
デジタル法規制対応のガバナンス 個別対応から包括的な対応へ
デジタル関連の法規制は世界的に増加しています。グローバルにビジネスを展開する企業は、世界の法規制のモニタリングと要件の把握、必要な対応を実現するためのガバナンスが必要となります。PwCはデジタル法規制の包括的な対応を支援します。
人工知能(AI)には問題があります。AIを導入した企業の多くが、投資収益率(ROI)の低さに悩まされているということです。PwCが実施した最新のAIに関する調査では、企業がAIの恩恵を受け始めていることが示されましたが、実際には財務的なリターンが得られないことが多く、投資額の回収さえできていないこともあります。さらに、多くの企業がそもそもAIの投資対効果(ROI)を定義することに苦戦しているという課題もあります。
多くの人はAIとは何か、何をするものかを理解していると思っているかもしれませんが、AIはさまざまな技術、プロセス、機能を包含する言葉であり、一概に定義するのは難しい分野です。そのため、そのROIを見極めるのも難しいのです。単純に捉えるのであれば、ROIは、投資のコストに対する利益または損失の財務比率です。つまり、AIに投資する際には、投資の利益がコストを上回っている必要があります。
通常、コストは現在または近い将来に発生し、利益は将来の不特定の時点で発生します。しかし、利益が発生する時期はコストが発生する時期よりも不確実性が大きいため、ROIの計算では、投資したお金の時間的価値と利益の不確実性の両方を考慮する必要があります。
これが教科書的なROIの定義で、「ハードROI」と呼ばれる金融用語が意味するところです。
「ソフトROI」では、従業員の満足度や定着率、スキルの習得、ブランド力の向上、企業に対する評価の上昇など、より幅広い効果を考慮する必要があります。
AIの場合、ハードROIに影響するリターンにはさまざまな種類があります。
このようなハードなリターンに加えて、以下のようにAIはいくつものソフトなリターンをもたらします。
自社のAIに対する支出をハード投資とソフト投資のそれぞれの観点から見直してみましょう。ハード投資とはAIプロジェクトの構築に関わる資源の資産的価値のことですが、AI投資で高いリターンを得るためには以下のようなソフト投資という観点も考慮する必要があります。
計画中のAIプロジェクトをよく理解するためには、投資のハード面とソフト面の両方をマッピングする必要があります。以下のような4象限のマッピングを実施することにより、想定される利益の一部を数値化することが可能です。
企業がAIに関するROIを算出する際には、以下の3つの大きな間違いを犯しがちです。これらの間違いを回避するよう注意しましょう。
一部の企業では、AIプロジェクトごとにハード面での投資とリターンを見積もって単純なROIの計算を行うものの、利益の獲得に伴う不確実性を考慮できていないことがあります。
例えば、自由記述のテキスト形式で顧客からのクレームを受け取り、そのクレームの重要度を高、中、低と予測できるAIシステムの潜在的なROIを評価する場合、リターンを計算するためには、まず各予測の価値と、1年間に何件の予測が実行されるかを知る必要があります。ここでの価値とは、カスタマーサービス担当者(CSR)が手動での対応からAI支援のソリューション利用に移行することで節約できる時間に相当するでしょう。
ここで考慮すべき複雑な要素としては、AIモデルにはエラーがある可能性が高く、その精度はおそらく100%ではないということがあります。そのため、エラー率とミスによって発生するコストの両方を見積もらなければなりません。このエラー率を計算するためには、人間のパフォーマンスをベースラインとしてAIモデルのパフォーマンスと比較する必要があります。また、現実の世界にはトレーニング環境よりも不確定要素が多数存在するため、本番環境ではエラーがより顕著になる可能性があります。
ミスによるコストを計算する作業はさらに困難です。例えば、新人のCSRが、すぐに対応しなければならない重要度の高いクレームを、誤って重要度の低いクレームに分類したとします。その結果、企業にとって価値の高い顧客が離れていったのか、それとも顧客に不満は生じたものの企業の損失にはつながらなかったのかによって、ミスにより発生するコストは異なります。
また、別の課題として、企業がROIを計算するために必要なデータを揃えていない、あるいはそのデータを取得するためのプロセスがないということがあります。それだけでなく、AIのROIを計算するためにそもそも何が必要か考慮していないことも多々あります。
ハード面でのAI投資は、リソースの数と、各リソースが要する時間とコストを見積もることで把握できます。
ソフト面でのAIの投資と効果を見積もるのは難しいですが、AIプロジェクトを開始する前に両方を検討し、ROIを計算する際にも考慮するべきです。
多くの企業が犯しがちな2つ目の間違いは、AIプロジェクトのROIを特定の時点(一般的にはAIシステムの導入から数カ月後)で計算してしまうことです。残念ながら、機械学習ベースのAIモデルは時間の経過とともにパフォーマンスが低下する可能性があります。そのため、AIモデルから得られる価値が減衰し、すでに得られた利益を食いつぶさないよう、継続的にAIのパフォーマンスを測定することが重要です。また、AIの長期的な価値を維持するためには、メンテナンスのための予算も考慮する必要があります。
3つ目の間違いは、AIプロジェクトをポートフォリオとして捉えるのではなく、各プロジェクトを単独で扱ってしまうことです。これはよりソフトなリターンと投資の検討に関連する間違いです。ROIを評価する際には、企業のAIプロジェクトのポートフォリオ全体を考慮するべきです。
このような潜在的な落とし穴があるものの、AIは企業に大きな利益をもたらすものであり、多くの企業がすでにAI技術への投資を強化しています。
※本コンテンツは、PwCが2021年7月21日に発表した「Solving AI’s ROI problem. It’s not that easy.」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
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