生成AI―新たな働き方革命の波に乗る―テクノロジー最前線 生成AI(Generative AI)編(9)

生成AIが導く持続可能な観光への変革

  • 2023-11-15

生成AIの活用が観光に有益な理由

生成AIが観光産業に与え得る影響力についての議論が活発になっています。生成AIは「(都度適切な回答を膨大な情報量から整理した)オリジナルコンテンツ生成」や「(前提や会話の流れを論理的に理解し、内容の深堀りを伴う)コミュニケーション」が得意です。飲食・宿泊・交通・娯楽施設など、非常に多岐にわたる業界が関わる観光産業において収益性を高めるためには、観光産業に蓄積される膨大なデータを活用し、最適解を常に導き出す必要があります。生成AIはデータの活用に際して有用であり、観光産業との親和性は高いと言えます。

生成AIのリスク

生成AIが私たちのビジネスに大きく寄与することが期待される一方で、新たなリスクへの対応が必要となります。例えば、生成AIが事実と異なる情報を生成し(ハルシネーション)、そのアウトプットを十分な検証・チェックせずに世に出した結果SNS上で炎上が引き起こされたり、機密情報を学習していた生成AIがプロンプトインジェクション(悪意あるプロンプトを入力して、不正利用する攻撃手法)により機密情報を漏洩させたりするなどの恐れがあります。観光産業において生成AIを活用する際には、上記のようなリスクがあることを念頭に置く必要があります。

生成AIが貢献できる持続可能な観光

観光における顧客体験価値を高めるためには、主に「旅マエ」から「旅ナカ」における計画・実行において、ストレスフリーな環境を提供することが重要となると考えられます。生成AIの活用は、下記の観点から持続可能性を高めるものと期待されます。

  • 顧客体験の高度化:旅行者ごとに深度の増したハイパーパーソナライゼーションおよびリコメンデーションによる観光体験の最適化
    • 例えば、旅行先の情報が記載されたウェブサイトやSNS、天候情報、交通情報などの情報を活用し、旅行者の趣向やニーズに沿った旅程や旅行パッケージを自動生成できるようになれば、旅程検討の時間を大幅に削減し、観光体験を最適化することができます。
  • 予測と最適化:観光地のリアルタイム情報に基づき最適化された移動ルートやタイミングを提案することで、過度な混雑や環境への負荷を削減
  • 顧客サービス:外国語能力を要する予約や各種問い合わせなどを“無人化”することで、旅行者のストレスを軽減
  • 観光資源の尊重:旅行者が観光地の文化・伝統に触れる際のアドバイスやエチケットを提供することにより、現地の観光資源への理解・尊重を促進など

今まで「人」が顧客とつながる役目を担っていた領域において、生成AIがそれらの役目を代替することにより、顧客エンゲージメントを向上させるマーケティングやカスタマーサービスなどの領域に活用の幅が広がることが想定されます。

生成AIが「稼げる地域」への変革を促進

持続可能な観光を実現するためには、生成AIの技術活用が有用であると考えられます。観光業および旅行者のペインポイントを解消し、旅行者が時間を有意義に使えるような取り組みを進めることで、「地域のサービス」を利用する機会が増加し、地域のコミュニティの保全も実現できるからです。生成AIは、旅行者と観光事業者の関係をWIN-WINに導く1つの技術であると言えるでしょう。

執筆者

奥野 和弘

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

石本 雄一

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

源田 真由美

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

本ページに関するお問い合わせ