現場を支えているのかを紹介します。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって、PwCあらたは監査人の業務内容をあらためて見直しました。専門的な判断を伴わない業務を一手に担う組織「テクニカル・コンピテンシー・センター(TCC)」との分業が、監査人の業務内容のみならず育成モデルにも変化をもたらすかもしれません。
監査業務は、被監査会社から提供される多種多様な資料を基に行われますが、かなりの数を扱うため、管理に苦労するという声が絶えません。監査人からの資料依頼、被監査会社からの資料の共有状況をリアルタイムで可視化するツール「Connect」を活用した監査業務を紹介し、これからの監査人のあり方を考えます。
私たちは、マネジメントプロセストータルの視点から、「デジタルトランスフォーメーション」と「コンプライアンス/ガバナンス」の2つの柱を両立させることで、企業の変革を支援します。
Haloは、ビジネスにおける膨大かつ重要なデータを取り扱うPwCの監査データ分析ツールです。大量のデータ分析を通してリスクとなり得る取引を抽出し、より効果的かつ効率的なアプローチを提供します。
Auraは、グローバルで使用される電子監査調書システムです。監査計画の立案から監査の実施、監査報告書の提出に至るまで、あらゆる業務において活用されています。
人工知能(AI)の監査への適用可能性ならびに、被監査会社および監査人にもたらす効果について考察します。