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企業においてデータ利活用の取り組みが進む中、さらなるデータ利活用の可能性としてデータ流通が注目されています。今回のコラムでは、社会におけるデータ流通のユースケースを紹介し、そこから考えられるデータ流通成功のポイントを解説します。
欧州の自動車産業においては、CO2排出量削減に向けて「Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント=LCA)」、すなわちサプライチェーン全体でCO2排出量評価に対応することが求められています。そしてこれを契機として、CO2排出量を正確に把握するため、サプライチェーン全体でデータを共有するデータ流通エコシステム創成の動きが進んでいます。
こうした背景から、欧州では自動車産業のサプライチェーン間で安全にデータを交換・共有するためのコンソーシアムである「Catena-X」、利用や走行などのモビリティに関するデータ流通基盤「Mobility Data Space(MDS)」、それらを支える産業横断でのデータ流通基盤「GAIA-X」などの動きが加速しています。1社がデータを独占するのではなく、交換や流通によって必要なデータを得て、変革を進める時代に入ろうとしています。
エストニアでは、国家規模でデータ流通によるスマートシティの取り組みが進められています。国民の98%がデジタルIDを保有し、行政サービスの99%が電子化され、24時間365日利用可能です。会社設立や税務手続きも全て電子化されており、国外からでもエストニア国内に会社を設立することが可能であり、地域を横断してデータを水平統合している世界有数の「デジタルガバメント」と言えます。
また日本国内でも、京都府がオープンデータカタログサイト「KYOTO DATASTORE」*1を公開し、大阪市は都市課題の解決に向けた都市DXを実現するための「スーパーシティ構想」*2を進めるなど、自治体レベルでのデータ流通の取り組みが始まっています。大阪市では夢洲、うめきた2期において先端的サービスの実証や実装を進め、大阪広域データ連携基盤(ORDEN)を活用してさまざまなデータ連携を推進することで、次々とビジネスが生まれるデータ駆動型社会の実現、ひいては住民QoLの向上と都市競争力の強化につなげようとしています。
地方自治体だけでなく、企業においても数多くのデータ流通のユースケースが存在しています。ここでは、特に異なる業界・業種間でのデータ流通について着目し、3つのユースケースを紹介します。
異業種間のデータ流通の代表的なユースケースの一つとして、オルタナティブデータ活用が挙げられます。従来、金融機関や機関投資家などは、投資判断を行うための判断材料として企業の財務情報等を用いてきましたが、昨今では人流データや気象データ、衛星画像データ等の非財務情報(これらを一般的にオルタナティブデータと呼称)を用いて、より幅広く多角的に企業価値を評価し、投資判断を行いたいというニーズが高まっています。これらのデータは幅広い業界・業種のデータにアクセスする必要がある為、データ流通プラットフォーム等を活用して効率的に情報を収集する動きが存在しています。
機械の保守・整備業務において、これまでの「故障や異常が発生してからの事後対応」ではなく、部品の利用状況をデータとして取得し、異常が発生する前に必要な整備を行う、いわゆる「予防保全」が存在しますが、そのようなケースにおいてもデータ流通の取り組みが有効に機能するでしょう。
例えば航空会社が、自社が保有する航空機のフライトデータや、タイヤの摩耗状況のログデータをタイヤメーカーに提供し、メーカーではそれらのデータと航空機の離着陸時の気象データなどを組み合わせて解析することで、タイヤの適切な交換時期を判断することができます。これによってメーカーは効果的なタイヤの貼り替え時期の提案などを行うことができ、航空会社にとっても計画的にタイヤを交換することで、余剰在庫の削減や保守整備にかかる人件費の削減につなげることができます。
商社をはじめとする卸売業は事業者間の商品流通を仲介する存在ですが、こういった場面でもデータ流通による付加価値創出が期待できます。
例えば食品卸は、現在は小売店やスーパーなどの販売店と食品メーカーとの間に立ち、メーカーに代わって販売店へ食品を販売したり、販売店の代わりに食品メーカーから商品を仕入れたりする役割を果たしています。食品卸が独自の顧客向けアプリを開発して販売店に提供すれば、アプリを介した食品メーカーの販促情報の発信や、メーカー側に各店舗の販売動向や在庫状況を提供・活用してもらい、結果的に食品卸の取引先の拡大も期待できます。また、アプリを通じて得られたデータをシステム開発会社と連携し、消費動向を踏まえた需要予測や在庫最適化、生産計画の最適化など、より多くの価値につなげることもできるでしょう。
企業が実際にデータ流通を考えるときに、どのような点に気を付ける必要があるでしょうか。PwCが実施した「データマネタイゼーション実態調査2023」では、企業がデータ流通やデータマネタイゼーションに取り組む際の課題として「スキル・知見がない」「どのデータがマネタイズできるか分からない」「アイデアがない」などの検討初期の段階における課題が上位に挙がっています。
これら主要課題のなかでも、最も重要なのは「データ流通のユースケース・アイデアが不足していること」です。アイデアがない状態とは、料理で例えるなら「食材(データ)や調理器具(AI技術・サービス)はあるにも関わらず、どのように調理するかというレシピ(アイデア)がない」ような状態であり、レシピ(アイデア)があって初めて料理(データ活用)を作ることができます。ユースケースやアイデアが決まれば、アイデアを実現するために何のデータが必要なのかを判断することができ、また取るべきアプローチや必要な人材、スキルなどが明らかになります。そのため、データ流通やマネタイゼーションを推進するうえでは、ユースケースとアイデアが最も重要と言えます。
データ流通やマネタイゼーションのユースケースとアイデアを具体化するためには、「業界を問わず多くの事例をインプットすること」「市場における課題やニーズを捉えること」など、幅広い視点での調査や検討が重要です。しかし、これらを単一の企業で全てを網羅的にカバーすることは現実的ではありません。そのため、知見を有する外部企業との積極的なコラボレーションにより、ユースケースとアイデアの解像度を高めることが重要と考えられます。
データを扱ったビジネスは、これまでは社内データを中心に既存業務の効率化とコスト削減を実施(社内DXによる業務効率化)することが主流でした。今後は所属先や組織の垣根を越えてデータが流通し、あらゆる取り組みに高付加価値を創出する「データ流通本格化時代」に突入すると想定されます。
PwCコンサルティングでは、来たるデータ流通本格化時代の到来に向け、4つの伴走型支援を通じて企業や組織のデータマネタイゼーションに貢献していきます。
*1 京都府 オープンデータカタログサイト
オープンデータについて/京都府ホームページ
*2 大阪府・大阪市
大阪府/大阪スーパーシティ協議会