
「デジタルエコシステムの最前線」コラム 第13回「地域経済エコシステム【後編】」
地域経済エコシステムとは、行政や企業などのさまざまなプレイヤーがデジタルやデータを活用し、地域の魅力を発信することで地域経済・地域コミュニティを活性化するエコシステムです。前編・後編の2回にわたり解説します。
2020-12-14
地域経済エコシステムとは、行政や企業などのさまざまなプレイヤーがデジタルやデータを活用し、地域の魅力を発信することで地域経済・地域コミュニティを活性化するエコシステムです。
地域経済エコシステムを形成する上でキーとなるのは「人流」です。人流とは、ある地点間の人の流れを意味し、例えば観光地間でどれだけ人が動いたかを意味します。代表的な人流としては、古くはシルクロードや東海道、近年では観光における東京・大阪間のゴールデンルートや、旅先で休暇を過ごしながら仕事を行うワーケーションによる新たな人の流れが該当します。
地域経済エコシステム領域では、行政が企業と連携し、地域通貨や移動サービスの実証実験を行うなど、エコシステム形成につながる動きがあります。しかしながら、いまだ十分に進んでいるとは言えません。
地域経済エコシステムには、地域の特性や関連するプレイヤーによってさまざまな形成パターンがあります。本稿では、図表3に示すプレイヤーのうち、交通インフラに関わる企業が主体となってエコシステムを形成するパターンを取り上げます。
地域経済エコシステムの形成には、観光資源間の観光人流の形成が不可欠です。そのためには、各観光資源の部分最適ではなく、地域ごとに特色を出して地域全体での最適化を目指し、リピーターを増やしつつ、資源間の「線」をつないでいくことが肝要です。線をつないでいく過程の一例としては、ある特定の地域イベントへの参加者を、地域の特色ある飲食店や宿泊施設へ誘致することにより、人流の間に新たな観光資源を創出することが挙げられます。このように、各観光資源・イベントの間に人流を生み出して、企業や自治体を巻き込んでいくことがエコシステム形成のポイントであると考えます。
これまで述べてきた「人流」を起点とすると、地域経済エコシステムの戦略は、対象地域・対象観光客の2軸から大きく4つに分けられます。
① 「点ごとの集客」:主要地域の観光資源の宣伝
それぞれの観光資源が、新規の顧客に対して独立して宣伝を行い、集客を試みていることを意味します。各地域の観光資源が連携していないため、主要な観光資源が近傍にある場合を除いて人流の形成は限定的です。
② 「点ごとの価値の最大化」:リピーターに対して、前回の行動データなどをもとに新しい魅力の提案
観光客への付加価値提供を主目的に、顧客の属性、閲覧したメディア、訪問した地域・店舗・レストランなど観光客個人のデータを元に、地域の新しい魅力をパーソナライズして提案していくことが該当します。例えば、アプリを活用して検索ワードのデータを蓄積し、個人の嗜好を分析した上でリピートを訴求できる観光コースや宿を提案することが考えられます。また、AI(人工知能)を活用して混雑を予測したり、リアルタイムの人流データから、混雑していないエリアに誘導することで新たな魅力を伝えたりすることも想定されます。
③ 「点と点を結ぶ線の実体化」:主要地域間の移動の合間に立ち寄る魅力の創出
サービスプロバイダーの提供サービスを組み合わせ、付加価値を高めるために、位置情報などの人流データや、観光資源の検索ランキング、観光客の滞在日数を分析し、近傍の観光資源との連携を構築していくことが該当します。例えば、魅力がありながらも日帰りがメインの観光地の近傍に飲食や宿泊施設が豊富にある観光地が存在する場合に、昼間は観光地で楽しみ、近傍の地域で宿泊するといった魅力のあるコースを提案することが考えられます。また、人流データを元に、不足している施設や交通網、店舗の拡充を行うことも該当します。
このように、特定の目的を持って訪れた観光客の潜在ニーズを探り、観光地の新しい魅力を提案することがこの戦略の肝となります。
④ 「線自体の価値の最大化」:主要地域/既存観光客の行動データをもとに、ロイヤルカスタマーへ新たな体験価値を提供
上記②と③を統合することが該当します。すなわち、個人データを収集し、サービスプロバイダーとデータを共有することで、パーソナライズされたサービスを広域にわたって観光客に提供し、ロイヤルカスタマーへ育成していくということです。
例えば、非日常を求める観光客に加え、ワーケーションという、日常生活の一環として地域を訪れる顧客をターゲットに含めることで、観光業界以外のプレイヤーの参画も想定されます。
地域経済エコシステムとは、行政や企業などのさまざまなプレイヤーがデジタルやデータを活用し、地域の魅力を発信することで地域経済・地域コミュニティを活性化するエコシステムです。前編・後編の2回にわたり解説します。
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スマートホーム・エコシステムとは、IoTなどのデジタルを駆使し、個々のライフスタイルに応じたサービスを提供することで、より便利・安全・快適な暮らしを実現するエコシステムです。前編・後編の2回にわたり解説します。
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