日本の文化創造産業の発展に向けた政策手法とエコシステム(本章)

  • 2025-04-11

序章では、外需開拓拡大に向けた文化創造産業の活用可能性とその実現に向けたキードライバーを整理しました。本章では、文化創造産業の特性とキードライバーを踏まえ、当該産業をどのように創成・拡大するべきかを論じます。

序章では文化創造産業の創成・拡大に向けた6つのキードライバーを整理しました(図表1)。他方、キードライバーの実現に向けては、文化創造産業の特性を踏まえた創成・拡大の流れを捉える必要があります。

図表1:日本の文化創造産業の創成・拡大に係るキードライバー

海外展開を促進する財政投融資の在り方は従来の基軸産業と文化創造産業で異なる

文化創造産業と製造業に代表される従来の基軸産業を対比すると、産業構造とそれに伴う海外展開方式が全く異なることがうかがえます(図表5)。よって、公的機関主導で外需獲得の拡大施策を打つ際に必要な財政投融資の在り方も異なります(図表6)。

図表5:従来の基軸産業と比較した文化創造産業の特徴

製造業を例にとると、ケイレツ構造の移植、すなわち縦型閉鎖系で海外展開が行われるため、展開後のキャッシュフローを見積もりやすいと想定されます。そのため、多額の設備投資を伴っても個社へのデットファイナンスが外需開拓促進に向けて有効に働きます。
他方、文化創造産業はステークホルダーが多様である横型開放系で海外展開を行うため、流通の結節点となる「準公共財としての」プラットフォーム投資が重要となります。また、複雑なステークホルダー構造に起因し、外需開拓にあたってキャッシュフローの見えにくい点もあり、必ずしもデットファイナンスを行えば外需獲得が促進されるわけではありません。したがって、個社の外需開拓支援に向け、将来的な返済義務を伴わないエクイティファイナンスも有効に働くと考えられます。

図表6:文化創造産業の海外展開を促進する財政投融資の在り方

特性とキードライバーを踏まえた文化創造産業の創成・拡大に必要な施策

文化創造産業の産業特性を踏まえると、創成段階ではプラットフォーム整備や民間投資機関が参入しづらいエクイティファイナンスなどの観点で公的支援の必要性が大きく、産業として活性化した段階からは民間投資・民間主導での成長が促進されると考えられます。このため、文化創造産業は公共主導フェーズと民間主導フェーズの2フェーズで創成・拡大すると考えられます(図表7)。

図表7:文化創造産業の創成・拡大に必要なフェーズ

公共主導フェーズにおいては、産業創成の基盤整備という観点で行政・公的金融機関の主体的働きかけが不可欠であり、したがって必要な施策はプラットフォームなどへのリスクマネー供給など、外需開拓を行う事業者層への直接的支援が中心となります(図表8)。

図表8:公共主導フェーズにおける必要施策とエコシステム理想図

一方、民間主導フェーズにおいては、行政・公的金融機関からの働きかけを最適化し、民間マネーの供給加速に向けてファンドへ投資信託するFund of Funds(FoF)などを活用することが重要です。また、直接的支援内容の最適化と、外需開拓を支援する民間事業者等への支援、すなわち間接的支援の重層化を通して、当該産業を拡大することが好ましいと考えられます(図表9)。

図表9:民間主導フェーズにおける必要施策とエコシステム理想図

関連レポート

  • 経済産業省「令和4年度海外需要拡大事業 文化経済領域等の海外需要開拓に係るリスクマネー供給の実態調査 調査研究報告書」

主要メンバー

岡村 周実

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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川埜 裕介

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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