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国内外の法制度改正などにより、税務申告対応の複雑化・高度化が見込まれています。
企業においては、従前からの法令遵守としての納税申告対応に加え、さまざまなステークホルダーへの税務情報開示など、新たな社会的責務に対応することが求められています。
こうした対応に向けて、税務テクノロジーの活用を含めた体制整備や税務人材のリソース確保など、企業の税務部門は早期に検討を行う必要があります。
シリーズ第4回は事業会社の税務部門で経験を有するPwC税理士法人の伊藤亮太より、企業内の税務部門担当者が目指すべき役割と、それを果たす上でのアクションプランの重要性を解説します。
「貴社税務部門のミッションは?」と、問われた際に思い浮かぶのは、コンプライアンスの土台である申告業務や調査対応でしょうか。それとも、企業価値の向上のための税務プランニングや税務コスト削減でしょうか。事業会社において税務部門の責任者を務めた経験を有する筆者は、当時の部下から、「申告業務の品質向上のために、税務部門の責任者として、もっと関心を持ってほしい」と真剣に苦言を呈されたことがあります。一方で、経営陣からは、「われわれは営利目的企業の一員である。税務といえども、もっと事業業績への貢献を意識すべきではないか」と諭されることも経験しました。
また、税務調査において、いざ、調査官を前に大量の税法の論点と格闘している場面と、経営陣を前に係数の説明に追われる場面では、ついつい相容れない目標に晒されている感覚を抱いたこともあります。こうした場面は、本来は二者択一の問題とは言えません。
企業の税務責任者にとっての重大な役割とは何かを考えるにあたって、一度「税務部門のアクションプラン」を策定してみてはいかがでしょうか。
企業には必ず経営目標としての事業計画があります。税務版では、税務申告対応などの定型業務のみならず、海外含めたガバナンス、移転価格、BEPS対応、さらには外部公表などを網羅しまとめあげる作業になります。
税務部門の計画が、全社の重要施策との関係性において、進むべき方向性という点で同期していればしているほど社内での説得力は増し、部門の存在感も増します。アクションプランでは税務部門の現状とあるべき姿とのギャップを埋めるため、税務対応プロセスを可能な限り透明化し、トップマネジメントとのコミュニケーションツールとして頻繁に様々な場面で活用できるようにしましょう。
特に重要なポイントは、各アクションの優先順位について、トップマネジメントと合意をとりつけておくことです。そうすれば、予算などの制約や突発的な優先課題が発生した際に、透明度を維持しつつ、惑うことなく優先度が低い項目を翌年度に予算ごとスライドさせるといった運用も可能になります。また、トップマネジメントと既に合意形成されている税務部門の計画を各担当者レベルのアクション項目に分解し、割り当てていくことはとても有用です。会社にとって重要かつ優先的な課題が自らの目標と一体化しているという実感が得られることは、より深い当事者意識と責任の共有につながります。
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