PwC Japanグループ エンタテイメント&メディア(E&M)プロフェッショナルに訊く

日本のエンタテイメントは資産。権利を守り、世界へ届ける

  • 2024-09-13

ストリーミング配信やウェブ漫画の普及に後押しされ、世界中で同時にエンタテイメントを楽しめるようになりつつあるこの時代に、日本のエンタテイメント&メディア(E&M)業界はどのようにコンテンツを海外に広げて行けるのか。PwCのプロフェッショナルは、クライアントと一緒に議論し、その実現に貢献していきたいという熱い想いを抱いています。

インタビュー企画の第8回に登場するのは、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)ディレクターの藤島太郎。前職でニューヨークでの通信サービスの立ち上げに携わり、2015年にPwCコンサルティングに入社。テクノロジーやテレコムのプロジェクトで経験を積み、現在はE&M業界の海外展開を中心とする幅広いコンサルティング業務に従事しています。「日本の資産であるエンタテイメントの権利を守る」という志を持つ藤島に、同じくE&Mを専門とする同社シニアアソシエイトの椿夏葉が、海外展開の現状や課題、PwCが提供できる価値について聞きました。

登壇者

PwCコンサルティング合同会社
TMT E&M ディレクター
藤島 太郎

インタビュアー

PwCコンサルティング合同会社
TMT E&M シニアアソシエイト
椿 夏葉

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 藤島 太郎

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 藤島 太郎

クリエイターの権利を守る環境をつくりたい

椿:
最近では内閣府や経済産業省などが日本のコンテンツビジネスに注目し、海外に進出する企業を支援する動きもありますが、藤島さんはいまどのようなことに関心を持っていますか。

藤島:
原作者が正当な利益を得られる環境づくりです。生成AIが登場し、IP(知的財産)の模倣が非常に容易になっています。例えば、絵がうまい人のキャラクターを模して描いたり、それを3D化して、フィギュアや玩具、極端に言えばゲームや動画まで作ったりすることもできます。

ただ、世界観やキャラクター設定を壊さない限りは、個人的には二次創作はそれ自体が悪いことではないと思っているんです。二次創作によって、原作者が想像しなかった効果が生まれたり、それがあることで世界に広がっていったりする側面もありますから。しかしそこには、原作者もしくは著作権者が正当な利益を得られる環境があるべきです。

どこで二次的に作られたのか、どう販売されたのかをしっかりトラッキングしていくことで、しかるべき人の元へ利益として還元されるという仕組みが、健全なクリエイティブのエコノミーを作るのではないかと思っています。

椿:
それには日本国内だけではなく、海外の事情も理解する必要がありますね。

藤島:
そうですね。海外の立法や法制度、場合によっては税制などもきちんと理解しておかなければなりません。

本来であればレベニューシェア(売り上げや利益の分配)があるべきものを、煩雑だからと完全に売り切りにしてしまったら、仮にそれが何億円売れたとしても、1回限りの利益になってしまいます。そこから先のあらゆる派生利益に関しては、日本の企業やクリエイターの元に入らなくなってしまうのです。

実際にどのような売り方をするかは各企業のビジネス判断ですが、こうした仕組みを企業やクリエイターがしっかり理解することによって、適正なビジネスを海外で行っていけるようになると思います。それは私がE&M業界のコンサルティングを生業とする身において、大切にしていることです。

特に数兆円のビジネス規模になると、1人の天才がものをつくるだけでみんながハッピーになれるわけではありません。我々のように世界のビジネス事情に精通し、企業・クリエイターの権利をビジネスの側面から守れる・つくれる存在が必要だと思うんです。

椿:
日本には10年、20年続くような人気の漫画やアニメがある一方で、現在は、作品の供給数は増えていても、短命化しているといった声もあります。こちらに関してはどう思われますか。

藤島:
漫画を描いたら、それが自動的に翻訳されて、世界中の人が閲覧可能なアプリ上に載せることができる時代なので、供給される母数が増えているのは間違いない。短命化もある程度事実だと思います。ただ、今は最初から世界に問うことができますよね。漫画の出版とアニメ化、ゲーム化を同じタイミングで考えることができます。日本の人口が減っている中で、日本だけで頑張って長寿のコンテンツ、エンタテイメントを作るというのは、なかなか難しいという気がしています。ある国の人にはこういう風に、こちらの地域の人にはこういう風にと、さまざまな楽しみ方と体験を届ける。いろいろな国の人たちの思考や文化的な背景をしっかりと理解し、根付くような仕組みを、ビジネス的な感覚で築き上げていけば、世界中で愛される長寿のIPを創ることができると信じています。

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 椿 夏葉

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 椿 夏葉

勘とデータを組み合わせて、コンテンツを世界へより的確に届ける

椿:
これから海外に日本のエンタテイメントを届けるには、データの利活用に時間とコストをかけて取り組むべきでしょうか。

藤島:
グローバルで各国市場の特徴を捉えるには、データは絶対に欠かせません。例えば、日本で育った人が海外へ行ってエンタテイメントのテレビのショーやゲームに触れた時に、「何が面白いんだろう」と感じることがあると思います。

その人が今までに経験してきた教育や文化的な背景、コンテンツの種類によって、楽しめるもの、楽しめないもの、笑えるもの、笑えないものなどは全然違いますから。

当然、その国の宗教や価値観によって受け入れられないものもありますし、子ども時代の体験などによっても好きなコンテンツの種類は違うと思うんです。日本人はこういう展開やキャラクターが好きだけれど、もしかしたら中東の方は違うものが好きかもしれない。米国でうまくいったからアフリカやインドでもうまくいくとは限らず、どうしても現地のことを知らなくてはなりません。編集者や漫画家、プロデューサーがスーパーヒットコンテンツを生むのは、嗅覚や勘としか言いようのないこともあると思うんです。それもすごく大事。ただ、少なくとも「流通」や「経営」は、嗅覚や勘ではダメです。もちろん、データを活用すれば確実にうまくいくわけではありませんが、一定の確率以上にすることはできます。

各地のユーザーやセールスなどに関するさまざまな種別のデータがあり、それらを目的に応じて組み合わせていく。「日本人に売れるものを持って行ったら売れるに違いない」ということは、さすがにありえません。データをどれだけ抱えられるかというのは、海外展開にとっての生命線だと思っています。

椿:
ありがとうございます。では最後に、海外展開を考えているE&M業界の企業にどのようなメッセージを伝えたいですか。

藤島:
海外展開は、今日思い立って明日できることではありません。誰かがSNSで発信したことでバズり、一時的にどこかの国で盛り上がることもあるかもしれませんが、その偶然は何度も起こるわけではないですし、それでは持続性がありません。

コンテンツが世界に浸透するまでに数十年かかるのと同じように、企業がIPと一緒に成長する経験も、ある程度の年月が必要だと思います。ただ、PwCのさまざまなプロフェッショナルと協力すれば、数十年かかるところを、できるだけ短期間で成功に導くことができます。

エンタテイメントは、その国の人の記憶に残って、根付くことが大切だと思うんです。大人になった時に思い出したり、子どもに見せたい、読ませたいと思ったりするものは、「ひと夏の思い出」のようなものではなく、人生や価値観に影響を及ぼすようなものだと思います。

日本が生み出してきたコンテンツは、企業にとっても、作家にとっても資産。その資産を大切にしながら、これまで培ってきた知見でさまざまな角度からビジネスを見渡し、恩返ししていく。それが私にできることです。

主要メンバー

藤島 太郎

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

椿 夏葉

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

Email

PwC Japanグループ エンタテイメント&メディア(E&M)プロフェッショナルに訊く

7 results
Loading...
Loading...

インサイト/ニュース

20 results
Loading...
Loading...

本ページに関するお問い合わせ