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2021-06-23
第2回の前編では、日本が「マスクフリー社会」へ回帰するために私たちが取り組むべき準備について考察しました。後編では、向上させるべき国民の「2つの納得感」を踏まえながら、「私たちが取り組むべき準備」について、より具体的に考察したいと思います。
前編から繰り返しになりますが、「マスクフリー社会」へのスムーズな回帰を実現するためには、ワクチン接種率の向上に加え、イスラエルや英国のように試験的にマスク着用義務の解除を行い、段階的に「マスクフリー社会」への回帰を進めることが必要となります。PwCはさらに一歩踏み込み、この「段階的な回帰」に加えて、国民の「2つの納得感」を向上させることが必要だと思案しています。この「2つの納得感」とはすなわち、「理論的納得感」と「実践的納得感」です。以下、それぞれの詳細について考察したいと思います。
ワクチン接種率、新規感染者数、病床稼働率などの定量指標の改善について、まずは頭で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束を理解し「理論的納得感」の向上を図る。そのためには、人々が各指標に基づいてマスクフリーとCOVID-19の感染リスクの関連性を正しく理解できるリテラシーを身に付けることが必要となる。自分の「住んでいる市区町村」において「どの指標」が「どう変われば」「どんな場所で」「どうマスクを外せるのか」を理解できるような情報提供が求められる。
「部分的なマスクフリーの実現と実践」などの「体験」が必要となる。具体的には、マスク着用を義務付けない音楽ライブやスポーツ観戦の試験的開催、職業や場所に応じたマスク着用ルールの緩和、インフルエンサーや政治家らによるマスクフリー宣言などが挙げられる。これらをとおして、マスクフリー状態でのCOVID-19に対する人々の心理的な恐れを低減させることができれば、「実践的納得感」の向上につながる。
前編で述べたとおり、米国疾病予防管理センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)のガイドライン改正と同時にマスクフリー宣言を行った米国と、ワクチン接種と並行して段階的な規制緩和を行ったイスラエルを比較すると、後者のほうがマスクフリー社会への回帰がより深く人々の生活に浸透しています。これを踏まえ、PwCは「理論的納得感」「実践的納得感」のうち「実践的納得感」に比重を置くことが「マスクフリー社会」への回帰を早めるクリティカルパスであると思案しています。
同時に、目指すべき世界はあくまで「マスク着用の判断が個人に委ねられる社会」であることから、こうした取り組みを推進するにあたっては「マスクを外さない選択肢」も同時に尊重されるべきです。
2022年1月ごろに日本のワクチン接種率が66.1%に達し、「マスクフリー社会」への回帰が実現することを想定すると、実現に向けた議論・準備を急ぐ必要があります。冒頭で指摘した「2つの納得感」の向上に加え、リスクへの対処も求められるでしょう。例えば、何らかの理由でワクチンを接種できない、または接種しない人(非接種者)に対する差別や、ワクチンに対する信頼感の低下、マスク着用をめぐる周囲の同調圧力などが挙げられます。いずれも「いかにワクチン接種、マスク着用に関する正しい情報共有を行うか」が肝要となります。
「理論的納得感」と「実践的納得感」の向上には「リスクとベネフィットを踏まえた複数プレイヤーでの議論」「方針の共有と目標の設定」「各々の強みを生かすアプローチの検討」「計画の発信」「モニタリング」「進捗の連携」が重要と考えます。
特に、複数プレイヤー間で納得感のある議論を行うこと、定量的な指標に基づいて「マスクフリー社会」のシナリオの分岐を示すこと、積極的な情報公開を行い議論に参加できる状態を作ることが重要となります。
参考:「マスクフリー社会」へ回帰している国
国 |
マスクフリー状況 |
実施施策 |
インパクト |
マスクフリー時の接種率 |
イスラエル |
・2021年4月18日、マスクフリーへ回帰。政府が外出時にマスク着用を義務付けないと発表。 |
・2021年2月21日、ワクチンの2回目の接種から1週間経過した人、または感染から回復した人に対してグリーンバッジを付与。バッジを持っていない人よりも行動制限を緩和。 ・2021年3月7日、バッジの有無に応じて行動制限を更に緩和。 ・2021年4月5日、一部軍隊において試験的に野外訓練中のマスク着用を免除。 |
・行動制限緩和後も新規感染者数は減少傾向が続く。 ・2021年2月19日に集会の規制が緩和されたことで一時的に新規感染者数の減少がストップ。 ・2021年4月18日のマスクフリー後も、新規感染者数の増加は見られない。 |
57.5% |
英国 |
・2021年5月16日、学校でのマスク着用が解除。社会的距離が取れない場所では引き続きマスク着用の義務あり*9。 |
・2021年4月16日より、数千人規模でマスクフリーのイベントを複数開催*16。 |
・2021年5月16日の学校のマスクフリー後も、新規感染者数の増加は見られない。 |
30.3% |
米国 |
・2021年5月14日、CDCが一部環境を除きワクチン接種完了者はマスク着用義務解除のガイドラインを発表*10。 ・バイデン大統領とハリス副大統領がマスクフリーで公式の場に現れ「混雑していなければマスクを着用する必要はない」とのコメントを発表。 |
・N/A |
・マスクフリーの声明発表後(2021年5月14日以降)も新規感染者数は減少傾向にある。 |
36.0% |
「マスクフリー社会」とは、COVID-19の流行以前と同様に「個人の意思でマスク着用の有無を決められる世界観」にほかなりません。
「マスクフリー社会」を見据え、全てのプレイヤーが一丸となって検討し、実践することによって得られる経験はかけがえのないものとなるはずです。同じ目標に向かい、複数のプレイヤーが協働し、定性・定量の両面で検討を進め、市民を巻き込んだ課題解決を行うことは、社会課題解決に欠かせない「コレクティブ・インパクト・アプローチ(Collective Impact Approach)」の実践と言えるでしょう。
私たちが再び「マスクフリー社会」を迎えることは、日本全体で1つの社会課題を乗り越えた証であり、社会課題解決を加速させる準備が整った証とも言えます。
私たちは引き続き、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPwCのPurpose(存在意義)に基づき、COVID-19接種業務を支援することで、ヘルスケアに新たな彩を増やしていきたいと思います。