ドローンの運航における3次元空間情報の必要性

2023-02-20

ドローンの運行管理で扱われる日本発の国際標準

国内地図情報大手企業を中心としたコンソーシアムが2021年9月に、ドローンの運航管理におけるデータモデルの国際標準として、「ISO23629-7」を取得しました。

このデータモデルでは、ドローンの運航に必要な情報を定義しており、その内訳として「動的データ」「仮想データ」「障害物情報」「地図情報」4つを挙げています(図3参照)。

図3:地理空間情報データモデル

データ種類

高度

データ構成

動的データ

0~150m

・気象情報
・他の航空機の位置情報 など

仮想データ

0~150m

・飛行禁止エリア情報
・ドローン飛行ルート情報 など

障害物情報

0~100m

・障害物情報 など

地図情報

0m~

・地形情報
・離着陸エリア情報 など

参考:NEDO ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト

この国際標準は、3次元空間情報を扱うベンダーがシステム開発を進めるにあたり、共通の指針となることが期待されます。

3次元空間情報を共有することの必要性

なぜ3次元空間情報の共有が重要なのでしょうか。大きな要因として、外部の3次元空間情報を利用することでドローンサービサーはコストカット効果を期待できるということが挙げられます。

ドローンを運航する上で必要な情報の中でも、現地でのセンシングが必要となる気象情報や、空中の障害物に関する情報などは、特に情報取得のコストが高いと考えられます。

そのような情報を一括して収集・提供するデータプロバイダーには需要があり、ドローンサービサー各社は自社で1から情報を収集するのではなく、外部のデータプロバイダーから購入するという仕組みになることが予想されます。このようなドローンサービサーへ情報を提供する役割は、「SDSP:Supplemental Data Service Provider」と呼ばれています。

図4:ドローン運航に係るアーキテクチャ

また、ドローンサービサーは外部から共有された情報を活用するとともに、運航中に収集した情報を外部に向けて共有する、すなわちSDSPの役割も併せて担うことが可能になります。
データ間をつなぐキーとなる情報があれば、容易に複数種のデータや、複数のデータプロバイダーから取得したデータ同士の組み合わせが可能になり、より効率的な運用ができるようになります。

3次元空間情報インフラの活用

デジタル庁および経済産業省は2022年度から3次元空間情報を管理するデジタルインフラの整備に注力しており、統一的な3次元空間情報のキーとなる規則を「空間ID」と呼んでいます。

この取り組みにおいては、ドローンを含めた自律移動モビリティ全般だけでなく、都市計画や生活支援などその他幅広いユースケースに向けた活用が掲げられており、簡易かつ軽量に特定の空間を識別する符号が存在することで、ITシステム間の連携や自律移動ロボットの情報処理速度向上に寄与するなどのメリットがあるとしています。
この3次元空間情報インフラによって、3次元空間情報の提供者が容易に参入できるようになれば、結果としてドローンサービサーの情報取得コストを削減する効果が期待できます。

ドローンサービサーは、将来的に完成する3次元空間情報のインフラを推定し、自社のシステムで活用していくための検討を早い段階から行っておくことで、低コストで競争力のあるビジネスを実現できると考えられます。その第一歩として、「空間ID」に関する動向をウォッチすることを推奨します。

執筆者

岡澤 佳祐

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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