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2022-11-16
空間情報の活用という観点から歴史を振り返ってみると、1970年代から使われ始めた地理情報システム(GIS)は1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに有用性が認識され、関連する地理空間情報および周辺システムの整備が推進されてきました。また、日本政府は2007年に制定された地理空間情報活用推進基本法に基づき、地理空間情報の高度な分析により情報を的確に入手する「地理空間情報高度活用社会(G空間社会)」の実現に向けてさまざまな施策を展開し、地理空間情報の活用は段階的に進化を遂げてきました。
昨今のコロナ禍に伴う消費者のライフスタイルおよびワークスタイルのパラダイムシフト、物流関連の情報流通量の飛躍的な増大、地球環境問題や自然災害の深刻化といった社会課題への対応策として、今後は地理空間情報の活用の可能性を最大化させる取り組みが進展すると考えられます。
地理空間情報の活用事例を振り返ってみると、いくつかの観点から進化の変遷をとらえることができます。例えばユースケースの観点からは、防災・災害対応、公共施設の保全などといった公共性の高い限られたユースケースから、公共交通の運行効率化・利便性の向上を目的としたユースケース、さらには消費者の向けのスマートフォンを起点とした位置情報サービス(経路案内やエンターテインメントなど)といった事業採算性が重視されるユースケースにまで活用が広がっています。データを活用する方式・手法の観点からも、現状の可視化、データの集計および分析、シミューレーション、最適化というステップが捉えられ、活用データの形式が2次元から3次元へと進化することが想定できます。データの鮮度という観点からも、初回登録のまま更新されない状態からリアルタイム更新という段階に高度化することが考えられます。
このように地理空間情報の活用が進化するほど、それぞれの地理空間情報が個別に活用されていた状況から、地理空間情報同士を頻繁に連携させる状況へとシフトすることが想定されます。この結果、3次元空間上の特定の位置をキーとした地理空間情報を連携させる仕組みに対するニーズが拡大することも見込まれます。
3次元空間情報基盤による地理空間情報の連携機会が拡大することで、ハザードマップのように複数の地理空間情報を重ね合わせて1つのUI上で可視化する際に集計の手間が減るだけでなく、インフラの点検や工事のように可視化された情報を別のシステムやデバイスと連携させることで、処理の自動化・作業品質を向上させることも期待できます。さらにその先には、今までにないUIデザインを有するエンターテイメントのコンテンツなど、新しい付加価値提供につながるサービスにより新たな市場の形成につながる可能性があると考えます。
一方で、3次元空間情報を活用するに際しては、データの作成者・提供者・更新者、サービスプロバイダ、データ連携基盤の運用者、サービス利用者といったさまざまなステークホルダーの関与が想定されます。それだけに、持続的な活用を実現するエコシステムの形成は一筋縄ではいかないものです。ユースケースごとに異なるエコシステムを構築するにあたっては、各種のデータ、システム基盤などにおいてどの程度一般にオープンにしていくのかを適切に見極めることが重要となります。3次元空間情報を活用する現場においては、このエコシステムのあるべき姿をステークホルダーの間で共有することが重要であり、実証の取り組みなどを通じてトライ・アンド・エラーを繰り返しながらこのエコシステムを修正することが求められます。同時に、目指すべきエコシステムの実現に向け、下図に示したような課題に一つひとつ対応しながら3次元空間情報の活用ユースケースを確立していくことが肝要であると考えます。