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連載コラム「これからのデータ利活用を考える」では、データ利活用において近年トレンドとなっている「データ流通」をテーマに、その可能性や企業が考慮すべきポイント、取り組むべきことについて解説します。第1回となる今回は、データ流通の概念、そして今データ流通が注目されている理由について説明します。
データ流通とは、「多種多様かつ大量なデータが、企業や業界を越えて流通する」ことを指します。これにより、新規事業や新サービスの創出による経済発展や健康増進、防災態勢や住環境の改善による国民生活の安全性および利便性の向上、さらには環境問題や社会課題の解決などが期待されています。
*1:内閣官房IT総合戦略室, AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ中間とりまとめの概要(2017)
*2:内閣府, Society5.0 https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
また、データ流通を推進することは一企業にとっても2つのメリットがあると考えられます。
自社が保有するデータやアセットに外部の知見およびデータを組み合わせることで、競合優位性のある唯一無二のビジネスを確立できる
データの提供元または提供先との間のコラボレーションや密な連携を通じて、変化に富んだ市場環境に対応できる迅速なサービス開発を実現できる
これら2つのメリットにより、企業は「生産性の向上(業務の効率化・最適化)」や「顧客ニーズの把握や商品開発の支援」などが可能となります。
近年データ流通が注目されている要因として、主に以下の2点が挙げられます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を背景に、データ利活用の取り組みが一巡し、さらなる価値創出を求める段階へと進んできた
「データ流通プラットフォーム」の台頭により、企業外のデータ(外部データ)を取得しやすい環境が整備された
これまで企業におけるデータ利活用と言えば、主に自社が保有するデータを活用した業務効率化やDXが中心でした。しかしながら近年では、データ利活用によるさらなる価値創出や新たなビジネスの立ち上げなど、いわゆる「データマネタイゼーション」が進展し、データそのものやデータに基づいたインサイトを外販する企業が増えてきました。そのため、それに伴って企業外のデータ(外部データ)を取得し、活用するといったデータ流通にも注目が集まっています。また「データ流通プラットフォーム」と呼ばれる、企業間のデータのやり取りを仲介するプラットフォームが登場し、外部データを収集しやすい環境が整備されたことも、データ流通が注目されることとなった大きな要因と言えるでしょう。
多種多様かつ大量のデータが企業や業界の枠を超えて流通することで、経済の発展や社会課題の解決が期待されます。その一方で、プライバシー、データ保護、知的財産権、セキュリティなどに係る課題を解決する必要性も高まっています。そういった課題に対処することで国際的に自由なデータ流通を促し、消費者およびビジネスの信頼を強化するとともに、「信頼」と「自由な流通」の相乗強化を提唱する概念がDFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通) 1です。DFFTは2019年のダボス会議で当時の安倍晋三首相が提唱したことで注目されるようになりました。
2023年4月に開かれた主要7カ国(G7)デジタル・技術相会合では、DFFTの具体化のための国際枠組み(IAP)の設立や、DFFTの具体化のためのG7ビジョンおよびプライオリティについて合意2がなされました。5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)でこれらが承認3されたことで、多くの議論が積み重ねられてきたDFFTは具体的に前進しました。
今後、人工知能(AI)やIoTに代表されるような先端技術を多くの人が生活に取り入れていくことに伴い、不正アクセスや不正利用といったプライバシー侵害リスクやセキュリティ上の懸念が生じます。そのような背景の中でDFFTの重要性は高まっていくと想定されます。
2016 |
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2021 |
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2023 |
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*1:内閣府, Society5.0(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/)
*2:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室「デジタル時代の新たなIT政策大綱(案)」
*3:デジタル庁, 包括的データ戦略(https://www.soumu.go.jp/main_content/000756398.pdf)
さまざまなステークホルダーを巻き込んだデータ流通の実現を後押しすべく、世界各国においてデータ戦略の枠組みづくりが進んでいます。データ戦略とともに法規制による整備、制限をかける動きも見られますが、歴史的背景もあり、データを巡る整備、制限は各国でバラバラの状況です。
DFFT発信国である日本はコロナ禍の影響もあり、データ流通においては「国・自治体のデジタル化が進んでいないこと」や「データ利活用環境の整備や実際のデータ利活用が十分に進んでいないこと」が課題として明確になっています。そのため国内省庁や関連団体では、ルールやガイドラインの策定や基盤構築などの課題解消に向けた具体的なアクションを進めています。
下記出典をもとにPwC作成
*1:経済産業省 「デジタル時代におけるグローバルサプライチェーン高度化研究会 サプライチェーンデータ共有・連携ワーキンググループ」第1回事務局資料(https://www.meti.go.jp/shingikai/external_economy/global_supply_chain/supply_chain_data/pdf/001_05_00.pdf)
*2:内閣官房 包括的データ戦略(2021)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/576be222-e4f3-494c-bf05-8a79ab17ef4d/210618_01_doc03.pdf)
本稿では、データ流通の概念およびそれが注目されてきた背景について解説しました。これまでのデータ利活用は、既存の事業や業務などを通じて社内に蓄積された「自社データ」を活用することに主眼が置かれていましたが、今後は「DFFT」「Society 5.0」「包括的データ戦略」などの概念、方針がより一層発信され、自社内だけに留まらない「外部データ」を利活用できる機会がますます増えてくると推察されます。