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事業承継や競争力強化の観点からM&Aを検討する中小企業が増えています。しかし、M&Aは成約さえすればすべての課題を解決できるわけではありません。PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)によって統合効果の最大化を図ってこそ、M&Aは意味を持つためです。中小企業庁の中小PMIガイドラインの策定や中小PMI支援実証に係る事業を受託し、M&AとPMIのスタンダード構築に向け尽力しているPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)のメンバーに、その最新の動向を聞きました。
左から田中 伸也、石本 雄一、 岡山 健一郎、河西 信幸
人口減少が続く日本において、中小企業の後継者不足が深刻な課題となっています。高まる事業承継ニーズを受けて、M&Aの件数は年々増加してきました。しかし、M&Aの質や満足度に目を向けると、必ずしも件数の増加に比例していないという指摘も少なくありません。PwCコンサルティングの戦略コンサルティング部門でディレクターを務める岡山健一郎はM&Aの質と満足度の重要性についてこう説明します。
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 岡山 健一郎
岡山:
「M&Aは、成約がゴールではありません。事業を承継できたとしても、価値創造により競争力を高め、成長を遂げることができなければ成功とは言えないからです。M&Aの質や満足度を高めるために重要なのが、M&A成立後の統合フェーズとして、価値創造や競争力向上に主眼を置いたPMIです。ところが、M&Aの仲介機関は専門の仲介会社や地銀など、幅広く存在しているのに比べ、PMIの支援を行える機関はまだまだ少ないのが現状です」
PwCコンサルティングの戦略コンサルティング部門にはX-Value & Strategy(以下、XVS)というチームがあります。戦略・デジタル・M&Aの3つの要素を掛け合わせた領域を事業ドメインとし、所属する約220名のメンバーが大企業を中心に数多くのクライアントに対して、経営アジェンダの設定から変革の実現まで一貫した支援を行っています。XVSの前身チームが立ち上がったのは2015年。その背景について、同社の執行役員でパートナーの石本雄一はこう解説します。
石本:
「XVSには前身チームがあり、当時から事業戦略やM&A戦略、PMIを主戦場としていましたが、テクノロジーの進化やESGに係るニーズの高まりなど企業を取り巻くビジネス環境が激変してきたことに伴い、M&Aも含めた成長戦略や価値創造といった視点でのご支援が必要となってきました。こうした新たなニーズに対応するため、組織の強化を図ったのがXVSです」
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー 石本 雄一
PwC Japanグループには、元々組織横断的なコラボレーションで課題解決に当たるカルチャーが根付いています。これは時間をかけて築き上げられてきたもので、XVSに期待されるのもPwC Japanグループの“オーケストレーター”として機能することです。そして、このオーケストラにおいて多様な旋律を奏でられるプレーヤーも揃っています。
石本:
「戦略コンサルティング部門にはXVSの他にも、中長期の戦略策定で高度な専門性を持つStrategy&や、未来の創造と実装を目指すFuture Design Labといったチームがありますし、XVS内にも5つのケイパビリティグループを設けています。さらに、PwCコンサルティング内の業務・業界ごとの専門チームに加え、当社を含むPwC Japanグループには、PwCアドバイザリー合同会社、PwC Japan有限責任監査法人、PwC弁護士法人、PwC税理士法人など、多様な企業があります。それぞれの領域の専門性を掛け合わせることで、M&AからPMIに至るまでの支援をシームレスかつ効果的に行えるのが、他社には真似のできないXVSの強みだと自負しています」
XVSチーム内のケイパビリティグループは、「Growth&Ecosystem」「Digital Strategy」「Transformation Design」「Strategic Finance」「M&A Transformation」の5つ。PwC Japanグループの各社やPwCコンサルティング内の専門チームも含め、案件ごとの最適な掛け合わせを判断してXVSがチーミングを行っています。
XVSはこれまでに数多くのPMI支援実績を積み重ねてきていますが、これはすなわちPMIに関するナレッジの蓄積が豊富にあることを意味します。近年では、こうしたナレッジを汎用化し、クライアント自らがPMIを遂行するための「PMIプレイブック」を作成する支援も行いました。同社が中小企業庁による「中小PMI ガイドライン」の策定と「中小PMI支援実証事業(中・大規模)」を受託したのも、こうした数々の取り組みが評価されたからだと言えます。
岡山:
「当社はこれまで大企業を中心にPMI支援を行ってきました。これまで蓄積してきたノウハウを共有することで、企業規模を問わず日本企業の競争力向上に貢献できるのではないかと考え、中小企業庁の公募に手を挙げることになりました」
PwCコンサルティングが受託した「中小PMI ガイドライン」策定と「中小PMI(中・大規模)実証」事業とはどのようなものでしょうか。
「中小PMI ガイドライン」が策定されたのは2022年。同ガイドラインの目的は、中小企業に対してPMIの重要性を啓発すること、そして中小企業が実際にPMIに取り組む際の指針としてPMIの「型」を示すことでした。
「PMIの指針が世に示されること自体が初めての試みだったので、このガイドラインは今後のベンチマークとなります。『日本におけるPMIのスタンダードをつくる』という意気込みで取り組みました」と語るのは、XVSのメンバーであり中小企業診断士の資格も持つマネージャーの河西信幸です。
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 河西 信幸
河西:
「中小企業ではPMIの事例が少ない上に、業種や事業規模の幅も広く、共通指針として『型』を定義することには困難さがありました。また、言うまでもなく実行可能であり、効果を伴うものである必要もあります。そこで、全体の構成についても工夫し、幅広い中小企業の円滑な事業の引継ぎに向けた取り組みを基礎編、その先の成長に向けた内容を発展編としてまとめました」
2022年に中小企業庁が中小企業PMIガイドラインを策定するにあたり、PwCコンサルティングは事務局を務め、様々な有識者との議論を重ねながらPMIの「型」としてまとめ上げました。中小企業向けのガイドラインではありますが、成長戦略に関わるところまで網羅しており、大企業からも「参考になる」との評価を受けているといいます。
策定にかかった期間は9カ月ほど。この間に5回の検討会を開催し、学識者、士業専門家などの有識者と議論しながら最適解を探りました。
河西:
「様々な方面の有識者と議論を行いましたが、同じ方向性を共有しながら取りまとめが進み、単なるテクニカルブックではなく、マインド面でのメッセージも盛り込むことができました。最前線で活躍されている有識者の方々とネットワークを築くことができ、当社にとっても意義深い取り組みになったと思います」
これに続く2023年度の「中小PMI支援実証事業」は、「中小PMI ガイドライン」の策定と同様に、中小企業庁の「中小企業活性化・事業承継総合支援事業」の一環として実施されたもので、PwCコンサルティングは中・大規模案件の事務局を務めました。
担当した同社マネージャーの田中伸也によると、「実践的な知見を全国の中小企業に提供するため、実証に参画する企業には『中小PMI ガイドライン』に沿う形でPMIに取り組んでいただきました」とのこと。つまり、XVSチームにとっては、策定に参画したガイドラインの「実力」を図る上で重要な実証事業だったという言い方もできます。
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 田中 伸也
田中:
「約2~3カ月間で30~40件の案件を集める必要があり、当初は本当に集まるのか不安でしたが、ガイドライン策定時にネットワークを築けた有識者や地銀を通じた呼びかけもあり、スムーズに進みました。最終的に全国からバラエティーに富んだ業種業態の案件を集めることができ、有意義な実証事業になったと思います」
中小企業庁が24年2月20日に開催した第1回中小PMI促進戦略検討会で本事業の中間報告が行われ、24年3月29日には経産省のホームページで報告書が公表されました。24年3月までの事業のため、実証結果から得られた示唆を基にさらなる詳細な分析を継続しながら、今後のPMIの発展に向けた検討もスタートしているといいます。
「中小PMI ガイドライン」策定と「中小PMI(中・大規模)実証」事業を経たことを踏まえ、今後の方針や支援体制についてXVSチームがどのように考えているのかについても聞きました。
岡山:
「ガイドラインや実証事業と並行して、地銀を対象としたセミナーや座談会を開催するなど、当社としても独自にPMIの普及や啓発に取り組んでいます。また、これまで政策提言までは踏み込めていませんでしたが、ガイドラインの策定や実証事業を通して中小企業庁や有識者とのネットワークができたことで、国に対しても様々な提案ができる素地はできてきたという認識です。実際のPMI支援についても、もともとあった大企業のナレッジと中小企業の実証事業の成果、さらにはPwC Japanグループのコラボレーション力を結集すれば、かなり広範囲のことができると考えています」
PwC Japanグループでは、PMIを含めたM&Aのフルプロセスを支援するだけでなく、次のM&Aに備えたレディネス(組織能力)の構築支援にも力を入れています。
石本:
「持続的な成長を遂げる企業は、M&Aを継続的に活用してポートフォリオの見直しを行っています。企業を取り巻く環境は変化し続け、事業構造の前提が変わっていく状況があるため、今までの延長線上での考え方では持続的な成長は困難です。この状況を克服するために、継続的なM&Aは有効であり、それを可能とする組織能力強化にも貢献したいという思いがあります」
支援企業の事業成長・変革を実現するために、PwC Japan グループ内の連携を通して実現する、M&AのフルプロセスおよびM&Aレディネス構築の内容と全体像
中小企業にとってM&Aは、事業承継策として1回きりのものというイメージを持たれがちです。しかし、もはやM&Aは成長サイクルをもたらす成長戦略として考えるべきものです。PwC Japanグループが打ち出している戦略的支援は、すでに「中小PMI ガイドライン」策定で目指した日本のPMIのスタンダードになりつつあるのかもしれません。
※本稿は日経ビジネス電子版に2024年5月に掲載された記事広告を転載したものです。
※法人名・役職などは掲載当時のものです。