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アバター(Avatar)とはサンスクリット語で「化身」という意味の「アヴァターラ」を語源とし、メタバースやゲーム、動画配信などのシステム内におけるユーザーの分身を意味します。メタバースにおいて、アバターは人や人に近い形をした3Dデータである場合が多く、ユーザーは仮想空間の中をアバターとして動き回ったり、作業を行なったり、他ユーザーのアバターとコミュニケーションを取ったりすることができます。
VRを利用してアバターを操作すると、ユーザーはアバターの1人称視点でその空間を見ることができ、頭や手の動きはそのままアバターの動きに反映されます。また、メタバースの中で他ユーザーと会話をすると、発言したユーザーの声はそのアバターの位置から聞こえ、身振りや手振り、聞いている人の顔の向きや頷きなども見ることができ、実際にその空間にいる感覚でコミュニケーションをとることができます。
リモートワークにおいてビデオ通話が普及しましたが、メタバースにおけるアバターを介したコミュニケーションには視覚的、感覚的な情報量の多さや会話のしやすさに大きな優位性があり、昨今メタバースが注目される要因の1つともなっています。
アバター間でのコミュニケーションとビデオ通話では大きな差がある
特段のルールがない場合、アバターはユーザー本人の外観に似せて作る場合もあれば、全く別の見た目や、擬人化された動物やキャラクターを選ぶ場合も多く、ユーザーが自由に選ぶことができます。近年は多くの企業がメタバースのビジネス活用を検討しているため、アバターの姿で仕事をする人たちも現れるでしょう。例えば窓口業務などでは、企業が定めた同じアバターを使い、声質も音声変換で統一する企業も現れるかもしれません。企業が従業員の外観をコントロールしているようにも聞こえますが、ユーザーが仕事をする上で、性別や年齢、人種、外観的特徴による不利益を受けることがなくなる、という側面も見出すことができます。
顧客の目線から考えてみると、毎回同じ姿のアバターに対応してもらっていても、対応している従業員が別の人であることは当たり前になります。一方で特定の担当者と継続して取引をする営業や開発などその他多くの業務においては、従業員はアバターを自身のアイデンティティの1つとし、同じアバターを長期間用いることが予想されます。
アバターによってユーザーは性別、年齢、外観的特徴による不利益から解放される。
アバターの外観からは同じ担当者かどうかわからない、という例を挙げましたが、そもそも相手が人間であるかもわからない、ということも起こりえます。近年顧客対応におけるチャットボットなどの対話AIは進化しており、感情を持っているように振る舞ったり、共感を行うように振る舞ったりするAIも実現してきています。表情を表せる映像を組み合わせた「デジタルヒューマン」と呼ばれるAIアバターも登場しており、接客や公共サービス、医療などの分野での活用が見込まれています。現在のAIによる音声の質は、それが人ではなくAIによって生成されていると容易に判別できるレベルですが、今後の技術の進歩によりその区別がつかなくなる未来が訪れるでしょう。
人とAIが同じアバターの中で入れ替わるケースも考えられます。ユーザーが一時的にアバターから抜けている間、AIが本人の代わりにタスクを継続するようなケースです。これにより複数のアバターを操作して効率的にマルチタスクを行うことも可能になります。
窓口業務のようなケースにおいては、対応のレベルが顧客の要求レベルを下回らない場合、会話の相手が人間なのかAIなのかは大きな問題にならないかもしれません。しかしながら担当者と関係を構築していく類の業務や、ビジネス以外でもSNSのような、よりパーソナルなコミュニケーションにおいては、人かAIかはとても重要なポイントです。
メタバースの種類や特性によっては、AIが操作している時にはアバターの3Dデータに変化が起きる、などの仕組みやルール作りが必要となるでしょう。
メタバースはコミュニケーションや労働の形を変化させ、社会を大きく変化させる可能性を持っています。多くの人がそこで過ごすようになると、アバターはその人のアイデンティティの一部となっていくでしょう。一方で、上述したような、これまで社会に存在しなかったさまざまな課題も発生してきます。PwCではメタバースやアバターを社会実装していく上での課題と、求められるルールや仕組みについて引き続き考察を行っていきます。
藤本 真弘
マネージャー, PwCコンサルティング合同会社