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2022-04-14
コロナ禍を経て、大きな変化が予想されるエンタテイメント&メディア(E&M)業界。PwCのプロフェッショナルは、クライアントと一緒に実現したい未来を議論し、その実現に貢献していきたいという熱い想いを抱いています。本連載ではこうしたプロフェッショナルが、E&Mにかける情熱や想い、コロナ禍やテクノロジーの進展で大きな変化を遂げるE&M業界の展望などについて語ります。
インタビュー企画の第1回は、若手コンサルタントの冨重奈々が、エンタテイメント企業の価値創出支援に取り組むディレクターの重竹誠に、日本のエンタテイメントと業界を取り巻く状況の変遷や、企業の支援を通して実現したいことについての想いを聞きました。
(本文中敬称略)
登壇者
PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
重竹 誠
インタビュアー
PwCコンサルティング合同会社
アソシエイト
冨重 奈々
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 重竹 誠
冨重:
エンタテイメント企業向けのコンサルティングでは、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?
重竹:
昨今の日本のエンタテイメント企業を取り巻く環境では、ファンへコンテンツを提供するまでのバリューチェーンそのものが変化しています。
そうした変化の中で企業価値を高めるために必要な、さまざまなアジェンダに関する支援を行っています。
デジタル化に関連して、データを活用した経営や業務の高度化やコンテンツのヒット率の予測といった「デジタライゼーション&トランスフォーメーション」のほか、デジタル空間での新たな体験の提供や、デジタルコンテンツを世界中の潜在ファンに届けたり、ユーザーやファンとつながったりする新たな仕組みづくりなどを支援しています。
複雑化するバリューチェーンの中で、エンタテイメント企業単独でのインパクトの創生や課題解決が難しくなっていることから、共同プラットフォームの開発や企業間連携・M&Aを通じたデジタルエコシステム形成も重要です。さらに、事業の成長に向けては、海外進出や、フィジカル・デジタルのコンテンツの組み合わせによる新たな価値の提供についても検討が必要です。
同時に、近年あらゆる企業に共通する課題ではありますが、グローバルガバナンスや地政学リスク、非財務・財務リスクへの対応、サステナビリティに関する取り組みなどの計画と実行に対する支援も求められます。
PwCコンサルティングでは、幅広い業界や課題に対する知見を活かして、こうした多岐にわたる領域でエンタテイメント企業の価値向上をサポートしています。
冨重:
日本のエンタテイメント企業を取り巻く環境は大きく変化しています。重竹さんにとってのエンタテイメントはどのようなものでしょうか。
重竹:
エンタテイメントは、人生の中で「余暇を楽しみ、仲間も増やせる。その結果、幸福感を得ることができる」ものです。
アニメや映画、音楽、スポーツ観戦、ゲーム、玩具、お笑い、雑誌や漫画、テーマパークなどは小さなころからいつも私のそばにあり、楽しさや感動を届けてくれました。これが私にとってのエンタテイメントの原点です。
コンサルタントとしてエンタテイメント業界や企業の価値創出を支援したいと強く考えるようになったのは、以前、アジアのプロジェクトで香港に出張していた際のできごとがきっかけでした。
クライアントやPwC香港のメンバーとともに、日本の秋葉原のような街に行き、ある店に入ると、日本の玩具・カード類がショーケースの中にずらりと並んでいました。その様子を見て誇らしく思っていたところ、一人の少年がショーケースにかじり付いているのが目についたのです。
しばらく目で追っていたところ、父親らしき男性に日本のおもちゃをせがみ、買ってもらって満面の笑みで店を出ていきました。少年の姿を見ていると、私が子どもの頃、大流行していたテレビゲームやプラモデルに夢中になっていた思い出が蘇りました。そして、日本のコンテンツをフィジカル・デジタルを問わずリアルタイムにユーザーへと届けられれば、世界中のファンをもっと幸せにできるのではないかと感じたのです。
冨重:
世界中のファンに日本のコンテンツをリアルタイムに届ける上で、新しいテクノロジーはどのような変化をもたらすと思われますか。
重竹:
人々がエンタテイメントに触れるまでのプロセスやエンタテイメントの選び方に変化をもたらすと考えます。
現在は仕事や授業を終えて一息ついた時、スマートフォンやタブレットを用いてVOD(Video on Demand)サービスで映画やドラマを見たり、動画共有プラットフォームでショート動画を見たり、SNSで友人に連絡して一緒にゲームを楽しんだりするなど、自分自身でエンタテイメントを選び、コンテンツを楽しんでいる方が多いのではないかと思います。
これが2025年から2030年ごろまでには、自分自身でエンタテイメントを選択しなくても、自動的に「楽しみ」が実現される世界になっているのではないかと推測しています。
冨重:
具体的には、どのようにエンタテイメントがファンに届けられるのでしょうか。
重竹:
ウェアラブルデバイス上のAIが個々人のスケジュールや体調・ストレスを把握し、その日の一人ひとりに合った体験を提供してくれるでしょう。
例えば、友人とゲームをプレイしたくなる周期をAIが学習し、ゲームをする日時をレコメンド、SNS経由で自動的に友人にコンタクトを取り、ゲームを楽しめる場を作ってくれるのです。つまり「感情コンピューティング」が高度化され、AIがリアルタイムで一人ひとりに合った余暇の楽しみ方を提案・実現してくれるようになるのではないかと考えています。また、同じゲームでもそれぞれのユーザーに合ったストーリーが展開されるようになるかもしれません。
PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 冨重 奈々
冨重:
そのような世界を実現するにあたって、日本のエンタテイメント業界はどのようなポイントを重視すべきでしょうか。
重竹:
「Business(経営・事業)、Experience(ユーザー・ファンの体験)、Technology(テクノロジーの活用)を検討する順番」「グローバル軸でのビジネス戦略の策定」「自社の文化や強みを発揮するタイミングと環境」。この3つが重視すべきポイントです。
まず一つ目の「Business、Experience、Technologyを検討する順番」について説明します。多くの企業では、夏頃から翌年の事業計画を立て始めます。そして、予算や組織、担当部署・担当者を秋から冬にかけて熟考するケースが多いようです。こうした計画の立て方だと、Businessの次にExperience、そしてTechnologyの順で考えてしまいがちです。
しかし、バリューチェーン自体が大きく変化している中では、Experience、Technology、Businessを同時に考えなければなりません。また、コンテンツの企画から開発・ローンチ(発表)までの中長期的なライフサイクルと、年度ごとの企業経営とを融合させる仕組みを形成することも重要ではないでしょうか。
次の「グローバル軸でのビジネス戦略の策定」については、以前から言われていることですが、日本のエンタテイメント企業には、コンテンツや事業が国内でヒットしてから、海外に展開し始める傾向が少なからずありました。しかし、今はゲームやコンテンツなどによっては世界同時にリリースするケースもあります。今後は、あらゆるコンテンツや事業においてグローバルでExperienceを捉え、そのうちの一つの国、地域として日本や他国を位置づけることが肝要です。
昨今のテレビドラマや映画における韓国企業のグローバル展開は大変参考になります。彼らは、ユーザーと接点を持ち世界中の人々にエンタテイメントを提供しているOTT(Over The Top)プレーヤーと呼ばれる企業とのWin-Winの関係構築が素早く、上手です。
最後は「自社の文化や強みを発揮するタイミングと環境」です。日本のクリエイターは、多くの分野で世界トップレベルにあると言われます。その魅力を最大限に発揮するためには、タイミングと環境を最適化することが重要です。
タイミングとは、既存事業のコンテンツにフォーカスしつつ、3~4年後のExperienceを見越して、重要と思われる領域に早い段階でクリエイターをシフトさせ、コンテンツ制作の準備を進めることです。つまり、残すべき文化や強みと、変えるべきことの見極めが必要です。特にエンタテイメント企業のコンテンツのライフサイクルは単年では語れないからこそ、このような考え方が重要になってくると思います。
自社の強みだけで世界市場で戦っていけない場合、エコシステムの形成や大規模なM&Aによって競争力を強化することが必須です。テクノロジーの進化によりデジタル空間はますますボーダレスになっていきます。そういった状況下では、企業の文化や強みを発揮できる体制を早期に確立することが重要なポイントとなります。
冨重:
最後になりますが、重竹さんはエンタテインメント企業のコンサルティングを通し、社会において何を実現したいと考えていますか。
重竹:
私の夢は「日本のエンタテイメントやコンテンツが人々の余暇をより充実させ、世界中の人々がもっと幸せな人生を送れるようになること」です。その結果、日本のエンタテイメント企業の収益も向上し、そこに関わるディレクターやクリエイター、社員といった方々やさまざまなステークホルダーも、今まで以上に幸せになれるはずです。
今日までたくさんのエンタテイメント業界の方々とお話しさせていただきましたが、その誰もが情熱と夢をもって事業に携わっていると実感しました。私もエンタテイメント業界に携わる一人として、情熱と夢をもって、この業界の方々と一緒に世界中のファンを幸せにしていきたいと思っています。