PwC Japanグループ エンタテイメント&メディア(E&M)プロフェッショナルに訊く

テクノロジーとアートの両輪で切り開くエンタテイメントの未来

  • 2024-02-13

コロナ禍を経て、大きな変化が予想されるエンタテイメント&メディア(E&M)業界。PwCのプロフェッショナルは、クライアントと一緒に議論し、その実現に貢献していきたいという熱い想いを抱いています。

インタビュー企画の第7回に登場するのは、EC事業者や広告制作会社などで経験を積み、最新テクノロジーやアートに造詣が深いPwCコンサルティング合同会社ディレクターの速水桃子。世界に誇れる日本のエンタテイメントを支援することでよりよい世の中をつくりたいと奔走する速水に、業界の課題や未来予測、PwCだからこそ提供できる価値について、同じくE&Mを専門とする同社アソシエイトの西郁哉が聞きました。

登壇者

PwCコンサルティング合同会社
TMT E&M ディレクター
速水 桃子

インタビュアー

PwCコンサルティング合同会社
TMT E&M アソシエイト
西 郁哉

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 速水 桃子

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 速水 桃子

重要なのはファンの人生を豊かにすること

西:
E&M業界を支援する中で、課題に感じていることをお聞かせください。

速水:
今の日本は世界中のどの国も経験したことがないような急激な人口減に直面しています。従来のマーケティングは、どうすればターゲットユーザーが購買に至るか、というファネルの考え方でしたが、そもそも人口が減ってしまえば、誰かから1回売上が上がっただけでは立ち行かなくなってしまいます。例えば映画や歌舞伎でも、なんとかして動員数やインプレッション数を増やす、という考え方のみでは、もはや限界が来ているのではないかと思うのです。

新規のお客様にご来場いただくための施策のみならず、お客様一人ひとりの人生に寄り添って良い経験をもたらし、ファンになってもらうことが大切ではないかと。その人の人生を豊かにするパートナーとして選ばれ、それに伴いビジネスが拡大していくというような考え方です。それが今の日本のE&M業界に必要なことであり、そういう仕組みをつくるためのご支援をしていきたいという気持ちが強いです。

西:
仕組みをつくる際に、最新テクノロジーの導入を検討する企業もあると思いますが、その点ではどのような課題がありますか。

速水:
テクノロジーは手に入れただけですべてが解決できるわけではなく、セキュリティや著作権、社内での運用方法など、クリアすべきさまざまな課題があります。クライアントが自社でテクノロジーの導入を行う際にそういった点で躓き、うまくいかずに資金を無駄にしてしまうケースが出てきています。

私たちの強みは、テクノロジーを利用した課題解決を常に行っている点です。それ故に、リスクを最小限に抑え、コストパフォーマンスよく事業に活かす方法を知っています。クライアントの状況と世界のトレンドを俯瞰し、私たちが持っている成功例の集合知と掛け合わせて、オーダーメイドの支援ができることこそが私たちの価値。道具を手に入れた後のよりよい世界を実現するためのプロフェッショナルなんです。

西:
実装した後の、あるべき姿をデザインするところまで伴走できるということですね。一方で、最新テクノロジーを取り入れることに対して、作り手側からの拒否反応のようなものがあることも想像できます。

速水:
特にデータ分析やAIなどのテクノロジーが足かせとなり、クリエイティビティを阻害すると思われてしまうことはよくあります。データより、クリエイターの経験と勘の方が信頼できる、ロジックがクリエイティブの自由度を下げる、というような考え方です。それも十分理解できるんですよね。作り手も受け手も人間ですから。

ただ、急速にデジタル化が進み、顧客体験としてもリアルとデジタルの融合が当たり前になった今、顧客を理解するにはどうしてもデータが必要です。デジタル上の行動データが、その人がどんな人で、何を求めているのかを教えてくれるのです。データを顧客理解のために使い、よい顧客体験としてお返しする。そうすることで、UXは心地よいものになっていくし、その体験を提供する企業はパートナーとして選ばれるようになる。だからテクノロジーは、「解像度の高い眼鏡」くらいに思ってもらえればいいかもしれません。クリエイティブとテクノロジーは、そのように両輪で動いていくものだと思っています。

PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 西 郁哉

PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 西 郁哉

アートとテクノロジーの力で世の中を良くしていきたい

西:
世界の体験が底上げされ、パーソナライズされていくデータを取り入れながらクリエイティブを作る時代に向けて、私たちが提供できるのはどのような価値ですか。

速水:
人を動かすインセンティブには心理的なものと経済的なものがあり、特に心理的なインセンティブを強力に支えるのがアートや文化だと思っています。

東京藝術大学の学長・日比野克彦氏は、「その物と鑑賞者との関係性をアートと呼ぶ」とあるインタビューでおっしゃっていました※1。アートはあなたが見たそこにある何かではなく、何かを見て心を動かされたこと自体を指すのだと。つまり体験はアートなんです。

アートというと、非常に取り扱いが難しいものだととらえられがちですが、関係性や体験というのはデザイン=「設計」できるものです。企業が相対している顧客との関係性を、どのような表現方法でどういったテクノロジーを使い、どう設計していくか。さまざまな条件を考慮して、デザインを考えていく伴走者となれるのが、コンサルタントとしての価値だと思います。

PwCでは産業知見を持ったコンサルタントとそれぞれの分野のスペシャリストがチームとなって課題解決に当たることができるので、そこが私たちの強みの一つだと思います。

西:
速水さんご自身の強みは、テクノロジーとアート、両方の知見を持ってビジネスをデザインできるところではないかと思いました。

速水:
そうですね。私は長年事業会社で働いてきたこともあり、事業をされるうえでの皆さんのお悩みが実感としてよく分かります。そして、私がかつて事業会社の中で行ってきたことと、今コンサルタントとしてクライアント企業に対してご支援していることの、内容は実は大きく変わりません。ただ、私たちは、事業会社の中では最重要と位置付けられるような規模の課題解決を日々行っており、その蓄積された知見は宝の山なのです。今は、クライアント企業やその事業に対する深い理解と知見を合わせ、より良いかたちで課題解決にあたっていきたいと思っています。

ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトの『ガリレイの生涯』という戯曲の中に、「科学の唯一の目的は、人間の生存条件の辛さを軽くすることにある」という台詞があります※2。科学と同様に、テクノロジーもアートも人が生きる上で辛い課題を解決するためにこそ使うべきではないでしょうか。テクノロジーやアートを武器として、世の中をより良くしていく。そんな志を持たれているE&M業界の皆様と、業界のビジネスの発展に力を注いでいきたいと思っています。

※1 アートって何?「それは鑑賞者の心の中に…」東京藝大・日比野克彦学部長に聞く(高校生新聞ONLINE、2020年2月27日)
※2 ベルトルト・ブレヒト『ガリレイの生涯』(岩淵達治・訳、岩波文庫)

主要メンバー

速水 桃子

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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