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2022-09-14
いま税務の世界では、パラダイムシフトが起きている。日本企業はその流れにどのように対応していくべきなのか。カギとなるのはテクノロジーの活用だ。PwC税理士法人代表の高島淳と、同社パートナーで税務レポーティング・ストラテジーの川﨑陽子に、税務にテクノロジーが必要とされる理由と同社の取り組みについて話を聞いた。
参加者
PwC税理士法人 代表
高島 淳
PwC税理士法人 パートナー 税務レポーティング・ストラテジー
川﨑 陽子
左から 高島、川﨑
高島 淳 PwC税理士法人 代表
2021年10月、経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む136カ国・地域はデジタル課税の導入で最終合意した。巨大グローバルIT企業の税逃れを防ぐことが主な目的とされているが、日本企業も備えが必要だとPwC税理士法人代表の高島淳は言う。
「会計には国際会計基準(IFRS)や米国会計基準(USGAAP)といったグローバルスタンダードがありますが、税制度は各国の経済状況、財政状況等により政策的に決定されるため、その国独自のルールがあります。海外から資本を誘致するために、きわめて低い税率を設定している国や地域もあり、一部のグローバル企業には、法に反しない形で意図的に低税率国に所得を集めて節税を図っているところもあります。そうした「行き過ぎた節税」を防ぐために、100年に1度ともいわれる税制改革が起きているのです」
日本企業にはそうした露骨な節税をしている企業はほとんどない。しかし、高島によると、株主からは税引後利益の追求のプレッシャーが大きくなる一方で、ESGの観点から多様なステークホルダーに対して適正な納税を履行していることの説明責任が求められ、難しい舵取りを迫られている経営者は多い。加えて新型コロナウイルス感染症のパンデミックも税務に影響を与えるという。
「どこの国もこの2年間、コロナ対策でかなりの支出をしてきましたが、財源が不足しているので、できるかぎり税収を増やしたいという発想になりがちです。日本企業がいろいろな国でアグレッシブな税務調査を受ける可能性があるのです。それにうまく対応できなければ、レピュテーションリスク(脱税をしていたとして悪評が広がるリスク)にもつながります。ポストコロナで税務執行が変化する状況のなか、日本企業にはグローバルでの税務リスク管理対応が求められているのです」
ところが日本の企業には、それらに対処するだけのリソースが不足していると高島は指摘する。
「税務には高い専門性とコミュニケーションスキルが求められますが、日本企業の税務部門には、そういった人材が必ずしも多くいません。また、ローテーションで他の部署に異動することから、部内でノウハウが蓄積しにくいという問題があります。一方で同じ人が長い間担当し続けると、業務が属人化してしまいブラックボックスになってしまうというジレンマもあります。今後は、多くの時間を割いている税務申告業務を見える化し、業務を標準化した上でテクノロジーを活用することが人的リソースのボトルネックを解消するために必須になってくるのです」
そうした課題を解決するカギとなるのが、テクノロジーの活用による税務業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。そこでPwC税理士法人では、税務業務のためのAIを開発。実際にAIを業務に導入したところ、単純作業が激減したと同社パートナーで税務レポーティング・ストラテジーの川﨑陽子は言う。
「日本はいまだに紙文化であり、従来は、私たちの記帳代行のチームや消費税申告書を作成するチームなどが書類を読み取って表計算ソフトに手でデータを打ち込んでいました。それをAI OCR(光学文字認識)と自然言語処理を活用して作った自社の独自のAIアプリで読み込んでデータ化し、抽出までを自動化することで、いままで何十時間もかけてやっていたことが数分でできるようになりました。こうした部分から一歩ずつ標準化していくことが重要だと思っています」
請求書や領収書などの取引情報をAI OCRで読み込み、入力したら、会計データベースなどの各種データベースに保存。さらには税務申告などのデータやファイルを管理し、それらをデータ化する。最終的には、それらのデータを元にした各種レポートを作成することを目指していると高島は言う。
「確定申告書はもちろん、グローバルでの税務リスク分析を行うほか、各国での納税状況を可視化し、ESGの観点から税の貢献度をレポートできるようにしたいです。テクノロジーを活用して、税務レポーティングの上流から下流までのプラットフォーム全体を自動化していきたいと考えています」
川﨑 陽子 PwC税理士法人パートナー 税務レポーティング・ストラテジー
AI OCRはその第一歩というわけだ。帳票にもよるが、AI OCRを活用したAIアプリによる正解率は約98%に達するという。PDFや帳票をAI OCRで読み込んで表計算ソフトで一覧にし、それを別の帳票に出力するといった一連のフローを自動化できるようにもなった。人がデータを打ち込む必要がなくなるので、作業時間を80%ほど削減することに成功したという。金額のように数字で表す情報とデジタルは相性がいいので、それほど難しいことではなさそうに見えるが、ここまで辿りつくのはそう簡単ではなかったと川﨑は打ち明ける。
「日本の国税の帳票は文字が非常に小さく、漢字もたくさんあります。これをAI OCRで読み込むと、縦棒を『1』と間違えることがあります。どうやって正確に読み取れるようにするかは、技術的なチャレンジでした」
そうした課題を迅速に克服できたのは、システム開発を外部に丸投げせず、自社で行ってきたからだ。つまり、PwC税理士法人には実務を理解している税理士とエンジニアとの両方が揃っているということだ。その二人三脚によって、精度はどんどん向上していると川﨑は言う。
「一般的に、業務に携わる人とデータサイエンティストやエンジニアが分かれているためにDXやデジタル化がうまくいかないということがよくありますが、当社では両者が併走し、業務の専門知識とテクノロジーを組み合わせて効率化を図っています。読み込んだ結果を人が画面上でチェックできるようにしていますが、チェックした結果を保存しそれを教師データとして溜めて、さらなる精度の向上を目指しているのです。そのPDCAサイクルを回すことで、日本語の自然言語処理はかなり向上しています」
正確な数字が自動的に抽出されることで、誰がやっても間違いのない、属人化を排除したコンプライアンスを確保できるようになる。日本では税務当局でもDXが進んでいる。電子帳簿保存法が改正され、電子取引データの保存が義務化されたが、AIの活用は、そうした変化への対応にもつながる。
AIの活用により、顧客の作業負担が軽くなるが、効率化だけが最終目的ではない。効率化によって創出された時間を別のことに使うのが真の目的だと、川﨑は強調する。
「目指しているのは、経営への貢献です。ひたすら数字を打ち込んでいた作業の時間を、プランニングや税務リスク管理などを考える時間に変換していただきたいのです。当社の社内についても同様です。税理士の試験に向けて一所懸命勉強してきたスタッフがたくさんいますが、単純作業に時間を費やすのではなく、せっかく勉強した知識を生かしてクライアントの税務リスクやコスト管理といったことを考えることに時間を使いたいのです。それこそがクライアントの企業価値向上にもつながるはずです」
デジタル技術を活用した効率化により、将来的には税務コンプライアンスに割く時間を削減し、グループの税務リスク管理やESGの観点からの税務情報の開示、マネジメントの意思決定をサポートする業務の比重を増やすべきというのが、PwC税理士法人の提案だ。
世界中で税制が大きく変わろうとしているなか、PwC税理士法人は、将来的にどのような価値を提供することを目指しているのだろうか。川﨑は、テクノロジーにできることはもっとあるはずだと言う。
「データ処理をはじめ、AIを使ってできることはもっとたくさんあると思っています。それを広げていくとともに、さらに先のことも考えています。私たち税理士法人にはさまざまなデータが蓄積されていますので、それを元に、AIで数字の予測までできるようにしたいのです」
一方、高島は、PwC Japanグループ全体のネットワークを活用しながら、より高度なサービスを提供していきたいと意気込む。
「私たちは税務だけの話をするのではなく、ビジネスを理解し、クライアントに伴走するようなアドバイザーになっていかなければなりません。私たちのグループにはアシュアランスやコンサルティングなどさまざまな領域のメンバーファームがあります。PwC Japanグループ全体としてサービスを提供することを志向していかなければならないと考えています」
この3月にPwC税理士法人は、PwCアドバイザリー合同会社と共同で「Tax Risk Data Analyser」のリリースを発表した。特定の税務リスクに対応した効率的かつ効果的な税務データの分析を実施し、実際の税務調査での指摘が懸念される取引や課題を整理して報告するサービスだ。他のメンバーファームと協業することで、顧客のニーズを捉えたさまざまなサービスの提供が可能になるという。テクノロジーの活用は、そのための手段に過ぎないと高島は言い切る。
「さまざまなテクノロジーの活用に取り組んではいますが、私たちはアドバイザーとして、人を基本にサービスを提供するということが根幹にあります。ビジネスセンスや国際的なコミュニケーション能力、他とコラボレーションするスキルといったヒューマンスキルにもフォーカスしていかなければならないと考えています。テクノロジーやAIを使うこと自体が目的ではありません。単純作業を減らし、お客様により付加価値の高いサービスを提供することがいちばんの目的なのです」
※本稿は、Forbes Japanのウェブサイトに掲載されたPwCのスポンサードコンテンツを一部変更、転載したものです。