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大規模な災害が発生した際に、国・都道府県・市町村は連携をしつつ、災害対策基本法に基づき、被害拡大の防止と災害の復旧を図る上での大きな役割を果たしています。近年では、激甚災害や非常災害に指定される災害がほぼ毎年発生しており、市町村や被災地域の住民を広域的にサポートする仕組みが求められています。
国の制度においても、災害の発生時に都道府県が果たすべき役割を重視していることが分かります。
「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」に基づいて激甚災害制度が定められています。本制度は中央防災会議が定める2つの基準に沿って政令で指定されています。
「災害救助法」に基づいて災害救助法の制度が定められています。本制度は国に設置される災害対策本部が所管区域を指定します。災害救助は法定受託事務として都道府県が担います。
「激甚災害制度」と「災害救助法の制度」の2つだけをとっても、災害の被害規模が大きくなるに伴って、都道府県が果たすべき役割は大きくなると言えます。
では、都道府県がこれらの役割を果たすためにはどのような機能が必要でしょうか。
災害は決して標準化できるものではありませんが、2016年の熊本地震や直近の能登半島地震を見ても、指定避難所には行かずに車中泊を行うなど、当初の想定にない行動が広域的に発生しています。
また、被害のない、あるいは少ない他市町村に避難を行うケースもあり、被災した市町村だけではなく、避難先の市町村との連携も必要です。
このため、発災直後から復旧期にかけては、広域的に状況を把握し、情報を共有する機能を元に、多方面との調整を請け負う高度なマネジメント機能が求められると考えられます。これは復興期に移行する中での復興の在り方(暮らし方、まちづくり、産業復興など)についても同様と見込まれます。
他方で、過去の災害における取り組みなどにより、課題も徐々に明らかになってきています。災害救助や財政援助においては、都道府県の役割が一定程度記載されているものの、具体的な役割分担や連携のあり方は、発災してから整備を始めるケースが多い状況です。例えば、被災者台帳の情報を広域的に取り扱う場合には、個人を特定するためのIDが新たに必要です。選択肢としてはマイナンバーが考えられますが、被災者台帳でマイナンバーを利用するためには、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号法)に基づいて特定個人情報保護評価(PIA)を行わなくてはいけません。被災してから評価書作成やパブリックコメントを行う時間はないため、広域で取り扱う際にはIDの統合を諦め、名寄せを行う手間が発生してしまうのが現状です。
これ以外にも各事務について、災害が発生してから都道府県と市区町村との間で調整をしていたのでは、刻々と変化する被災地への適切な対応が遅れるとともに、役割・事務の進め方などの習熟が図れず、運営に混乱を及ぼす可能性があります。災害によって必要な支援の内容やタイミングは異なるものの、あらかじめ広域的に共有するべき情報を災害のフェーズ別に整理し、都道府県・市町村(被災した市町村・避難先の市町村など)の役割を分担したうえで平時から訓練し、体制とシステムの双方が発災時に即時に立ち上がる仕組みを作ることが重要です。
これに対して、現行制度を前提として、3つの対応策を検討、整理しました。
① デジタル広域連携:平時から有用な電子的広域連携体制の構築
災害時を想定し、平時の事務を市町村と統合・廃止。地理的条件(距離)に制約されることなく、補完や共同の視点で市町村同士が連携することも想定する。
② デジタルツイン:目的意識を持った情報収集・分析
災害時に収集・分析する必要性が高い避難所や被災者の情報に着目し、平時からデータの整備を図る。また、データ整備の一貫としてPIAを行い、データの分析結果をどのように活用するか、目的から逆算して関係者や情報の提供・移転経路を洗い出すことで、非常時でも正しく分析できる状態にする。
ただし、非常時だけのために訓練や点検を行うインセンティブは行政・住民ともに少ないため、目的外利用にならないように整備しながら、平時にも活用できるデータとする必要がある。併せて、住民が発災後にマイナンバーカードなどを活用して、数時間に1回程度の頻度で「ピッ」と居所を報告したくなるような行動をデザインすることが有効だと考える。
③ コンパクトシティ:災害に強い街を実現する居住空間と行政サービスの再考
居住エリアが広範囲に及ぶ場合、避難所の配置や被災者情報の把握にあたっての行政機関の負担は大きなものとなる。これを回避するためには、居住エリアについて一定程度の集約を図るとともに、行政サービスについて、すべてオンラインで提供を受けることを住民が許容し、納得する仕掛けが必要である。
災害対策においては、3つの「力」が重要であると言われています。一人ひとりが自ら取り組む「自助」、地域や身近にいる人同士が一緒に取り組む「共助」、行政機関などが取り組む「公助」です。
先に提示した対応策の検討を深め、社会実装することで激甚災害時において国・都道府県・市町村がよりスムーズに連携できる環境を作ることが「公助」の強化につながるとPwCは考えています。
次回のコラムでは、東日本大震災から力強い復興を果たした女川町の具体的事例を見ていきながら、災害からの復興に資する「自助」と「共助」のあるべき姿を考察します。