第9回「グローバル原価管理を実現するために必要なデータ」

2020-02-18

1.「使える原価情報」とは

必要なデータを説明する前に、まずはこれまでのコラムで述べてきた「使える原価情報」についておさらいします。第2回「原価情報が満たすべき要件」で提供すべき原価情報について以下のように説明しました。

  1. 生産実態を反映した原価情報
    多品種少量生産が当たり前になりつつある中では、標準原価を「科学的・統計的に」設定・改訂することは困難になってきており、また、仮に設定・改訂したとしても標準どおりに作れるケースは少ないことから、標準原価が原価実態を表すことが難しくなっています。生産実態を反映した原価を、実際原価をベースとして提供することが重要です。
  2. 原価改善にフォーカスを当てる原価情報
    原価の改善につながる「場所(工程)」「モノ(製品)」「変動要因(歩留、能率、稼働率、ロットサイズなど)」を特定できる原価情報を提供することが重要です。
  3. 原価貢献を明らかにできる原価情報
    原価改善活動を促進し、その結果を業績評価に反映させるためには、改善活動の主体である各部門の原価貢献度合いを明らかにすることが必要です。そのため、予算ないし標準原価と実際との原価差異を部門・工程にブレークダウンすることが必要です。
  4. 変動を即時に把握できる原価情報
    調達方法・調達先の多様化、為替や原材料価格の変動の激化に対応し、それらによる原価への影響をタイムリーに把握することが必要です。そのため取引通貨別など変動要素ごとに原価情報の内訳を保持することが重要です。
  5. 製造間接活動の改善にもつながる原価情報
    生産現場における人の活動が、直接部門から間接部門にシフトしていることから、間接部門の原価の重要性が高まっています。製造間接部門の原価改善活動を促すために、各製造間接部門の活動量を増減させている要因を見極め、それをコストドライバーとして各製品に配賦することが求められます。

以上が、「使える原価情報」として満たすべき要件です。

執筆者

南里 幸宏

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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