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コロナ禍を経て、大きな変化が予想されるエンタテイメント&メディア(E&M)業界。PwCのプロフェッショナルは、クライアントと一緒に実現したい未来を議論し、その実現に貢献していきたいという熱い想いを抱いています。
インタビュー企画の第6回に登場するのは、エンタテイメント業界での経験を生かして、日本のコンテンツ産業を盛り上げ、業界のビジネス構造を変革しようという志を持つPwCコンサルティング合同会社ディレクターの岩崎明彦です。エンタテイメント業界の現状や今後の可能性、PwCだからこそ提供できる価値について、同じくE&Mを専門とするアソシエイトの齋藤智彰が聞きました。
登壇者
PwCコンサルティング合同会社
TMT E&M ディレクター
岩崎 明彦
インタビュアー
PwCコンサルティング合同会社
TMT E&M アソシエイト
齋藤 智彰
PwCコンサルティング合同会社 TMT E&M ディレクター 岩崎 明彦
齋藤:
岩崎さんはエンタテイメント業界を俯瞰できる視点を持ち、業界の構造を変革したいという立場でコンサルティング業務に従事されています。そのような視点をどのように獲得されたのかも含め、まずはこれまでのキャリアを教えてください。
岩崎:
キャリアのスタートは、米国系投資銀行での企業のM&Aアドバイザリー業務です。さまざまな国を股にかけるようなダイナミックなディールに関わることができて非常にエキサイティングで楽しい日々を過ごせました。ただ、私は元々エンタテイメントが好きで、コンテンツや特許権といった知的財産関連への仕事に対する興味を強く持っていたため、コンテンツへの投資を行っている会社に転職をしました。
当時から「日本のコンテンツ産業を応援し、盛り上げること」を自分のミッションとして掲げていました。特に、著作権を持てないようなコンテンツ製作会社に投資することで、弱い立場からの脱却を支援し、業界のビジネス構造を変革したいという考えがありました。
このコンテンツ投資会社でも一定の成果は残せたのですが、やはり感じたのが「業界構造の壁の高さ」でした。そこで次のチャレンジとして選んだのが、大手のハリウッド系エンタテイメント会社です。誰もが知っている強力なIPを保有する会社だったので、日本のコンテンツメディア業界を変えるようなインパクトを与えられるのではないかと思ったのが理由です。言わば「黒船」的なアプローチですね。この会社では、新しい放送局やデジタル商品といった新規事業を立ち上げ、世界最大級のOTT(Over The Top:インターネットを介したコンテンツ配信サービスの総称)事業の立ち上げも担当しました。
齋藤:
コンサルタントとしてはかなり珍しい経験の持ち主だと思います。エンタテイメント企業から、コンサルティング業界への転身を考えたのはなぜですか。
岩崎:
OTT事業を立ち上げる中で私が感じたのは、メディア業界の激変、コンテンツ産業の海外展開といった大きなチャンスが到来しているという点です。私はキャリアのスタート時点でM&Aアドバイザリー業務にも携わった経験がありますし、その後はOTT事業の立ち上げも担当し、エンタテイメント業界の仕組みについて深く理解しているという自負がありました。それならば「黒船」としてではなく、私自身がコンサルタントという立場でこれまでの経験を生かすことで業界のビジネス構造変革に役立てるのではないか、と考えたことが転身を決断した理由です。
齋藤:
活躍の場としてPwCコンサルティング合同会社を選んだ決め手はどのような点でしたか。また、現在どのような取り組みをしているか教えてください。
岩崎:
いろいろと検討した結果、数あるコンサルティング会社の中でもブランド力が高い点、バランスのとれた人格者のリーダーが多いと感じた点、そして他部署とコラボレーションしながらプロジェクトを進めていくカルチャーに魅力を感じました。エンタテイメント業界を大きく変革するためには、ブランド力も強力なリーダーも、社内協働も必須条件だと思ったからです。
現在は、大手メディア企業がコンテンツIPを強化するという戦略に基づき実行するM&Aや、日本を代表するコンテンツ製作会社のグローバル展開を支援しています。
齋藤:
業界変革のためには越えるべきハードルが多々あると思います。日本のエンタテイメント産業に対する岩崎さんの分析やこれから進むべき方向についてお聞きしていきますが、まずはコンテンツを作る側、つまりソフト面から見ていきたいと思います。
岩崎さんは前職でOTT事業の立ち上げを担当されましたが、OTTの台頭は海外コンテンツへのアクセスを容易にした面がありますよね。また、先ほどコンテンツ産業の海外展開にチャンスがあるとのお話もありました。岩崎さんのコンテンツ業界の現状分析と、今後の見立てを教えてください。
岩崎:
日本のコンテンツにはユニークで質の高いものが多く、そういう意味では大きなポテンシャルがあると思っています。実際、海外にもファンが多いことは知られていますが、作り手側はまだまだ国内消費に目が向いている状態です。今後、グローバル消費を前提にビジネスの仕組みを転換することで、日本のコンテンツ業界はさらに発展できると考えています。
齋藤:
グローバル消費への転換を進めるうえで、どのような点がポイントになりますか。
岩崎:
大きく3つあります。1つ目はコンテンツの「製作」、2つ目はコンテンツの「流通」、3つ目は製作や流通を支える「ファイナンス」です。
1つ目の「製作」については、グローバルで受け入れられるコンテンツ作りのために、「マーケットインの発想」を取り入れるべきだと考えます。また、クオリティをさらに向上させるために日本コンテンツの強みである「職人芸的」なスタークリエイターの力を軸としながらも、ハリウッドや韓国において成功しているチーム制や分業制にも学び、「日本ならではの勝ち筋」を見出していく必要があると思います。
2つ目の「流通」については、まさにOTTプレーヤーの台頭で、コンテンツをグローバル展開できる手法が整ってきています。ただ、一方でOTTだけに頼る構造にはリスクがあります。さらなる成長を目指すのであれば、自前のグローバル流通戦略を主体的に立案することがポイントになってくると思います。
3つ目の「ファイナンス」については、投資判断への透明性を上げていくことが重要です。国内だけなら既存の信頼関係だけでも資金調達は可能ですが、海外や異業種からの投資を受けるためには収支や制作経費などを明確化して、経営管理の基盤を強化する必要があると思います。
PwCコンサルティング合同会社 TMT E&M アソシエイト 齋藤 智彰
齋藤:
続いてコンテンツの配信事業、つまりハード面ですが、プラットフォームのコンテンツ配信事業であるOTTを立ち上げた経験のある岩崎さんは日本の配信プラットフォームの現状や今後の方向性をどう見ていますか。
岩崎:
従来、日本のコンテンツ配信は放送業界が担ってきましたが、OTTや動画配信サービスの普及でこれまでどおりのビジネスでは成長し続けることが難しくなっています。その中で政府(総務省)が「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」を始めるなど、放送業界にも新たな動きが出てきています。OTTプラットフォームも数多くありますが、確固たる地位を確立できているのは一握りに過ぎません。
世界に目を向けても、OTTは飽和状態となり、市場規模の伸びが鈍化してきています。これは逆風にも見えるのですが、実は日本のエンタテイメント業界にとってはチャンスに転換できる状況だと思います。今後は世界的にコンテンツ配信事業の業界再編が起こる可能性が高く、日本の既存メディアの統廃合やOTTのM&Aなど、戦略的に構造を見直したり長期的な成長計画を練ったりすることで、存在感を高めていけるのではないかと期待しています。
齋藤:
エンタテイメント業界のトレンドとして、生成AIをどう見るかというのも重要な観点です。コンテンツのファンにとっては、作り手のバックグラウンドや制作過程もコンテンツの一部ですが、生成AIではそうした要素が抜け落ちてしまうという面もありますよね。こうした問題点や懸念については、すでに活発な議論がなされていますが、生成AIの作るコンテンツについて、岩崎さんのお考えをお聞かせください。
岩崎:
生成AIがエンタテイメント業界を大きく変動させる新技術であることは、間違いありません。私は今後、「生成AIを中心とした新技術で作られるコンテンツ」と「人手を贅沢に費やして作られるコンテンツ」の二極化が進むと予測しています。どちらが良い悪いということではなく、両者は見る人に与える価値が違ってくるので、すみ分けが進むというイメージです。
齋藤:
コンテンツの表層だけを見ると、両者の間に大きな違いは感じられません。そう考えると、安価で大量生産できる生成AIに軍配が上がる可能性があるのではないでしょうか。
岩崎:
そういうシナリオも当然あり得ますし、実際に他国ではクリエイターの解雇といった事態が起き始めています。でも、私は日本のクリエイターの高い創造性とそこに価値を感じるファンの関係を信じています。テクノロジー台頭の流れは止まらないと思いますが、だからこそ「人のクリエイティビティが生かされたコンテンツ」が今後も生き残っていくような業界のあり方を、「エンタテイメントの力を信じる」コンサルタントとして考えていきたいと思います。
齋藤:
エンタテイメントの力を信じる、とのお話がありましたが、岩崎さんがそれほどまでにエンタテイメントを大事に考えているのはなぜでしょう。その想いをお聞かせください。
岩崎:
私がエンタテイメントの力を信じているのは、ロジカルな分析というよりは、感覚的な要素がかなりの部分を占めています。何よりもまず私自身、エンタテイメントコンテンツが好きですし、コンテンツを通じてワクワクしたり感動したりするのは素晴らしいことだと思っています。ましてや、自分が好きなものなら多くの人に伝えたいですよね。大学生時代、たまたまプロデビューしたてのビッグバンドと知り合う機会があり、応援したい気持ちから学園祭のライブツアーを企画したことがあります。当時と今と、スタンスは全く変わっていませんし、その積み重ねが現在のキャリア選択になっていると思います。
齋藤:
日本のコンテンツ産業を応援し、盛り上げたいという気持ちが一貫しているわけですね。最後に、今日のお話も踏まえ、PwCだからこそ提供できる価値についてお話しください。
岩崎:
PwCのE&Mの強みとしては、エンタテイメント業界出身者が多く在籍しており、コンテンツビジネス特有の難しさや、業界構造の課題感などに対する理解度が高いことが挙げられます。これからの日本のエンタテイメント業界が発展していくには、グローバル展開やM&Aなどを含め、したたかなビジネス戦略の視点が不可欠です。そういう意味では、エンタテイメントの知見を生かしながらビジネス面からの支援が可能なPwCは強力な伴走者になれるという確信があります。
私自身、大好きなこの業界を応援したいという気持ちがシンプルに強いので、コンテンツの作り手が優れた作品を生み出し、送り手が多くの視聴者を獲得し続けられるように、日本のエンタテイメント業界の発展に貢献していきたいと思います。