
税務ガバナンス対応支援コラム―企業の税務オペレーションを円滑に進めるためのヒント 第11回:税務部門の役割と他部門との連携―期待される責任範囲の明確化―
昨今の国際情勢において、関税への備えを企業側も強化することが求められています。主に上場企業や多国籍企業の関税管理における業務上のポイントや税務部門の職掌範囲、調査への対応などについて解説します。
2024-12-25
国境を越えた取引が常態化しているグローバル経済下において、各国通貨の為替レートの変動が企業収益に与える影響は、その取引規模や種類に比例して大きく、また対応が複雑になる傾向にあります。世界各国で事業を展開する多国籍企業にとっては、移転価格ポリシーに基づきグループ会社間の取引価格を設定していても、自国通貨や機能通貨と異なる通貨で取引をしている場合(または機能通貨と取引通貨が同じ場合においても、為替リスクを負担している場合)、急激な為替変動により関連会社間の収益バランスが崩れ、意図せずして移転価格ポリシーと不整合な利益配分に陥った結果、税務当局から思わぬ指摘を受ける可能性があります。
多国籍企業におけるグループ会社間取引は、第三者間の取引とは異なり、グループの全体最適の観点から取引価格を設定することが理論的に可能です。各国の税務当局は、自国の課税所得が損なわれることを防ぐため、グループ会社間の取引価格が独立第三者間であった場合に成立したであろう取引価格(いわゆる、独立企業間価格)で価格設定をすることを求め、移転価格制度を導入し、執行しています。
移転価格税制の執行においては、グループ間取引に関連して企業が稼得する利益水準を以って取引価格の妥当性を検証することが多い傾向にあります。この特徴により、特定の通貨による取引価格が一定だとしても、為替変動が要因となって為替リスクを負担する法人の利益が増減した結果、移転価格上の問題に発展することがあります。急激な為替変動下において対応が後手にならないよう、検証取引における為替リスクの負担関係を整理し、自社のポリシーとして為替調整方法を事前に検討しておくことが、その後の対応を見誤らないためにも大変重要です。
2022年に急速な円安が進行して以来、2024年11月時点においても円安傾向が継続する中、取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method、以下「TNMM」)を用いて日本法人または取引相手となる国外関連者のいずれかの利益率を検証する場合において、検証法人の高い利益率が日本または相手国側の移転価格問題となり、対応に苦慮するケースが見受けられます。そこで、為替リスクのうち移転価格分析に影響を与える為替リスクを整理したうえで、その調整方法と留意点を以下に概説します。なお、本稿では、日系多国籍企業の海外子会社をTNMMで検証することを前提として説明します。
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